030_冒険者養成所の平穏な生活終了のお知らせ
眩しいな、ってもう朝か。窓から朝日が差し込み、頭が少しづつ覚醒してくる。昨日は冒険者養成所にとりあえず入学して、特に問題無く……うん、特に問題無く無事入学できたな。僕自身の弱さを披露し、二人のとんでもない力をたっぷりと見せつけ、そりゃーもう派手なご挨拶で……辛い。首だけ動かして左右を見れば昨日ベッド別々で寝てたはずなのに、右を見れば真っ裸のセシリアが、左を見れば真っ裸のジルが横になって僕を挟むように寝ていて、昨日ちゃんと服を着て寝てたと思ったのだけど、何故かパンツ一丁の自分。これ寝てる間に彼女たちこっちのベッドに移動して服脱がせたな。くそう、こっちは二人のせいで平穏な生活が絶望的だっていうのに気持ちよさそうに寝やがって。
とは言う物の、彼女たちと生活するようになってからフカフカで柔らかくて大きなこの胸は生活に無くてはならないような気がしてくる。今も朝の冷たい空気で冷えた顔をとりあえず眼の前に有るセシリアさんのふかふかで温かい胸の谷間に埋めながら彼女の背に手を回してギュッと抱きつく。冷えた顔がジンワリと人肌で温まってきたなと思うと、急に頭を優しく撫でられる感触が。
「おはようございます直哉さん、よく眠れましたか」
「おはようセシリアさん。ごめん起こしちゃったかな」
「ふふ、直哉さんに甘えて起こして頂けるなら大歓迎ですよ」と、セシリアに頭を撫でられながら朝のまどろみを楽しんでると急に後ろから抱き寄せられ、違う柔らかい胸に後頭部から挟まっていく。
「おはよう直哉、よく眠れたかしら」顔を上に向けると、狐耳がピョコピョコしながら憎めない笑顔のジルが嬉しそうに此方を見てる。
「おはようジル。昨日は初めて砲術使ったと思うけど疲れてない?」彼女の紋章の力でお酒を自由自在に扱えるのを応用した砲術。彼女にしてみればぶっつけ本番で成功さしてくれたが実際はどうだったのか。
「ふふ、貴方の砲術師があれぐらいで何かあると思って?」猫の喉をゴロゴロするように、ジルの温かい指先が僕の顎の下をゆっくり撫でてくる。
「心配しただけだって、やめてくすぐったいよ」彼女の胸の中でゴロゴロしてくる手から逃れようとするが、結果として顔が彼女の胸により深く沈み込むだけだった。
「やん、直哉が胸の中で暴れる」
「やめなさい雌狐。直哉さんが困っているでしょ」そして、セシリアさんに体を抱きかかえられように回収され胸に顔が埋まる。このやり取り安心するなー。はて、でも何か忘れてるような。
「きゃあああああああああ、裸で何してるのあなた達!!」部屋いっぱいに響き渡る悲鳴の方を見ると、可愛いい赤のパジャマとナイトキャップをつけた同室のカカが布団から飛び起きてこっちを見てる。あ、ここ宿じゃなくて養成所の相部屋だ……あっはっは、どうしよこれ。
「何んですか、急に大声あげて。まだ朝早いから、静かにしないと皆さんにご迷惑がかかりますよ」うん、言ってる事は至極まともだけど、素っ裸で僕の頭を胸に閉まいつつ、頭頂部に頬ずりしてなければもっと説得力あると思うな!!
