キラキラネームの鬼
「えっろ」
ヒロのとっさに口にした一言にセラが反応して杖で小突く。
「痛いって」
「最低!」
「いや、だって仕方ないだろ」
ヒロたちは青鬼ウンキの案内で村を案内してもらい村の中心に戻ってくると、他の鬼たちも次々と仕事の為に家から出てきたのだが、ヒロが反応したのは女性の鬼だ。
身長は2.5メートルほど。
男の鬼と違って女性の鬼たちの肌は赤でも青でもなく白桃のような薄いピンク色の肌をしている。
ピンクと赤紫色のちょうど中間ぐらいの髪色でそこに鬼の証である黄色い角が生えていて、角の本数は特に決まっているわけではないようで、二本の者もいれば一本の者もいる。
そして何より特徴的なのが少し筋肉質な生足だ。
男の鬼たちが虎柄のパンツだけなのに対し女性の鬼たちは虎柄の着物を着ている。
だが、その丈は本物の虎を使っているからなのだろうかやたら短い。
日本の女子高生なら鉄壁のスカートとして通用するだろうが、高身長の彼女たちがそれをやるとケティ位の身長の者からは中が見えてしまうのではないだろうか。
そんな生足天国に迷い込んでしまったら男は誰だってそわそわしてしまうだろう。
そういえばこの世界の鬼は愛媛県鬼北町にあった鬼のモニュメントに似ている気がする。
ありがとう愛媛県。
夢がかないました。
「おめぇさん達連れてきたで。家ん中に入ってくれ」
どうやら赤鬼アンキが隣の村から黒鬼たちを呼んできたようで、雑談していたヒロたちのところにやって来た。
「えっと、黒鬼さんたちは」
「今馬を馬小屋において来とるから先に入っとくれ」
鬼が乗れる馬ってどんなサイズだ?
オーク達の様に馬車にしているのだろうか。
とりあえずヒロたちは中で待つことにした。
――――――
人数が多いせいかかなり広い部屋なのに狭く感じる。
ヒロたちの目の前に4人の日本鎧を着た鬼がやってきて座ったのだが、彼らは赤鬼たちと違ってかなり小さい。
恐らく170センチもある者はいないだろう。
見た目は殆ど人間と変わらない。
特徴的なのは肌の色と頭にある角だろうか。
角は赤鬼たちと違って鉱石のような黒い角が生えていた。
「水車村を見たいというあんたか」
恐らく4人のリーダーなのだろうか。
赤い鎧を着た一本角の褐色の鬼が話しかけてきた。
「水車村?あぁ、件の水車がある村の事ですよね。そうです」
「でも、あなた達弱そうだけど大丈夫かなぁ」
今度は紫の着物の上に黒い鎧を着た女性の鬼。
彼女は小麦色の肌に白い髪を後ろで束ねていて、角は二本生えている。
「こら、そういう事は言うものではない」
女性を注意したのは青い鎧を着た鬼で、彼は褐色で角が二本だ。
最後の一人は額当てをしているせいで角の数はわからないが、肌は比較的日本人に近い色をしていて鎧は侍と忍者の中間のような恰好をしている。
「それで、あの水車村に行くにはどうしたらいいですか」
「我々オーガの村から東にすぐのところだが、本当に行く気なのか?」
「いかないとこの村の問題の解決になりませんし」
「あそこには手ごわい物の怪がいるのだがな」
「戦闘は極力行わずに情報収集だけを目的にしたいのですが」
「それは無理だな。あそこに行く道中で出くわさないわけがない」
彼らの話によると水車村への道は半日ほどかかるようで、道も整備されていないので慎重に進んだとしたらどこかで野宿する必要があるようだ。
もし物の怪に出会わなかったとしても野宿の時に間違いなく集まってくるようで、戦いは必須。
レインに空中から運んでもらうことも提案したが、村の周辺は霧が発生していて空から行くのは無理らしい。
ならどうするか。
どうやら鬼たちは水車村に行くことは反対のようで、赤鬼たちの村からは誰もついてくることはなくオーガ側から手練れの4人が来たのだが、その4人も無謀だと思っているようだ。
最悪、機動力のあるヒロとケティだけで村に行って、ヤバくなったらケティの力で戻ってきてもいいが、できればリロイに直接水車を見てもらいたい。
ドワーフのリロイがついてくる限りどうしても移動速度が遅くなる。
それに万が一、ケティが元の姿に戻らなければいけなくなった時に猫又の姿を鬼たちが見てしまったらどうなるか分からない。
この際だから場所はケティが分かるだろうしヒロたちだけで行ってしまうのはどうだろうか。
それならケティが元の姿に戻ってリロイを運ぶことだってできる。
「あの、うちのパーティだけで見に行ってもいいですか?」
「なにをバカなことを!」
ヒロの突然の提案にオーガの3人が全員で同じ言葉をヒロに向けた。
まぁそうか。
もしヒロ達だけで上手くいったらそれはそれで彼らのプライドが傷つくか。
それとも、マイスナー流通から紹介された人間をみすみす死なせるのはまずいと言う事だろうか。
「ところで、先に自己紹介しませんか?お互いの能力を知らないと作戦も立てられないですし」
「それはそうだな。俺の名前はタップル」
「タップル!?」
突然の出来事で声が出てしまった。
この侍感全快の赤鎧を着た男は何を言っているんだと。
「どうかなされたか」
「いや、てっきりなんとか丸みたいな名前なのかと」
「父の世代はそうであったが、我ら黒鬼、黄鬼族は鬼からオーガと種族名を変えた時に子の名前も時代に沿ってキラキラしたものに変化した」
「変化って」
そうか、要はキラキラネームみたいなものだろうか。
「えっと、ごめんなさい続けてください」
「なら次は俺だ。ペアーズだ。」
「ペアーズ!?」
だめだ。今度はクールぶってる青鎧のオーがの名前にまた声を出してしまった。
え?もしかしてそういう縛りで名前をきめているのだろうか。
どちらもどっかで聞いた事のある名前だ。
「じゃぁ私の番!ウィズだよ」
「With!?」
やっぱりそうだ。
このオーガたちはキラキラという名のマッチング的な名前を付けられているようだ。
「最後の彼は」
「あぁそいつはカラス」
「カラス!?鴉?」
「そうだよ。そいつは親がいないからお頭がつけたんだ」
「あぁそうなのか」
良かったなカラス。
いやよかったのだろうか。
ここまで来たのだからどうせなら4人目もそろえてもらいたい。
「それで、今度はあんた達の番だよ」
小麦色のオーガのウィズに言われてヒロたちも自己紹介を済ませる。
鬼の村に来てからアストリッドがずっと人のサイズになっていたので妖精に戻った時はさすがの鬼たちも驚いてみせた。
それ以外は見慣れているようで、エンシェントドラゴンの話をしても「ふーん」と眉唾といった感じで聞き流されてしまった。
その後、全員のスキルなどを確認し、ヒロのある提案で水車村に行くことが決まった。
それと、意外だったのが、戦闘になった場合は体格のいい鬼よりもオーガたちの方が強いらしい。
鬼たちは見た目とは逆に優しい心を持っていて、滅多に武力による争いを行わないのだとか。
なのでオーガ達が技を極め鬼族はバランスをとってきていたようだ。
兎に角、出発は正午。
ヒロたちは9人で水車村を目指すことになった。




