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ちょっとした買い物に行った帰りのことだった。
もうすぐ俺のアパートというときに、それは何の前触れもなく起こった。
――あれっ?
さっきまで見慣れた近所を歩いていたと思っていたのだが、なにか景色が歪んで見えたような気がしたその後、いつの間にか目に映る風景がまるで変わっていた。
それはどう見ても映画やテレビで見たことのあるヨーロッパあたりの中世の町並み。
その石畳の道を俺は歩いているのだ。
――なんで? ここはどこ?
薄暗かった。
両側にある二階建ての家からぽつぽつと灯りがもれてはいるのだが、窓からの灯りはまるく小さく、光量も多くはない。
俺にはそれはろうそくの灯りのように見えた。
俺は考えた。
これは中世ヨーロッパの町並みを残す現代の町ではなくて、本当に中世のヨーロッパに来てしまったのではないのだろうか、と。
――んなばかな!
そう考えていると、前方に何かが見えた。
それは道が薄暗いせいもあってか、いきなり目の前に現れた。
それは現れたかと思うと、俺の横をけっこうなスピードで通り過ぎ、そのまま見えなくなった。