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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第二章 龍喰らいの悪食
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ライラ

「みんな武器を構えろ!」


セラを抱いたまま跳躍強化で大きく跳んで、宴真っただ中にすっ飛んでいく。


リロイはどこかに身を潜めているだろうが大丈夫だろうか。


「どうしたんだ?」


比較的酒のまわっていなかったネグが異変を察して声をかけてくる。


「いいから武器を持ってこい。戦えないやつは早く隠れて!」


「おせろぉぉぉぉっぉぉぉぉっぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


後ろから叫び声のような声がする。


初めのうちは女性の声のようだったが、途中から強風時の隙間風が混ざったような音になった。


強風が起こったと思ったら、幾本もの木を巻き込んで奴の目の前のものがなぎ倒される。


巨大な蜘蛛のような下半身に、エンシェントドラゴンの上半身。


右手に大きな槌に左手には大斧。


そして奴の体の中心には泣き叫ぶ女性が浮かび上がっている。


奴はライラだった。


キュリーから貰った宝石が砕け散った後、ライラの体が泥のようになり体積が増していき、爆発的に増えたと思ったら今の姿になっていた。


エンシェントドラゴンの時とは違って、体に泥は纏っていない。


その変わりだろうか、力がとてつもなく強い。


魔力を帯びているのだろうか、斧の一振りはかなりの範囲を巻き込んでなぎ倒した。


「ケティ!」


「ニャッ」


大声で呼ぶと、ケティがすぐに寄ってくる。


「魔力はまだ戻ってないよな?元の姿には?」


「まだ戻れないニャ」


「ならリロイがどこかにいるから無事か確認してくれ」


「わかったニャ」


ケティがどこかへ走るとすぐに見失った。


オグは武器を取りに小屋へ向かっている。


武器を持っているのは……チカラ、パワー、ネグだ。


「やつの力は強いから真っ向から勝負するなよ」


「んなもんやってみないとわからないだろ!」


奴の大槌の攻撃に合わせてパワーも鉄槌を振るうが、鈍い金属同士のぶつかり合う音と共にパワーの鉄槌がかなり遠くに弾き飛ばされた。


思いっきり握っていたからだろう、パワーの掌は痛々しく皮膚が剥がれ血が出ている。


「アストリッド回復を!」


大声を出すが反応がない。


まだ戻っていないのか。


まずい、回復がいない。


今回復を使えるのはリロイだけだ。


だが、リロイは手ぶらでどこにいるか分からない。


「ネグ、チカラは早くパワーを助けてオグが来るまで援護に徹して!セラはここで降ろしていい?」


「うん」


セラを下ろして跳躍強化で跳ぶ。


戦闘するつもりはなかったので武器もクロスボウも持ってきてはいない。


だが、ヒロには戦う方法が一つある。


奴…ライラの目の前に着地し、居合切りをするようなポーズをとる。


勿論、刀も鞘もない。


だが、まるで鞘から刀を抜くような動作を取る。


発動する魔法は魔力刀。


魔力を凝縮して作り出す魔力の剣。


マモンが使っていた魔法だ。


これなら武器を持ち歩く必要もなく、刃こぼれの心配もない。


剣の強度は消費魔力で調節でき、剣の形は使用者の能力やイメージで変わり重さもほとんどない。


これで長めの大剣を作って叩き切る予定だった。


だが、ヒロの手には何もなかった。


魔力切れ・・・・・・。


今日は既にエンシェントドラゴンとの戦いで魔力を使っている。


さっきまで寝ていたから回復したと思っていたが、そうではなかったようだ。


しかも問題がある。


跳躍強化があと何回できるか分からないのだ。


跳躍強化は膝に1、足裏に1の魔力を消費して発動し、足裏の魔力を使ってジャンプをする。


ヒロは癖で毎回魔力10消費で発動し、練習の回もあって9回の跳躍ができる。


だが、魔力が切れているとなるといくつ消費して発動したかが分からないのだ。


既に5,6回は跳んだはずだ。


まだ足に魔力の感覚はあるが、あと4回も跳ぶことはできるのだろうか。


ライラが大槌を振り下ろす。


頼むからここでは切れないでくれよ。


後ろに大きく跳んでかわし、着地する。


足にまだ魔力の感覚があるので次も跳べそうだ。


「――ホエールキャノン」


セラが両手をかざすと巨大な魔法陣が現れ、そこから大量の圧縮された水が噴射される。


極太のウォータージェットはライラに直撃し、その上半身を吹き飛ばした。


巨大な大斧と大槌が地を揺らすほどの音を立てその場に落ちる。


よく見るとライラの体の真ん中にあった、泣き叫ぶ女性の部分はそのまま残っている。


やはり母親を攻撃するのは抵抗があるのかもしれない。


「おせろ……おせ‥‥おせろ……せ……せら…‥‥せらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」


ライラが女の叫び声と隙間風が混ざったような叫び声をあげる。


すると残った下半身と斧、槌から泥が溢れ出し元の姿に戻っていく。


やはりエンシェントドラゴンの時の様に完全に蒸発させないとだめなのだろうか?


