025_ジルのお着替え(立ち絵有り)
3月17日 → タイトル変更
バルツァーに三日後に来てくれと言われたけど、それまでの間は本当に忙しかった。初日はとりあえずジルに刻印された紋章の検証だけで一日で終わってしまった。わかった事は自分が触ったお酒に関しては濃度の上げ下げ、熟成具合、炭酸ガス圧などなど、とりあえずお酒に関する事は自在に変えられた。また、自分がお酒の原料だと認識してる物に関しては、一度触っておけば瓶の中に原料だけ入れておいても、一気に完成品まで持っていけた。5セットぐらい水、麦、ホップ、酵母を入れた瓶を作ったけど、半径5メートル以内だったら自由に瓶の中をエールに変えられた。試しに水、麦、ホップ、酵母、鉄屑、海藻、生きた魚、を纏めて桶に入れてエールを生成しようとしたが駄目だった。
二日目はケラー醸造所の工場長のドルキーに三人で来いと言われたので、やっぱりジルは行かせられないとか言われたらどうしようかと思ったら全然違った。
「おう、おせえぞお前ら」ドルキーと従業員のアンナとルーチスが醸造所の前で手を振って僕たちを待っていてくれた。が、それはそれとして何だあれわ。ドルキーの前には巨大な幌馬車が1台停まっている。幌馬車は通常より二回り程大きく、繋がれてる馬も普通の馬より体格が一回り大きい。足も丸太のように4本とも太く、走るより運ぶのに適した形をしている。
「おう、ジルお前を冒険に出すのはやぶさかじゃねえがケラー醸造所を辞めるのを許した覚えはねえ。そこでだ、せっかく世界を回ってくるんだから、この移動式酒場でケラー醸造所のエールの素晴らしさを世界中に宣伝してこい」ドルキーが笑いながら平手でバンバンと馬車の側面を叩いてる。あのガタイからの平手を受けてびくともしない馬車って凄いな。よく見ると、馬車の左側の幌の一部は紐を引っ張ると酒場のカウンターに変わり、中には住居スペース、物置に加えて簡単な調理スペースも有り、セシリアの家庭料理も一緒にこれなら出せそうだ。ん、ジルが下向いてる。
「も、もう馬鹿なんですか。こっちは自分都合で勝手に出ていくって言ってるのに」ジルが少し赤くなった目で恥ずかしそうにしている。
「がっはっは、先代の頃からずーっと働いてくれてるんだ、これくらい有ったってバチは当たらんだろ。直哉こいつは色々大変なやつだが悪いやつじゃないのは俺が保証する。よろしく頼む」ドルキーが両手を膝に付き深々と頭を下げ、一緒にアンナとルーチスも頭を下げる。
「頭を上げて下さいドルキーさん。こちらこそこんな素敵なお嬢さんを急に攫うような感じで連れて行く事になってしまってすいません」自分も深々と頭を下げる。当初は彼女を連れて行く予定なんて一切無く、急遽こんな事になってしまった。正直ぶん殴られても文句言えないんだけど、本当に彼女は皆に愛されてたんだな。
「あー、いたいたジルーーー!!」急に声をかけられて何かとおもったら、ザジ食堂のチニリが大きな袋を持ってこっちに走ってくる。
「チニリ、どうしたのいったい?」ジルがチニリの方に駆け寄っていく。
「ふふ、貴方が遂に素敵な男性捕まえたうえに、街を出るって聞いたから急いで用意してきたのよ」彼女が持ってきた大きな袋をジルに手渡す。「ドルキーさん事務所とジルちょっと借りますねー」とジルの手をつないで有無を言わざす中に入っていった。
「直哉ありゃなんだ?」首を傾げるドルキーと僕。15分ぐらいだろうか、急に扉が開いたと思ったら……いや、凄いこれ。
「……直哉似合う?」恥ずかしそうにジルがこっちを見てる。
「う、うん凄く似合ってるよ」ジルは上半身は胸元と刻印された紋章がばっちり見えるヘソ上までのTシャツの下に白いキレッキレのハイレグ型のランジェリーに革ジャン。下半身はハーフバックのホットパンツに乗馬の時などに足を小枝などから守ってくれる革製のチャップスと脛当てにブーツ。カウガールとバイカーを足して2で割った感じの衣装だが、これは凄く可愛いしジルに似合っている。ジルが皆に衣装を褒められてるのを少し恥ずかしそうにしてるのを可愛いなと思って眺めてると「痛ったい!!」急に脇腹に痛みが走った、セシリアがムスッとしながらつねってる。
