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 さらに先手をうって、小夜が言う。


「ではわたくし、第3ラウンドではチョキをださせていただきますね」


 対して、涙目でなにやら無言の訴えをしてくる里穂。

 このままではカモにされた里穂は、真っ裸でKOされてしまう。そして弱みのオリジナルデータは、手の届かないところへ。


 僕は挙手して聞いた。


「えーと、小夜。こっちで作戦会議。OK?」


「かまいませんよ」


 とのことだったので、部屋の片隅へ里穂と移動。小声で指示する。


「里穂。君はもう何も考えるな。考えるな、感じろ」


「感じる……『女の子が本当に感じるエッチ』的な『感じる』?」


 ダメだ。もうなんか色々な意味で、渋井里穂はダメだ。


「こうしよう。僕が何を出すか決める。小夜は、里穂が何を出すのかと推測してくるわけだから、裏をかくことができるぞ」


 なぜか興奮しだす里穂。


「共同作業ね、高尾。だけど最初の共同作業は、子作りが良かったわ」


 里穂の脳内宇宙には、たぶん混沌がうずまいてることだろう。


 とにかく、ここで小夜に一勝しておかないと。


 小夜はチョキを出すと宣言してきた。ふむ。


 おそらく小夜は、連敗の里穂が思考を停止すると推測しているはず。すなわち小夜の宣言の裏をかこうとする努力を放棄し、そのまま『チョキ』に勝つ『グー』を出すはずと。

 よって小夜が実際に出してくる手は『パー』。

 ならばそれに勝てる手を出せばいい。すなわち。


 里穂の耳元で、僕は素早く囁いた。というのも、こっちが指示を出したと、小夜に気取られないために。


「パーを出すんだよ、里穂」


 くすぐったそうに笑う里穂。


「耳に吐息がかかってくすぐったいわ。もう一回やって、高尾」


 こらこら、真面目にやりなさい。


 さて第3ラウンド。

 小夜は『チョキ』。

 里穂は『パー』。


 涙目×2で訴えてくる里穂。


「高尾。負けたのだけど!」


 あれ、おかしい。

 口元に手をおいて笑う小夜。


「おや、おや。わたくしはただ宣言どおりにチョキを出したというのに、なぜこのような結果となるのでしょう? もしや、水沢さん。少し考えすぎたのではありませんか?」


 小夜め。僕が出す手を決める、と読んでいての宣言だったのか。

 考えてみると、里穂だけではなく、僕もずっと小夜の手のひらの上だったような。


 というわけで、そこからさらなる連敗が続いたのも不思議なことではない。


 気づけば、里穂は下着姿で、唖然とした顔で立っている。


「一気にレッドゾーンよ! 高尾、もう一敗もできないわ! 次は上か下が裸よ!」


「だからもう、あれだ、考えるな感じるんだ、はい感じて里穂!」


「感じる……感じる……感じたわ!!」


 ジャンケンぽん。


 小夜が『グー』。

 里穂が『チョキ』。


 腕組みして、なにやら難しい顔をする里穂。


「う~む。あたしは、大敗するのを感じたみたい」


 ダメだなぁ、これは。



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