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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第二章 龍喰らいの悪食
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エンシェントドラゴン3

「ダメだセラ!俺をみろ!意識をしっかり持て!」


セラにこちらを向かせ頬をたたく。


具合が悪いのか、セラは今にも目を瞑って眠ってしまいそうだ。


「ハルト、アストリッド」


「――ダメだ。傷は塞がっているけど…」


ハルトとアストリッドには可能な限りの回復魔法をかけてもらったが効果はなかった。


セラの傷口は塞がったが例の血管の異常は治っていない。


むしろ足から少しずつ上へと広がっているように見える。


「ハルト、ここはもういいからオグたちの援護を」


オグたちは泥を防ぐ支援がないせいか、かなり押されている。


このままハルトには付いていてほしいが仲間の安全が先である。


エンシェントドラゴンの後ろから猫又の姿に戻ったケティが飛び出し攻撃しようとする。


「やめろ!!」


思わず声が出た。


あの泥に触ってはいけないのはケティだってわかっているはずだ。


セラが自分をかばった事に責任を感じているのだろう。


ケティは少し怯んだ後、迂回してヒロの横に着地した。


「お前まで死ぬ気なのか?」


「すまない」


ケティがデカい頭を下げる。


「これを見てどう思う?」


「呪いというより寄生みたいだ」


「なら止めるにはどうしたらいい」


「本体を殺すしかない」


そう言ってケティはエンシェントドラゴンの方を向く。


エンシェントドラゴン自体は間違いなく死んでいた。


ということはやはり本体はあの泥か。


「あの、話をしてもいいですか?」


アストリッドが何か言いたそうにヒロの目の前にやってくる。


「私、一回分だけ妖精の粉を持ってきているんです。もしかしたらこれでセラさんを治せるかも」


「本当に?」


「でも、今使ってしまったらエンシェントドラゴンを倒す為には使えないですよ」


「構わない。早くやってくれ」


「わかりました。皆さん、強く願ってください!セラさんを救いたいって!」


アストリッドがセラを中心に円を描くように飛び、妖精の粉を撒き始める。


するとセラの顔色がよくなった……気がする。


足は……。


進行は止まったようだが治ってはいない。


「ダメだ。やっぱりあいつを倒さないと」


だけどどうやって・・・。


あの泥が本体ならどうすればいい?


凍らせるのはどうだろうか。


ダメだ。


肝心のセラが戦闘不能だ。


ケティもさっきの攻撃ができるわけではない。


このまま仲間たちも失うわけにはいかない。


もうセラを諦めて逃げるしかない。


ポタポタとセラの顔に雫が落ちる。


――俺は泣いているのか?


戦闘中なのに何をやっているんだ。


「――俺がやります」


振り向くとハルトが立っていた。


ハルトだって悲しいはずなのに、しっかりと自分の役割を果たしている。


「なにを……」


自分が泣いてることを認識したせいで上手くしゃべれない。


「――俺がやります。ヒロさんちょっと早いけど俺の話を聞いてください。アポロの力を使うと死ぬっていのは半分嘘です」


そう言ってハルトが腕輪を外してセラの手に握らせた。


「――オグごめん。使うことにする」


オグは聞こえたのかわからないが、エンシェントドラゴンの攻撃を防ぐことに集中している。


二人は仲がいい、もしかしたら意思の疎通が出来ているのかもしれない。


ハルトの服が突然破ける。


何が起きたのかと思ったが、どうやらハルトの背中のもののせいだろう。


ハルトの背中には羽が生えていた。


ドラゴンと蝙蝠の中間のような羽だ。


それがどんどん大きくなっている。


ハルトは破けた服を脱ぎ捨てると急に苦しみだした。


よく見ると頭から角が生え始めている。


ズボンも尻のあたりが破け、ドラゴンのような尻尾が生えてきた。


「――ヒロさん、見ての通り俺は人間じゃない。今まで隠していてごめんなさい。」


「お前のその姿は……」


「――俺はインキュバスなんです」


インキュバス……って事は男版サキュバス?


だからあんな変なスキルが付いていたのか。


でもなんでスキルを押し殺して冒険者になんてなろうとしたんだ?


