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 下着姿で惨敗となった里穂。


 そんな里穂が僕の肩に両手を置き、真剣な眼差しを向けてきた。


「高尾。『上』から脱ぐべきか、『下』から脱ぐべきか。高尾が決めてくれていいのよ?」


「そんな究極の選択を迫らないでくれるかな──とはいえ、現実的にいって『上』からじゃないの」


「そこを理路整然と説明してみてよ」


 なぜ説明義務が発生しているのだろうか。


「『上』はまだ前方を隠せばいいので、片手で済む。しかし『下』の場合、前方はもちろんだけど後方も隠さなきゃならない。すると両手がふさがるので、もうジャンケンができなくなる」


「あたし、高尾ならお尻くらい凝視されてもいいわよ」


 という謎の即答。


「もっと恥じらいをもとうか里穂。そしてなぜに僕が凝視すること前提?」


「凝視しないのは、あたしに失礼でしょう」


 とにかく里穂はブラジャーを外す流れになった。僕は遠慮深く視線を外して、部屋の片隅を見ておく。

 すると肩を、つんつんと突かれた。もう外したのかと思ったが、まだだ。


「何か用?」


「高尾が外してくれてもいいのよ」


「遠慮する」


 ここでなぜか地団駄を踏んで怒りを表現する里穂。


「自分で外すのは、完全に屈辱だわ! それだと小夜にしてやられた感が満点じゃないの!」


「実際にしてやられたんだから」


「とにかく高尾が外してくれたら、まだ何となく救われるわけよ。ここはあたしの自尊心を救うところでしょ、高尾!」


 時おり、里穂の意味不明な論理の迫力に負けるときがある。仕方ないので、里穂の背中に両手を回す。 

 そこで気づいた。別に正面から外しにかからなくても良かったのでは。なんか抱き寄せている感じになっちゃったし。

 しかし、こうなってしまっては、もう一気に外すのみだ。ホックを外す外す外す…外せない。


「なんかこれ金庫のダイヤル錠なみに手ごわいんだけど」


「気持ちを落ち着かせてホックを感じ取るのよ。考えるな感じろよ高尾」


 ブラジャーって、そんなに奥が深いものだったのか。

 ようやくホックが外れたので、片方ずつ里穂の肩から紐をおろす。視線をそらしつつ、脱がしたブラジャーをどうしたものか。


「冷蔵庫に入れる?」


「ボケている場合じゃないわよ高尾」


 ベッドにそっと置いておいた。


「里穂。もう君は真の意味で後がない」


 里穂は左手で胸を隠しつつ、


「ええ、そうね。だから高尾。最後は、あたしのかわりに小夜と戦ってちょうだい。そして、あたしのために勝利をつかんで」


「……分かった」


 里穂に戦わせたら200%敗北するしかなさそうだし。代理で戦わせてもらうとしよう。


「構わないね小夜?」


「構いませんよ」


 よし。ここまでで分かったことは、小夜は運だけでは勝負していない。必ずや里穂の思考を読み取って、裏をかいてくる。ならば、その裏をかくのだ。


 大丈夫。僕ならばできる。小夜の思考回路を分析し、さらにその上を行け。


「わたくしは、この最期の勝負でパーを出しますよ、水沢さん。わたくしがパーで勝利し、渋井さんは敗残者として全裸となるのです」


 と、優しいともいえる口調で、宣言してくる小夜。


「高尾! 信じているわよ! あたしは信じている!」


 と、ヒロイン的に盛り上がっている里穂。


 パーを出すと宣言した小夜は、おそらく裏の裏の裏の裏の裏の裏をかいた、と見せかけて、実は裏の表の裏の裏で表の──これだっ!


「じゃんけん」


「ぽん!」「ぽん!」


 僕がグー。

 小夜がパー。


 あれ、負けた。表と見せかけての裏だったのかぁ。


 振り返ると、崖の上から突き落とされたような顔の里穂。


「里穂……とりあえず、もう潔く脱ぐしかないんじゃないかな」



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