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「どうです。手品じゃこんなことできないでしょう。これぞ魔法です」
少女はドヤ顔で言った。
確かに手品では出来そうにないと感じた。
そんなレベルのものではないと。
しばらく二人とも無言だったが、ようやく俺が口を開いた。
「で?」
「で?」
「魔女はいかかですかって、どういうことだ」
「ここでお世話になりたいんです」
「はあ?」
「いや私、ここのところずっと魔女狩りに追われてまして。逃げ切れる自信はあるんですけど、もうあいつらしつこくてしつこくて。疲れちゃいました。それで昨夜すれちがったあなたのところにお世話になろうと考えたんですね。この時代のこの国に、魔女狩りなんてもの、ありませんからね」
思い出した。
変身したあの姿は、昨夜中世ヨーロッパの町ですれちがった空飛ぶ女だったのだ。
俺が何も言わないでいると少女が言った。
「いいでしょ」
それでも黙っていると、鼻がくっつきそうになるほど顔を近づけてきて、甘えたように言った。