「――汝、力で命を照らすもの 生命の中核よ」


ハルトが聞きなれない呪文の詠唱を始めた。


恐らくあれが太陽の精霊アポロの魔法発動の呪文なんだろう。


「汝、夜を照らすもの 清らかなる乙女の象徴よ」


今度はいつもの奴だ。


「――これでつながった。聞こえていますか二人とも」


しばらく何か話していたと思ったら、ハルトの翼が大きく開く


「こっからは詠唱なんていらないよな!オグ、リロイ下がれ!」


ハルトに言われて二人が後ろに下がる。


ハルトは前に出ると右手をかざしエンシェントドラゴンの攻撃を防いだ。


素手で受け止めたわけではない。


月の護封壁で防いだようだ。


オグとリロイがヒロのもとに戻ってくる。


すると仲間たちをまとめて包むように月の護封壁が展開した。


「そこから絶対に出ないでくれ」


そう言うとハルトが宙に浮かび、エンシェントドラゴンの頭の高さまで浮かび上がり指をさす。


「――コロナ」


先日見せてもらった黒と白のプラズマがハルトの指先から放出される。


プラズマはエンシェントドラゴンの顔に直撃し、跡形もなく吹き飛ばした。


しかしすぐに首から泥が溢れ、顔の形に再生する。


「まとめて蒸発させないとだめなのか」


エンシェントドラゴンも負けずと大斧と大槌で攻撃するが、すべて月の護封壁で防がれている。


月の護封壁はあんなに強度はなかったはずだ。


しかも手をかざすだけで発動している。


あれが本来のハルトの力なのだろうか。


ハルトの両手に球体の月の護封壁を展開し、その手でエンシェントドラゴンを殴り始める。


威力が高いのか、身体を強化しているのかエンシェントドラゴンの体が浮き始めた。


なんだあのピンポイントバリアパンチはと思ったが、確かに理にかなってる。


10メートルくらいだろうか。


ある程度の高さまでエンシェントドラゴンを殴り上げると、最後に大きく一撃を入れハルトが地上に戻って来た。


「――プロミネンス」


ハルトの掌から炎…いや、赤い光線のような何かが発生し放射される。


外はかなりの温度になっているのだろう。


直撃していないのに城の壁が赤くマグマの様に溶けている。


エンシェントドラゴンは空中でハルトの魔法が直撃し、跡形もなく消失した。


なんていう威力だ。


ハルトの話を聞いていれば、最初からこの力で勝てていたかもしれない。


なのに俺のエゴのせいでセラを危険にさらしてしまった。


ハルトに謝らないと。


でもなんでだ、なんで隠していたんだろう。


うちのメンバーはハーフエルフをはじめ化け猫、クォーターオークに掟に背く妖精、恋するドワーフだ。


今更インキュバスが増えた程度でどうってことはない。


まぁ確かにインキュバスとセラの交際は抵抗があるけども。


「ぐ、ぐぁぁぁああああああああああああああああああああああ」


急にハルトが頭を抱えて苦しみだす。


そのせいかヒロたちを護っていた月の護封壁が割れるように解除された。


月の護封壁が防いでいてわからなかったが、かなり暑い。


やはりあの魔法は太陽ほどの熱力はなかったとしてもかなり高温だったようだ。


「まずい、兄さん腕輪はどこ?」


そう言ったが、セラがジジの腕輪を持っているのを見てオグはそれを取りハルトの元へ駆け寄る。


「今元に戻すから」


そう言ってハルトに腕輪をつけるがハルトの苦しみ方は治まっているようには見えない。


「ぼ、僕の荷物はどこ?ザザの腕輪もつけないと」


「荷物なら森の入り口に」


「そうだった」


オグが頭を抱える。


いったいどういう事だ?


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ハルトの苦しみ方は尋常じゃない。


「オグ、いったいどういう事なんだよ。死ぬっていうのは嘘なんだろ?」


「嘘だけど……このままじゃまずいんだ」


ミシミシと音を立ててハルトの腕輪にひびが入る。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「ダメだハルト!自分をしっかり持って!」


オグが声を上げた時だ。


腕輪が完全に砕け散った。


「ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ」


ハルトの背中の羽と尻尾が小さくなってきている。


だが、角は引っ込まず形がかわる。


やがて羽はなくなったが、今度は腰のあたりから別の羽が生え始め、尻尾は黒く細くなった。


気のせいだろうか、髪の毛が伸びて色が変わり、体は一回り小さくなったと思ったら胸のあたりが膨らんできた。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ハルトの最後の叫び声の途中で声が変わる。


「あああああああああああああああやっと抑え込んだ」


なんとハルトは見知った姿に変わった。


そう、3度もヒロを襲ったサキュバスだ。


「な、なんで・・・」


「あら、バレちゃったわね。ヒロはもう私とは寝てくれないのかな?」


そう言ってサキュバスは翼を広げ飛び上がる。


「まぁもう自由だからどうでもいいんだけどね」


そう言って彼女は飛び去ってしまった。


あのサキュバスの正体はハルトだった?


でも、なんでヒロを襲ったんだろう。


考えてもわからない。


だが、考えている時間はなかった。


「ヒロ、ヒロ!」


猫又の姿のケティがヒロを呼ぶ。


「どうしたケティ?」


「セラがまだ治っていない」


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