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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第二章 龍喰らいの悪食
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アルノの策略

ハリー達の亡骸はエルフ達により火葬され、灰は壺に入れフレイが持ち帰ることになった。


といっても、フレイはあの後泣きつかれて今は眠っている。


本人から状況を確認できていないが、わかったことがいくつもある。


「それでは食人鬼に噛まれた者は食人鬼になるという事でしょうか?」


「間違いなくそうでしょうね」


ざわざわと里長の家に集まったエルフ達も動揺の声を上げる。


ハリー達の亡骸を調べてみるとそれぞれ腕や首筋に噛まれた跡があった。


これを見る限り、元居た世界のゾンビ映画的な考えで間違いなさそうだ。


ゾンビに噛まれたものは感染しゾンビになる。


だがそんなウイルスの様なものは現実には存在しないはずだ。


しかしこの世界には魔法がある。


そして庭園の外周を調べたときにあることに気が付いた。


毒沼が庭園の外まで侵食し始めているのだ。


里長とケティに確認すると、それは魔力による呪いということが分かった。


つまり、あのエンシェントドラゴンがいる城を中心に呪いがこの森を侵食し始めている。


エルフ達が金を必要としているのはこの地を捨てる為、または冒険者へのクエスト報酬の為だろう。


あのゾンビの事を考えるとクエスト報酬はとんでもない値段になりそうだ。


ドラゴンの討伐は大きさにもよるが20ゴールドが最低金額だ。


しかし今回はエンシェントドラゴン+ゾンビウイルス。


アルノの見立てでは500ゴールドは貰えるのではという話だ。


それでも、全額を依頼主が負担するわけではない。


冒険者ギルドに依頼されるクエストはその7割ほどを国が負担している。


魔王を西の大陸に押しやって以来、東の大陸は一つの国といってもいい。


勿論、人間と取引をしているエルフも国の一員であり、クエスト報酬が500ゴールドになったとしても支払うのは150ゴールドだ。


「それで、あなた達は問題を冒険者に解決させるつもりですか?それともこの地を捨てて逃げ出すとか」


「勿論、解決を望んでいます」


「なら弓の件は了承していただけるということでいいですかね?それと、弓の取引はカシミール商会とだけという制約は無しでかまわないです。これからこの里に多くの冒険者が来ると考えれば直接買ってもらうことも考えた方がいいだろう」


それでいいかとアルノの方を見たが、アルノも異論はないようでニコニコと黙ってこちらを見ているだけだ。


「わかりました。狩りに使っている弓で良ければ人間の為に作らせましょう」


「それじゃお待ちかねの二つ目の提案へといきましょうか」


アルノが待っていましたと本を取り出しメモの準備を始める。


「先に言っておくと、この方法は最初の成果が出るまで半年ほどかかります。なので最初の利益が出てから1年間はお金はいりません。そのかわり、利益が出る半年後に貰いたいものがある」


「それはなんでしょうか」


「昨晩私の相手をしたエルフを貰いたい」


「な……」


「彼女はエルフといってもあなた達とは違う。奴隷のような立ち位置に置いているのでは?」


「だとしても……」


「アルノの見立てでは今の畜産で得ている収益の10倍の利益が出ますよ」


10倍という言葉を聞いてあからさまに反応した一人のエルフが里長に耳打ちをする。


耳打ちって言っても聞こえちゃうんだけどね、うちのネコちゃんには。


「あの女は子供を産めなくしてあるから大丈夫って言ってるニャ。まったくむごい事を平気でするやつらニャ」


と聴覚強化のスキルを使ったケティが上半身をヒロの肩に乗せて耳元で伝えてくれた。


ライラを玩具にしたのか、人間と交わった罰なのか知らないが知れば知るほど腹が立つ。


「わかった。だが、なんであの女なんだ?」


「決して孕まず歳をとるのが遅い女を欲しがらない人間がいますかね」


そう言って耳打ちをしたエルフを見ると「ちっ」と舌打ちをしてきた。


「それでは話を始めましょうか。里長、そしてエルフの皆さんはあの魔法石の力で成長を促進できる植物は何があるか分かっていますか?今現在、この里で有効活用されているのは胡椒だけのように見受けられますが」


