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 罰ゲームで逆立ち一周するにあたり、真紀さんのまわりをバスタオルで囲う作戦。作戦名『東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武』(長い)発動準備が完了。

 しかしその前に、真紀さんが下着姿になるのか。


 真紀さん、恥じらいで頬を朱に染めるが、なにやら決意した様子で。


「こういうのは恥ずかしがると、よけいに恥ずかしいからね」


 脱ぎ出す。こちらは慌てて視線をそらす。

 あとは真紀さんが逆立ちするだけ──という場面で、真紀さん、なにやら躊躇っている様子。


「えーと。真紀さんは逆立ちが得意なんだっけ?」


「うん。あれは、まだ私が小さかったころ──8歳のときかな」


「真紀さん。8歳のとき得意だったものを、いまも得意といってはいけません。そこで、久しぶりの逆立ちが不安なら、僕が足を受け止めるけど?」


 真紀さんが答える前に、なぜか里穂が激しく反応してきた。


「高尾! 足フェチだったのね! あたしの足首、見る?」


 誰か里穂を黙らせてください。


「お願いできるかな、高尾くん? じゃぁ、行くよ?」と真紀さん。


「思い切りきて!」


「信じてる高尾くん!」


 踵がもろに鼻に入った。

 思い切りきては、余計だったらしい。


「あれ。ちょっと勢いつけすぎた?」と真紀さん。


「大丈夫」


 小夜が耳元で言ってくる。


「いまこそ滝崎真紀の股間を間近から見るチャンスですよ」


 視線は上へ、天井付近に固定しておく。当然ながら小夜は無視。


「……真紀さん。手を離すよ?」


「うん大丈夫そう」


 さて手を離して、すぐさまバスタオルを開く。『東の青龍』準備よーし。他の三人もバスタオルを開いて、結界を張り終わった。あとは他のお客さんと遭遇しないことを願いつつ、さくっと一周するだけだ。

 出発。そこは運動神経のよい真紀さん。コツをつかんだら、なかなかの速度で逆立ち移動。これは案外、簡単に終わるかも。


 だいたい折り返しという地点で、ふいに小夜がバスタオルを畳んで歩き出した。


「飽きました」


「離脱した。北の玄武が離脱した! なんか予想ついていたけど、本当に離脱した!」と僕。


 ここで決意をにじませた調子で千沙が言う。


「まかせて。いま連れ帰るから!」


 そして小夜を追っていく。……


「離脱した。南の朱雀も離脱した! どこまで悪意があるのか天然なのか知らないけど、千沙も離脱した!」


「高尾くん。いいから、先に進もうよ」


 と真紀さん。逆立ちのまま冷静にそう言ってきたのは、僕が進行方向に立っていたから。


「小夜が消えたんだし、もう逆立ちしなくてもいいんじゃ?」


「高尾くん。私は、約束は守るよ。やると言ったら、見ていようが見ていまいがやるからね」


 真紀さんの誠実さに感動していたら、小夜が戻ってきた。ミネラルウォーターのペットボトル片手に。というか、小夜を追った千沙はどこにいった。


「北の玄武の帰還です」


 しかしなぜ小夜は、わざわざペットボトルを買ってきたのか。ふむ。キャップはすでに外してある。


「里穂。小夜は、何か絶対に仕掛けるつもりだよ。とめて」


 たとえば『転んだフリ』して、ペットボトルの水を真紀さんに引っかけて、下着をすけさせる的な。


「とめるわ!」


 とやる気に満ちる里穂。

 あ、しまった。西の白虎も離脱じゃないか。


 しかも里穂のタックルをひらりとかわす小夜。それから水をごくごくと飲みだす。手のひらの上で踊るオモチャを眺める顔。ドSめ。


 一方、真紀さんは階段を逆立ちのまま降りていた。マイペースだなぁ。まった。お客が来る。慌ててバスタオルを持って駆け寄ると、それに驚いた真紀さんが手を踏み外す。


「あっ!」


「真紀さんっ!」


 真紀さんをかばうようにして、二人して階段から落ちた。


 うーん。

 なんか気づいたら、真紀さんの股間に顔をうずめる形で倒れていたんだけど。

 これはもう、完全に。

 ときに人は、驚きすぎると、逆に冷静沈着になるものだ。まず、やるべきことは何か。呼吸を止めることだ。ここで呼吸することは、なんか変態っぽい。

 いや、それは逆に意識しすぎなのか。あえて意識はしていないことをアピールするために、呼吸するべきなのだ。深呼吸しよう。すーはー。


「高尾くん………くすぐったい」


 と言いつつ、真紀さんが横に転がった。

 ふむ。冷静沈着に考えすぎた。


「真紀さん、無事?」


「うーん、とりあえず生きているよ」


「生きていればいいことあるよね」


 ふと見上げると、階段の降り口から里穂がこちらを見下ろしていた。


「高尾、もってるわね」


 いや、何を?



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