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102/117

102

 


「では、3ゲーム制(2ゲーム先取で勝利)で行いましょう。各ゲームは、11点先取です。10-10以降は、2点差がつくまで続けますよ。サービスは2本交代で」


 そう言って小夜が、スコアボードを手にとった。このスコアボード、一部が破けていることからも、年季が入っているようで。


 さっそく開始。


 千沙と真紀さんは、友人らしい連携のとれたプレイをみせる。 


 いや、まった。よくよく観察していくと、千沙は好き勝手にやっている。それを、真紀さんがうまいぐあいにフォローしているのだ。

 かくして、素晴らしいダブルスとなっている。


 さすが真紀さんだなぁ。

 と感心したとき、得点は2-9となっていた。もちろん2点しか取れていないのが、僕と里穂。一方的だなぁ。


 里穂は肩で息をしている。

 先ほどから無駄な動きが多いので、妙に疲れているのが里穂だ。


「高尾、やる気あるの?」


「やる気はあるんだけどね。相手が強すぎる」


 里穂のサービス。

 ここからラリーの応酬となった。ダブルスはペアが交互で打たねばならない。ので、互いに息のあったプレイが必要なのだ。


「あ、高尾、邪魔っ!」


「えっ!」


 里穂がぶつかってきて、僕らは倒れた。手足がこんがらがるようにして。


 吐息がかかる近さで里穂が言う。


「こら高尾、ラブコメしている場合じゃないわよ。あ、まって。いまの撤回。ラブコメしましょう。絡み合いましょう」


「いいから離れて」


 渋々といった様子で、里穂が離れて立つ。

 スコアボードを見ると、2-10。追い込まれているなぁ。


「小夜の賞品がくだらないものだといいけど」


「厄介なモノだと、千沙に渡すのは問題よ」


 確かに。弱みの類だと、千沙にだけは渡ってほしくないものだ。

 そして小夜ならば、その手の弱みを、賞品にしてきてもおかしくない。負けるわけにはいかないぞ。


 里穂がラケットで口元を隠して、ひそひそと言ってきた。


「こうなったら、最後の手段よ高尾。相手を動揺させて、プレイを乱すわ。つまり、精神攻撃をするわよ」


「精神攻撃? 千沙相手に? 何か材料でもあるの?」


 千沙限定にしたのは、真紀さん相手には、僕がさせないから。


「陽菜姉に対するコンプレックスをつくのよ」


 狙いどころはわかるけど、どうやって攻めたものだろうか。


「水沢くん、里穂、次いくよ」


 と卓球台の向こうから千沙が言ってくる。すでに余裕の様子だ。もう勝った気でいるな。


 真紀さんのサービス。

 里穂が返球するも、バウンドしたボールが浮き上がった。次の千沙に、スマッシュを打ってください、と言っているようなもの。


 ここで精神攻撃するのだ。えーと。


「千沙、お姉さんに対して君は、コンプレックスを抱いているな──」


 これじゃ直接的すぎて、まったく精神攻撃になってない。


「うるさいなっ!」


 千沙のスマッシュは、僕らのコートにワンバウンドもしなかった。ダイレクトに、僕の顔面に命中しのたで。


「痛っ! 里穂、顔面にボールくらったんだけど」


「けど、一点ゲットよ。この調子でいきましょう。次は千沙の恥ずかしいところにある、ほくろについて攻めましょう」


 なんだそれ。


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