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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第二章 龍喰らいの悪食
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悪食

遥か昔、人々は食べた動物の力を得ることが出来ると信じていたらしい。


本当かどうかは知らないが、叔父に言われたその言葉で俺の人生は変わった。


ちょうど15歳の誕生日の出来事だ。


当時、体が弱かった俺にマタギだった叔父が熊を仕留めごちそうしてくれた。


叔父の料理の腕がいまいちだったこともあり、熊鍋はスープ全てが獣臭く、塩をかけて焼いただけの熊肉もお世辞にも美味しいものではなかった。


しかし、その翌月にあることに気付く。


熊肉を食べてから学校を休んでいない。


むしろ調子がよく、毎日外を走り回っていた。


叔父にその話をすると、熊を食べたことによって熊の力が身についたというのだ。


それからというもの、週末になると叔父と一緒に山へ入るようになった。


高校を卒業するころには熊は俺が捌いて料理するようになり、熊以外にも日本にいるあらゆる動物を食べた結果か、俺は健康どころか同年代よりもはるかに体力があり、体も引き締まっていた。


高校卒業後は大学へは行かず1年間ひたすら働いた。


肉体労働から接客、警備員など可能な限りバイトを掛け持ちして貯めた金で俺は翌年に世界中の動物を食べる為に旅に出る。


足の速さを手に入れるためにチータ―、フットワークを鍛えるためのカンガルー。


まずは子供でも知っているメジャーな生き物から食べていき、時には絶滅危惧種の希少な動物や虫など、法に背いて手に入れたこともある。


そして、俺は自分の理想通りの最強の動物と出会いそれを食べた。


それはゴリラだ。


ゴリラは強い。


あの全身の筋肉は子供だって近付いたらヤバいとわかる強さを持っている。


だが、ゴリラはその肉体に驕ることなく優しさを持っているのだ。


ゴリラは無駄に争うことを好まない。


もし喧嘩になった場合、子供でも雌でも間に入って喧嘩を止める。


彼らは強い、弱いということにこだわりがないのだ。


雄のゴリラは寝床を作っても自分は地面で眠り、雌や子供に寝床を譲る。


そんな強さと優しさを兼ね揃えたゴリラこそ、俺の到達点だと思っていた。


しかし、当時ゴリラは絶滅危惧種に指定されかなり厳重に保護されていた。


なので、俺はゴリラを最後に回し、ゴリラを食べることで自分は地球のすべての動物の力を手に入れ最強になれると信じていた。


だが、ゴリラを食し最強になった俺はあっけなく死んでしまう。


感染症だ。


叔父に報告する為に日本へと向かう飛行機の中で気を失い、空港で隔離施設に入れられる途中で息絶えた。


そんなあっけない死に方をした俺だが、神は俺を見捨てはしなかった。


気付いた時には薄暗い部屋にいて、脂汗を掻いた神を名乗るオッサンが俺に異世界の話をし始めた。


ゴリラが赤子に見えるほど強い生き物がいる世界、そんな異世界に転生してより高みを目指すことが出来る。


俺は喜んで神の言う事に従った。


異世界に転生してすぐ、俺は仲間を作り冒険の旅に出た。


初めて食べた生き物はゴブリン。


ゴブリンは単体では弱いが非常に繁殖力があり、なかなか駆除しきることが難しいらしい。


俺はそんな生き物を元の世界で知っている。


ゴキブリだ。


火星開拓の為に放たれる生き物としてゴキブリが使われるというのは有名だが、ゴキブリには他にも宇宙関連で研究されていることがある。


それは食料としての使い道だ。


ゴキブリミルクと呼ばれるそれは既に一部の国では売られていて、最高の健康食品として扱われている。


そして研究が進み宇宙食としても一般になっていくのだとか。


ならばゴブリンにも期待していたのだが、大した成果は得られなかった。


