007_家庭魔法使い → 大家庭魔法使い
遅くなりましたが、どうにか出来ました。お楽しみいただければ幸いです。
紋章付き家庭魔法の試し撃ちのため、家と森の間にある広場にやって来たが、此処に来た日のようにポカポカしていい天気だ。俺も楽しみだからそれなりにテンションは高いが、セシリアは目に見えて嬉しそうに準備を進めている。今まで持っていなかった、木製の30センチぐらいで白色い、指揮棒をもう少し太くしたような物を手に持ち嬉しそうに眺めている。
「あれ、セシリアさんそれ何ですか?」
「これはですね、家庭魔法用の杖なんです。魔道具屋さんで、自分の適性とマッチしてる各魔法専用の杖を購入して使ったりするんでけど。ただこのやり方だと、応用は利かないし、セットされたものしか使えないので不便では有るんですけどね。細かい話は今日寝る時に寝物語代わりに教えてあげますね」
あ、今日も一緒に寝るの確定なんですね。
「では、畑に水を撒く時に使っていた、ショートシャワーの呪文を使ってみます」
「ええ、よろしくお願いします」
そう言うとセシリアが右手を前に出し、ショートシャワーと唱えると、畑に水をあげたのと同じ程度の水がシャーっと流れ出ていく。
二人の間に微妙な空気が流れていく。
「あれ?直也さんこれってそのまま使うで良いんですよね?」
「いや、そのはずなんだけど。もう一度他の魔法使ってもらってみていいかな」
お腹の紋章をさすりながら悩んでたセシリアが、もう一度手を前に出して魔法を唱える。
「じゃあ、お洗濯の時に使っていたウインドボールで」
セシリアが両手を前に出し、ウインドボールと唱えたかと思うと、やはり前と同じ規模の小樽サイズで風の塊がセシリアの杖の前に出来て渦巻いてる。
「これもやっぱり前と同じ規模ですね」
さっきよりも困惑に満ちた空気が二人の間に流れて行く。
「ちょ……ちょっと待って下さいね」
自分から彼女を呼ぶのは初めてな気がするけな。
「マルケッター、マルケッター聞こえますかー」
頭のなかで、空の上にいるであろう元気系居酒屋女神におもいっきり思いを飛ばす。
「あ、直也さんからの通信は初めてですね。どうしました?」
「通じた、よかった。あ、魔法、魔法が全然強くなってないんだけど、何か手順間違えてるかな俺?」
「あれ、言いませんでしたっけ、今回直也さんが刻印した紋章は理解の紋章。関係値に合わせて魔法への理解が深まり、その魔法を好きなように改造出来る力ですよ。」
こ ろ す こいつ何一つ俺に伝えてない。
「そんなわけでベースの魔力はちゃんと上がってるし、使いたい魔法に意識を集中すると本人は何となくわかると思うので、頑張ってくださーい」
うーん、結局雑な説明しか受けられなかったけど……まあ、駄目だったらまた呼ぶだけか。
「セシリアさん、その紋章は魔法を理解して、それを改造して好き強く出来る、そんな力だそうで」
お腹の紋章を擦りながら首を傾げてたセシリアがパーッと明るい笑顔になる。
「なるほど、魔法への理解……ちょっと待って下さいね」
そう言うと、目を閉じ集中しだすセシリア。
「あ…あーなるほど。直也さんどんな感じにしてほしいですかこれ?」
え、何だろう。と取り敢えず威力上げる感じでいいのかな。
「じゃあ、ショートシャワーの威力を上げる事って出来ますか?」
少し目を閉じ、何か悩んでるようなセシリアが目を開き、森の方に向き直す。
「威力上げるですね、多分これで大丈夫だと思うので見ててくださいね」
そう言うと、彼女がさっきと同じように杖を森の方に向け呪文を唱える。
「ショートシャワー!!」
彼女が呪文を唱えた瞬間、杖から数十本の鋭い水流が放射状に飛び出していく。
「え、え、きゃあああああああ」
あまりの勢いに驚いた彼女が、杖を左右に振ると、それに合わせて数十本の水流が左右に揺れて、目の前の森が細切れに切り刻まれていく。
「セシリアさんストップ、ストーーーップ!!ショートシャワー止めてーーーー」
彼女がハッと気づいたかと思うと、水がピタッと止まった。残ったのは目の前の森の一部から作られた大量の木片。薪には当分困らないな……うん。
「わ、私、ショートシャワーの事を考えたら、範囲とか出力こうすれば変わるなって分かって、元は弱いし思いっきり強くしようと思ったら」
理解力が上がるは伊達じゃないな。出力以外にも範囲とか言ってるし……なるほどな?
「セシリアさん、出力少しあげつつ範囲を狭めること出来ますか?」
「少しあげて範囲を狭めるですね。ちょっと待って下さいね」
彼女がまた少し集中して、杖の先をさっきより少し横の森にむける。
「範囲狭めで……ショートシャワー!!」
今度は直径10センチ程の水流が真っ直ぐに、木の中央に飲み込まれていく。
「直也さん今度はちゃんと制御できそうです。こ、これちなみに何時止めればいいですか?」
杖の先から勢い良く水流を出しながら、セシリアが此方を見てくる。
「あ、止めて大丈夫ですよ。森見に行ってみましょうか」
セシリアはショートシャワーを止め、杖を下ろすと、疲れたのだろうか、少し肩が上下している。
「慣れない事だったので、流石にちょっと疲れますねこれ」
「有難うございます、無理を聞いてくださって」
そして2人で試し打ちをした森の方に向かって行くが、これは酷い。まず、最初に放射状に細い水流を左右に振った場所は、森から縦横5メートルの木が細切れにされて、地面にうず高く積まれている。範囲を狭めた方は逆に木は一切倒れてないが、水流と同じぐらいの直径をした綺麗な穴が、数十本の木のぶち抜き、穴を除けば奥の方までスカンと綺麗に抜けていた。
「直也さん、これ私本当にどうなってしまったのでしょうか」
「どうなってしまったも何も、紋章持って魔法改造できるようになっただけ……だけですよ」
「家庭魔法ですよこれ。家事ぐらいにしか使えない」
「じゃあ、今日から家庭魔法使いあらため、大家庭魔法使いとでも名乗りますか」
2人が顔を見合わせ、乾いた笑いが森に木霊する。
紋章師めちゃくちゃだこれ。
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また、割烹も初めて書きましたので、よければどうぞ。
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