だとしたら完全に勝ち目がない。


「これならどうだ!」


パワーをチカラに任せ、ネグがライラに突っ込んでいき金属の棒でクモの足を叩き折っていく。


オグの姉、ネグは棒術を使う。


しかしその棒はオークの筋力を生かし、金属の棒で出来ているものを使っているので破壊力はただの棒の比ではない。


片側の足をすべて折られライラがバランスを崩すと、流れるような動きでネグは反対側の足も攻撃し始めた。


だが、ネグが反対側にまわったタイミングから既に足の再生が始まっている。


ネグはライラの攻撃をかわして攻撃を繰り返し、片側を壊したら反対側へ、攻撃してまた反対側へと攻撃を繰り返してはいるがいつまでもつか分からない。


「セラ」


跳躍があと何回できるか分からないのでセラの横まで走っていき、次の魔法を指示する。


だが、先に準備していた魔法を使うようだ。


「ネグ下がって!――フリーズダスト」


ライラの下半身を白い霧が覆う。


だが、これは霧ではなく小さい氷の刃の集合体だ。


セラが手で円を描くと霧が回転し始め、ライラを切り刻み始める。


やがて切り刻まれた下半身は体を支えきれずにその間で倒れた。


だが、また失った部位から泥が溢れ下半身の再生が始まった。


「こんなのどうやって倒せばいいんだよ」


ネグがこちらに向かって叫ぶが、こっちだってそんな事は分からない。


「ネグ、一応の考えがある。セラの攻撃が当たったらそこに追撃しろ!」


「あいよ」


下半身の再生が終わり、ライラが立ち上がった瞬間にセラの呪文詠唱が完了する。


「――氷結の宴フリージングフィールド


セラが召喚した巨大な氷が落下し、砕けた氷の中から閉じ込められていた冷気が解放される。


上手く直撃はしなかったが、左側の蜘蛛足の一つが凍り付いた。


それをネグが鉄の棒で粉砕して距離を取る。


………再生しない。


良かった。


「確認したか!?奴は凍った場所を壊されると再生はしない。セラの攻撃を中心に戦うぞ!」


「あいよ」


「永久の波を眺めしもの 清らかなる心の源よ」


やっと光明が見せた。


「せらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」


焦ったのかライラが大振りで両腕の武器を振り回し始める。


ネグは何とか交わしているが、かなり危なっかしい。


「準備できた!」


セラの魔法の準備が整うが、どうにもライラの動きが止まらない。


魔力にも限界がある。


今日は既に何回か上級魔法を発動しているし、確認もしていないのでセラの残り魔力量もわからない。


なので無駄うちはできるだけ避けたい。


木の根に足を取られてネグがバランスを崩す。


そこにライラが透かさず大斧を振るった時だ。


オグが大斧にシールドバッシュをしかけ、軌道を変えた。


「姉さん後は任せて」


「お前は盾!私が攻撃だ!」


「わかった」


オグが攻撃を捌き、合間にネグが攻撃を仕掛け腕の一部を抉る。


傷は再生されてはしまうが、ライラの動きは確実に小さくなっている。


「――氷結の宴フリージングフィールド


セラが召喚した氷の塊が、今回は下半身の蜘蛛の部分に直撃する。


そこをネグが攻撃すると下半身の後ろ半分は砕け散り、ライラはバランスを崩してうつぶせに倒れた。


「おせろぉぉぉぉっぉぉぉぉっぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


自棄になったのかライラがネグに向かって大槌を投げる。


それをオグが間に入って盾で防ぐが、力をそらしただけにもかかわらずオグの盾の端がぐにゃりと曲がった。


やはりライラはエンシェントドラゴンの時と違って力が強い。


凍らせることが弱点と気付かなかったら危なかったかもしれない。


「せらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」


今度は大斧を投げる。


しかし、大斧は大槌の時とは違ってかなり回転がかかって凄い音を出しながら飛んでいく。


オグがネグを庇ってまた防ごうとするが、意外なことが起こった。


オグの盾の構え方から斧は受け流す様に軌道を変えると思ったが、盾がくの時に曲がりそのままネグとオグを吹き飛ばした。


大斧と盾と共にオグとネグは近くの小屋に突っ込み、小屋は大きな音を立てて崩れ落ちた。


「オグ!」


返事は無いが、チカラが様子を見に向かっている。


あっちはチカラに任せよう。


こっちはライラを……。


視線を戻すとライラがエンシェントドラゴンの口で下半身を噛みちぎった。


「おせろ‥‥せろ…‥せらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」


ライラの叫びと共に下半身の傷口から泥が流れる。


元の姿に戻るかと思ったが、泥は足と尻尾の形になり固まった。


トカゲのような姿になったライラがのっしのっしとこちらに向かってくる。


思ったより足が速い。


だめだ、間に合わない。

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