「そうよ、私だって直哉とヤるの我慢してるのに、貴方も少しは人様の迷惑考えなさい」とりあえず、突っ込みどころしか無いけど、僕の腰に抱きついて背中甘噛してるジルには言われたくないだろうな。
「ヤるって何をヤるのよ!!」カカが掛かってた布団を抱きしめて警戒しながらこっちを睨みつけてくる。
「ナニに決まってるでしょ」ジルが右手の親指を人差し指と中指の間から出し入れしてナニを説明すると、彼女の顔面にカカの枕がクリーンヒットしたのが開戦の合図。ジルがカカに飛びかかり迎撃するが、昨日のジルを見てあの反撃はなかなか肝が座ってると言うかなんと言うか、彼女は良い冒険者になるだろうなーと、未だにセシリアさんに頭頂部を頬釣りされながらぼーっと目の前の喧嘩を何時止めようかなと考えてると、突然扉が開き「朝っぱらから五月蝿いぞ何してる!!」と、教官のゴークスが怒鳴り込んでくるが、部屋の中を見た瞬間固まってしまう。赤いパジャマが半脱ぎになりかけたカカとそれに覆いかぶさってる真っ裸のジルに、顔が胸で隠れて見えない僕とその胸を左右から手で押し込んで僕の顔をムニムニして嬉しそうなセシリアさん「とりあえず服を着ろおおおおおおおお!!」まったくもってその通りだ。
そのあと、何故か4人共服を着た後に正座させられてゴークスからお説教。曰く、服を着ろ、せめてここにいる間ぐらいヤるな(そもそもヤってはいないとジルが言ったら、この惨状は似たようなもんだって拳骨落とされてた)などなど、至極常識的な事をたっぷり言われた。「なあ、ここは冒険者養成所であって、社会の常識を教える場所じゃないんだぞ」呆れた顔でゴークスが溜息ついてる、本当に申し訳ない。
「とりあえず、朝食食べたらさっさと演習場に集まれ、朝の運動した後各種カリキュラムに振り分けるから」そう言って、ゴークスは部屋を出ていく。さて、朝食か何が出るのか今から楽しみだな。
「もーーー、朝から最低よ。絶対今日中に部屋変えてもらうんだから!!」カカはとばっちりで何故か正座させられて説教までされてた。
「ええ、そうしてくれると色々ヤれるからこっちも助かるわ」ジルが僕の頭を撫でながら一ミリもさっきの事を反省してる様子を見せ無いセリフをのたまい。
「あら、雌狐もたまには良い事言いますね」すすっと僕の背中に回り込み両手を僕の首に回してくるセシリアさんもやっぱり反省の色なし。僕の紋章刻印された人は言葉が通じなくなるのだろうか、おおん。
「もう、絶対絶対変えてもらうんだからー」カカの叫び声がまた部屋にこだまする。うーん、彼女のキャラ美味しい気がしてきたな。
彼女と別れた後(と言うより、近くに居たら仲間だと思われるから近づくなって言われた)食堂に向かう事に。木製の校舎をゆっくりと3人で歩いてくと、良い匂いが漂ってくる。これはベーコンとパンの香りかな?少し先の部屋からガヤガヤと音がして、木の看板にお皿とナイフとフォークの絵が描いてある。
「ふふ、朝ごはん何でしょうね」
「セシリアさんの朝ごはんより美味しい物は中々ないですから、ちょっとだけ心配かな」そう言うと彼女が両手を頬に当てながら「もー何言ってるんですかー」って顔がニヤケてる。
「ほら、いちゃついてないでさっさと行くわよ」ジルに呆れられながら食堂に。
「いや、これ凄いな」食堂は一度に数百人が食事ができる大規模な部屋と言うかこれもう体育館だな。天井も高く数百人が一斉に食事をしても息苦しくないのは素晴らしい。50人は座れる長机が何本も縦に置かれ、各々が奥の窓口から食事を受け取って好きな席で食べていて、これだけでも凄い喧騒だ。
「昨日の試験が10人いるか居ないかだったから、小さい規模かなと思ったけど、一体どこにこれだけの人が居たのかしらね」ジルの言う通り、正直この人数は予想してなかった。人間、エルフ、獣人など人種は関係無く、年齢だけは新人育成がメインなだけ有って、基本若めだ。
「直哉さん奥の方で受け取れるようなので行きましょう」セシリアさんが僕の手を掴んでずんずんと奥の窓口に進んでいく。窓口に行くと、如何にも食堂のオバちゃんと言う感じの見た目の人がエプロン姿で元気よく挨拶してくれる。
「あら、お寝坊さんたちね。皆もうご飯食べ始めてるからちゃっちゃと食べちゃいなさい」そう言って、トレーの上に黒パンのトースト2枚と茹でたジャガイモに少し厚めの塩漬け肉を焼いた物と玉ねぎのスープを置かれる。
「さて、直哉何処に座りましょうかねこれ」ジルの言う通り、3人共朝食を貰ったものの座る席が無い。不思議な事に何故か僕たちが一番最後らしく、席が何処にも空いてない。3人でウロウロしてるとやっと1席だけ見つけたが、が、が、が、あそこはちょっと避けたいな。