後々気付くのだが、ゴブリンはオスの個体には大した効果はなく、雌に少量しか取れないが希少な部位があったのだ。


そして、この異世界には魔力と言うものがあるせいかモンスターを食べると魔力増加など目に見える形で俺の体に変化が起こった。


どれくらいの種類のモンスターを食べただろうか。


気付けばサザラテラ周辺にはゴブリンぐらいしかいなくなり、そんな俺を気持ち悪がってか仲間たちはいなくなった。


ちょうどそのくらいの時だろう、俺は冒険者たちに『悪食』と呼ばれるようになっていた。


西に向かいたい。


だが西の魔物はとても強く、仲間の居ない俺には到底無理だろう。


一度だけ西に向かったことがあるが、なかなか単独で行動するモンスターを見つけられず死にかけてもどってきた。


もっと強いモンスターを食べて強くならなければ。


そんなある日、ある種族がサザラテラに定期的に来ていることに気付く。


オークだ。


まるで緑色のゴリラ。


知能がある分、彼らの方が強いだろう。


そう考えるとなんとしても食べたい。


それから俺は数カ月間奴らの事を調べ、サザラテラに向かう途中の森で奴らを襲撃することに成功した。


成功したには成功したのだが、やはりオークは強くただでは済まなかった。


体中がボロボロで歩けなくなり、オークの死体の横で自身に回復の魔法をかける。


神を信仰することで手に入れた回復の力。


だが、その日の魔力では全快するまでには至らなかった。


それでもオークを食べたい。


冷凍保存のできないこの世界で一日たてば肉は硬くなりまずくなる。


そしてそんな状態になれば食べても力を奪う事は出来ない。


立ち上がれない俺はオークの死体に這いより、腕に噛り付いた。


オークの体は人間と同じで、赤い血が通っている。


皮膚を剥がしてしまえばそこまで違いはないだろう。


だが、一口食べると力がみなぎった。


気付いた時には体の痛みも消え、やつらの体を解体するとどの部位も無駄にせずすべて食べていた。


翌日、ある異変が起こる。


自分の力がかなり強くなっているのだ。


軽く握っただけで今まで使っていた手斧が壊れる。


握力が上がっただけでなく、かなり重い金属製の斧も軽々振り回せるようになっていた。


しかし、悪いことも起こった。


魔法が使えなくなったのだ。


回復も身体強化も今まで散々使ってきたにもかかわらず、まったく発動する気配がない。


能力石という魔力量を図る道具で調べてみると魔力は表示されなくなっていた。


仕方なく俺は回復のできる仲間を募集した。


だが、悪食と呼ばれた俺の仲間になろうと言うものはなかなか現れず、俺は毎日少しずつ西へ行っては戻ってくる生活を繰り返していた。


その頃からだ。


左手に斧、右手に槌を持ち敵を勝ち割るスタイルになったのは。


魔法が使えなくなった分、物理が通りにくい敵は力任せで押し通す。


段々と複数の敵も相手にできるようになってくる。


だが、やはり回復が出来ないので無理をせず慎重に戦うので一日の成果物は少ない。


それでも毎日毎日同じことを繰り返し、少しずつ西を目指す。


西へ徒歩で往復2週間の移動が確実になって来た時だ。


サザラテラに戻ってきて冒険者ギルドにクエストの報告に行くと一人の男が話しかけてきた。


「あなたが悪食さんですか?」


背の小さいヒョロヒョロとした男。


すれ違いざまに肩が触れれば死んでしまうのではないかというのが第一印象だった。


「僕を仲間にしてもらえませんか?戦力にはなれませんが回復は人並みにはできると思いますよ」


「それは嬉しいが、まず目を見て話せ」


こちらに怯えているのだろうか、そいつは目を閉じたまま少し下の方を向いている。


「いえ、違うんです。僕は目が見えなくて」


そう言って奴が目を開くと、その目は白濁し光を失っていた。



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