「成長促進の効果は副産物で、我々もそのすべてをまだ理解していません」


「だが、私は気付きましたよ」


そう言って取り出した木の実を里長に放り投げる。


「これは……どんぐり?」


「そうドングリです。ドングリの木も魔法石の効果対象に入っている」


「それをなぜ……いや、仮に成長を促進できるとしてドングリが金になるのですか?」


「ドングリは金になりませんが、ドングリで育った豚は金になる。あなた達は定期的に豚にリンゴを与えているはずだが理由は分かっていますか?」


「それは肉の臭み消しの為に」


「そう、家畜は食べたものでその肉の触感や香りが変わる。牧草ばかり食べた家畜は草臭くなるように、穀物ばかり食べた家畜も独特のにおいを放つ」


ここから長い長い話が始まった。


というのも、イベリコ豚という例えができなかったからだ。


元居た世界にはドングリで育った代表的な豚としてイベリコ豚が存在する。


といっても、イベリコ豚の9割はドングリで育ったわけでは無い。


イベリコ豚は血統で、ドングリで育てられた個体は殆どいないのだ。


それ故に真にドングリで育てられたイベリコ豚は他のイベリコ豚の10倍近い値段で取引される。


つまりどういうことかというと、魔法石で成長を促進できるドングリを中心に牧草とハーブで豚を育て、ブランド豚を作るということだ。


王室に繋がっているカシミール商会の力を使えば買い手に困ることもない。


「それでは生まれたばかりの豚4匹を実験的にドングリで育て、180日後に試食しカシミール商会に値段の査定をしてもらいましょう」


「わかりました」


こうしてエルフの里の訪問は終わった。


この後はアルノが手配したカシミール商会の人間が指示通りに動いてくれるはずだ。


そして約半年間待つだけでいい。


セラの母親のライラもその間は傷つけられることはないだろう。


――馬車に揺られてエルフの里を後にする。


「本当にドングリで豚が美味しくなるんですか?」


珍しくアルノから質問されて驚いたが、どうやらアルノも疑問に思っているようだ。


「一応、偏った知識の理由付で良ければ説明しますよ」


「お願いします」


「牛や豚の肉ってのはオレイン酸っていう成分によって美味しさが変わるんですよ。オレイン酸を多く含んだ肉は風味がよくなるだけじゃなく、脂肪の溶ける温度が低くなって口当たりがよくなるんです。そこでオレイン酸を多く含んだドングリで豚を育てることによって豚の肉質をよくしようって事です」


「その知識はどこから手に入れたんですか?」


「わかってるくせに」


「バレましたか」


アルノの言葉にケティが起き上がって間に立った。


転生者と気付いてサキュバスを送り込んできたのがアルノだと思ったのだろう。


「やはり子供の事になると親は何でも喋りますよね」


アルノの一言で気付いたらしく、ケティは誤魔化す様に伸びをしてまた馬車の端に座った。


セラの母親であるライラにヒロの相手をさせるように仕向けたのはアルノだった。


アルノはカシミール商会の仕事でセラがエルフの里にいた時からセイイチと交流があり、セイイチが魔法石で成長を促進できる植物を探していたことや、今後の展開を計画していたことを知っていたのだろう。


そこに彼らの娘であるセラと一緒にいるヒロがいけば知っていることを話すと思ったのだ。


現にドングリで豚を育てることはセイイチのアイディアで、彼の手帳に計画が書いてあった。


つまり今回の一件は完全にアルノの掌で踊らされたということになる。


セラが里を追い出されたのはここ一年以内の出来事だ。


エルフの里に出入りの多かったアルノがセラの事を知っていてもおかしくない。


もっと早くこの事に気付いていればアルノに転生者とバレたなんて勘繰ることもなかっただろう。


ん?


ちょっとまてよ。


「お気付きだと思いますからお伝えしますが、セラさんがハーフエルフという件は他言無用をお約束しますよ」


アルノがニコニコとこちらを見ている。


心なしか嬉しそうだ。


くそっ。


弱みを握られた。


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