「お、寝坊助冒険者様がやってきたぞ」昨日の試験に居たフルプレートの青年と従者の人達が席に座って朝食取っている。彼らが座ってる席の一番端っこが1席だけ開いてるが数も足りなければ、アレの横に座るのもご遠慮願いたい。
「昨日のアレを見てよくもまあ直哉さんに舐めた口を聞けますね」セシリアさんが一言釘を差し、横の従者の人も彼に小声で何か言っている。
「お前たちがどれだけ凄かろうが、そいつの剣の腕はお察しなのには変わりないからな」うーん、この微妙に言い返せない内容を選んでくる辺り、こう言う事言うの相当慣れてるな。横の従者の人もまた始まったと言わんばかりに疲れた顔をしている。
「ほら、二人はお前の武器なんだろ。武器は自分の横に置いといて、ここに座って食べたらどうだ」フルプレートの青年が、ご丁寧に自分の横の空いてる席を従者から受け取ったハンカチでササッと拭いて、憎たらしく勧めてくる。
「ふふ、そうですね。直哉さん是非お座りになって下さいな」セシリアさんがまたニッコリといい笑顔になってる。やだ、怖い。
「そうね、直哉は座って食べてちょうだい」ジルもいい笑顔だけど、尻尾が全部逆立って上を向いてる……何これ。周りも、大体食べ終わりなのか、野次馬とまでは行かないが聞き耳を立てたり、こっちをチラチラと見始めている。ううううう、目立つのは昨日だけでいいのに。とりあえず、さっさと食べてここから退散しよう。
「じゃあ、二人共ごめんね。先に座ってささっと食べちゃうね。終わったら交代するから」そう言って、ニヤニヤした笑顔の青年の横に座ってトレーを机に置く。横から「本当に座ったよこいつ」って小声で笑い声が聞こえてきて、もう嫌。と思ってたら、「では、失礼いたしますね」と言いながらセシリアさんが僕も左太ももの上に腰掛けて来る。眼の前には彼女の服から北半球が丸出しになっている小麦色の物体が2個眼の前に鎮座し、大きなお尻と太ももは服の上からでも分かるほど柔らかく、僕の太ももにそって沈み込んでいく。
「セシリアンさん何してるんですか???」
「いえいえ、そこの青年が私達の事を武器と呼んでくださったので、ちゃんと武器の持ち主に装備して頂いただけですよ」この人は怒ると本当に何言い出すか全く想像がつかない。
「あら、奇遇ね私も同じこと思ってたのよ。直哉、失礼するわね」と、ジルが右の太ももに腰掛けてくる。彼女のTシャツの胸元が大きく開いており、白く大きな左胸には僕の紋章がしっかりと刻印されており、間近で見ると凄いな色々と。ジルのお尻も例に漏れず大きくふかふかで、太ももにじんわりの彼女のぬくもりが伝わってくる。
「ささ、直哉さんあーん」セシリアが肉を一口サイズに切って口の前まで持ってきてくれる。隣はもちろん周りからも、何だあれ、羨ましい殺す、新しい試験かあれは、などなど、周りのざわつきで正直食欲は消え失せて、さっさとここから消え失せたい気持ちで一杯だ。
「直哉こっちも美味しそうよ」ジルもパンを一口サイズにちぎって口の前に持ってきてくれる。とりあえず両方共口に入れて、二人に美味しい?って聞かれたので美味しいとだけ答えるが、正直周りからの視線で味なんて一切しない。
「よかった。まだまだありますからね」セシリアさんとジルが横を向いて、トレーからご飯をよそって僕に食べさせようとこっちを向いた瞬間、膝に座られて逃げられない僕の顔面に二人の胸が少し勢い余ってしまったのか、ぶつかってくる。二人共胸は凄く柔らかいけどとても大きいから質量が有り、少し首が後ろに持っていかれる。その瞬間周りの男性陣からはぁああああああ??と言う突っ込みの嵐。なんだそれ羨ましすぎるだろ、いくら払ったんだ、よし訓練所にこい俺が独身冒険者代表として決闘を申し込むなどなど、何もしてないのに周りから熱いラブコール。これもう僕の平和な養成所生活終わったな。
「おら、お前ら何時まで食ってるんだ。って何集まって……直哉ーーーーまたお前かーーー!!!!!」ゴークスが何時までたっても演習場に人が来ないから食堂を見に来たらこの惨状。とりあえず、僕たち3人共問答無用で拳骨が頭に落ちると言う事だけはよーくわかった。
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そんなわけで、冒険者養成所での生活も結局ろくでもない事になるのが確定した直哉くんの明日はどっちだ……まあ、うん、仕方ないね!!あと、そろそろフルプレートの彼の名前考えてあげないとね!!