005_告白
今日は凄く気持ちい朝だ。溜まってた物を吐きだせたからか、凄くすっきりした朝を迎えた。セシリアはやっぱり俺より先に起きていて、朝ごはんを用意してる。
「おはようございますー直哉さん。ささ、もう朝ごはん出来ちゃいますから食べましょう」
今日も元気にキッチンで朝食の準備をしてるセシリア。初日にもやっていたが開けた戸棚を、手がフライパンで塞がってるとは言え、えいって言いながらお尻で閉めるのはどうなんだろう。様式美なのか、癖なのか、誰も見てない40年で何かが欠けてしまったのか……いや、彼女の事だからここに来る前からあんな感じなんだろうな。
今日も今日とて、皆大好きパンケーキとチャイもどき。美味しい朝食を堪能しつつ、それ自体はサクッと食べ終わる。さて、彼女に話すか……やだなー、断られたら本当にやだなー、もう少し様子見てからでも良いような……でも、どうせ何時か言うし、昨日添い寝してもらっちゃったし、こんな優しくて良い人が外に出たいって言ってるんだし……おっしゃ、`漢`新谷直哉気合い一発告白します!!……ああああ、心配だーーー。
「セシリアさん、お話しが有ります」
朝食も食べ終わり、チャイもどきを飲んでホッとしているセシリアに、マルケッタにこの世界に来てと言われた時と同じぐらい真面目雰囲気で彼女の顔を見る。彼女は少し困惑しつつも何か納得したかのような顔をして、マグカップを机に置き、両手を机の上に載せこちらを見つめてくる。
「はい、直哉さんどうしました。何か真面目なお話の様ですが」
「その、実は……御免なさい、セシリアさんに俺嘘ついてました!!多分ですが、ここから外に出れる力、俺持ってます」
言った、言った、言っちゃったぞ!!!あーーー怖い、彼女の反応がただただ怖い。もし拒否されたり、幻滅されたような顔したら俺どうすればいいんだ。あーあーあー、時間よ撒き戻ってくれ、怖い、怖すぎる。てか、セシリアさんこっち見て、ちょっとだけ目を丸くしてる。駄目か、駄目なのかこれ。
色々考えが嫌な方向にグルングルン回ってる時に、彼女がクスッとほほ笑む。え、何、何で笑うの?あれか、君には失望したよ系でサクッと俺やられちゃう系とか。
「あ、御免なさい。その思ったより早くお話して下さって嬉しかったと言うか、よかったと言うか。あの、有難うございますお話しするって決めて下さって」
何、あれか彼女もマルケッタと同じ思考読める系?じゃあ、彼女の胸見て色々考えてる事とか筒抜け?あれ、俺死んだ?彼女が俺の顔が引きつって固まってるのを見ると、慌てて両手を顔の前で振って訂正してくる。
「あ、違います違います、その直哉さんずーっと私と出会ってから、何か考えてると言うか、私の顔を見る時は大抵どうしようって顔で見てくるんですもの。それが1回や2回じゃなくてこの2日で何回も有れば、誰だって気づきますよ。あー、これ何か隠してるなって。でも、まだこっちの世界来たばっかりだし、昨日その夜……ね、まだ気持ちが落ち着いて無いかなと思って、何時か話してくれたらいいなーって考えてたら、思った以上に早くてびっくりしちゃって」
凄い申し訳なさそうな顔で彼女が弁解してくる。oh、俺の考えダダ漏れだったー。しかし、優しすぎるよセシリアさん。彼女の外に出ると言う念願の夢がかなうかもって時に、相手の事考えてくれるとか、もう女神だよ、これこそ女神だよ本当に。なんか悩んでた俺がバカみたいだな。
「有難うございます。じゃあ、俺が女神様から授かった力の説明しますね」
「はい、宜しくお願いします」
「俺が女神様から授かった能力は紋章師と言います。僕自身は一切強くならないんですが、紋章を授けた人はとても力が強くなります」
「紋章師?初めて聞く力ですね。その私でもその紋章を授かったら強くなれるんですか?家庭魔法しか使えず攻撃なんて期待できない私みたいダークエルフでも本当に外のモンスターを倒せたりしちゃうんですか!!」
彼女が少し興奮した様子で、机から体を俺の方に乗り出し一気に質問してくる。
「ちょ、近い、近いセシリアさん。落ち着いて、座って下さい」
「あ、ごめんなさい。その、私が強くなれるって思った瞬間興奮してしまって……お恥ずかしい所を見せてしまい御免なさいね」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、彼女が自分の席に座りなおす。
「いえ、40年出来なかった事が出来ると思ったら、しょうがないですよね。その、強くなれるかって話ですけど、多分大丈夫です。僕自体まだ誰にも紋章を授けた事無いし、どうなったかって見た事無いですが、女神様が言うには凄く強くなるらしいので」
「なるほど!!じゃあ、私でも強くなれるんですね。ささ、直哉さん紋章を私にこう、サクッと付与して頂いてですね」
興奮したセシリアが、さっきよりも机から前のめりになって、俺の方に体を近づけてくる。顔が近すぎて恥ずかしいやらなんやらで目線を下に落とすと、今度は前のめりにこっちに体を出してるせいか、襟元から胸の谷間がこう、ね、うん、何か逆に俺の方が落ち着いてくるなこれ。
「すとーっぷ、戻って、戻ってセシリアさん、見えてる、色々見えてる」
彼女が自分の現状に気付いたのか、今度こそ頬を赤らめながら、しずしずと自分の椅子に戻っていく。
「さて、紋章ですが少し制約も有ります。この紋章を受けると僕が死ぬまで紋章を消す事は出来ず、他の加護も得られなくなります。具体的には他の紋章師だったり、伝説の生き物からの加護、はたまた女神様からの加護等など、今後えられるかもしれない加護を、セシリアさん自身は得られなくなってしまいます。これは一時的な物とかなら大丈夫で、たとえば僧侶からの支援魔法等などは含みません」
「あら、そしたら私は直哉さん専用になってしまうんですか。キャ、恥ずかしい♪」
両手を頬に当てて楽しそうにキャッキャしてるぞ120歳。なんか、さっきまで悩んでた自分が馬鹿らしくなってきたな。いや、良いんだけどね良い方向に進む分には。
「正直制約と言えばそれぐらいで、何か僕に吸収されたり、命令を絶対服従とかは無いので、そう言った心配は特に大丈夫ですよ」
「なるほど。ちなみに紋章って私一人だけしか授けられないのかしら?」
「最初は一人だけなんですけど、セシリアさんと関係値が深まって有る程度強くなればまた一人増やせるらしいですね。ただ、そんなぽこしゃか増えるもんでも無いらしいので、授ける場合は慎重にとは言われてます」
「関係値?」
「ええ、僕と紋章を授けた人の関係値が深くなれば深くなるほど強くなれるそうで。具体的には、僕がお願いしてモンスターを倒してもらったり、今みたいにご飯を作ってもらったり何でも良いそうです」
「何でも良いんですか。へー、何でも。……ふふ、そうなんですね、ええ、ええ、良いですね、大変良いですねそれは」
彼女が怪しい笑みを浮かべ、何か一人で納得してるのが非常に怖いが、この際それは置いておこう。え、何でって?どう見ても藪蛇でしょあれ。
「さて、そんなわけで有る程度説明しましたが。どうしますか。今ならまだ止めて他の方法を探すって事も可能ですが」
「いえ、是非直哉さんの紋章を頂ければと思います。私が直哉さんから授かった力でお守りして……あれ、直哉さんは何が目的なんでしたっけ」
なんか、何処かで見たなこの光景。そうだよね、そうなるよね。
「僕は、正直に言えば女神様からこの世界で楽しんできてと言われてて。その際に僕が強くなったりすると彼女もより尊い存在になれるそうなので。特に最初は目的は有りませんが、セシリアさんは何か有りますか?」
そう言うと、彼女はスッと真面目な顔に戻っていく。
「私は1つだけ有ります。父と母があの日からどうなったかをこの目で確かめたいんです。あの日、両親の悲鳴がずっと耳から離れなくて、今でもあの時の私に力が有ればと何度も思い出します」
「そうですか。では、僕たち最初の目的はセシリアさんの実家に戻る事にしましょうか」
「え!良いんですか本当に?直哉さんには一切関係の無い話ですし、その、楽しいお話とかじゃ無いですよ」
「いえいえ、むしろ僕はこれと言って目的が無いわけですし、是非お手伝いさせて下さい。それに、僕の紋章を受けてくれて我儘を聞いてもらうんですから、これでおあいこですよ」
そう言うと、彼女は下を向いてしまう。何か悪い事行ってしまったかと思ってると、彼女の手を涙が濡らし始めた。
「ふふ、御免なさいね急に泣いてしまって。その、優しいんですね直哉さんは。私をここから連れ出してくれるだけじゃなくて、願いまで叶えてくれるなんて。やっぱり直哉さんは女神様が使わしてくれた天使様じゃないんですかね」
「いやー、残念な事に思いっきり人間なんですよね。ほら羽なんてどこにも無いし、天使の輪っかも出せないし。じゃあ、まだまだ話したらきりないですし、紋章授けるのやってみましょうか」
「はい、宜しくお願い致しますね直也さん♪」
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