「直哉さん、ああ言うの過激な服が好みなんですね」頬を膨らませて横向いてるの可愛いけどセシリアさんだって人の事言えない格好なのは黙っておこうそうしよう。
「セシリアさんも凄く綺麗で可愛いから大丈夫ですよ」とセシリアの方を向いて言った瞬間に後頭部に柔らかい物が当たる。
「直哉どうこの衣装。チニリが私の出発祝に用意してくれたの」少し小走りでジルがこっちに来てくれた。
「凄く可愛くてジルに似合うと思うよ」ジルの方を向いて改めて言うと、顔が少し赤くなりながらもじもじしてるジルが可愛い。何時もは過激な事ばっか言うけど、こう言う時は素直に女の子だなー。と思ったら、また後頭部と言うか、頭の上に柔らかい物が乗っかる。
「直哉さんは衣装が可愛いと言ってくださってるだけで、別に貴方を可愛いとは言ってないと思いますよ。ねえ、直哉さん」やめて、そんな同意求めないで。ジルとセシリアが僕の頭の上でぎゃーぎゃー言い合ってるのを、ドルキー達は笑い、チニリは僕を見てご愁傷様と祈ってる。これこの先もずーっと続くんだろうなー。
三日目。遂にバルツァーに言われた日だ。朝から新しい衣装に着替えたジルと、何時もの衣装のセシリアの3人で冒険者ギルドに。噂はもう広まっていたのか、受付に行く間に「ジルが本当に仲間になってる」や「うっそ、俺狙ってたのに」や「ぶぅっふぉおおおまじか、あんな厄ネタを身内に入れたのか」と言ったやつはジルが尻尾で器用に机の上に有ったコップをそいつの頭にストライクさせてた。
「ふふ、もう今ではこのギルドで知らない人がいなさそうですね」ギルド職員のトリーがケラケラ笑いながら受付してくれる。そのまま奥のギルマスの部屋に連れていかれると、今日も今日とて忙しそうなバルツァーが机で作業をしていた。
「おお、来たか。座れ座れ」二人に挟まれるように座る僕を笑いながらバルツァーが対面に腰掛ける。
「ほれ、これがお前らの行く冒険者養成所の推薦状だ。地図も中に入れてあるから、受付行ってこれ渡せば簡単な実技試験やるだけで入学できるからがんばれよ」蝋で封をされた手紙を大切に受け取る。「お前らが一通り終わるのが多分二ヶ月ぐらいだ、その間にセシリアの実家の件はこっちで調べとくから、安心して勉強してこい」こう言う細かい所にちゃんと気が回るからこの人はここでギルマスをやってるんだろうな。
「有難うございます、よろしくお願いいたします」セシリアが深々と頭を下げる。
「お前さんがしっかりと直哉を守れるようになってくれれば俺も嬉しいから気にするな。そうだ、直哉これがこの間の報酬だ」バルツァーが腰につけてた重そうな革袋を机の上に置く。ああ、すっかり忘れてた、革袋の中には大金貨8枚と金貨6枚が入っていた。「雑魚が金貨2枚で17人、元シルバーが金貨6枚で2人に、バーニーズが元ゴールドって事で大金貨2枚にギルドからの依頼費で大金貨2枚の大金貨8枚と金貨6枚だ」日本円で86万か、これはちょっとしたもんだな。
「有難うございますこんなに」
「これもお前らの実力だよ。騎士団と憲兵団もあの惨状見せられた後に俺が依頼したって言ったら気持ちよく払ってくれたぞ」うーん、さすがと言うか何と言うか複雑な気分だ。
「よし、遠足のお小遣いも持ったし、すぐに使い切るなよ」小学生じゃないんだから……彼にしてみればブロンズの冒険者なんてそんなもんか。
「わかりました、とりあえず今日いろいろ準備して明日出発する事にします」軍資金も手に入ったし食料や旅の道具も買わないとな。
「おう、準備も冒険者の立派な仕事だしっかりやれよ」
「では、直哉さん色々買い物行きましょうか!!」
「直哉、二人でゆーっくり買い物デートしましょうね」2人に左右の手に抱きつかれて強制的に立ち上がらさせられる。バルツァーが女の買い物は長くて大変そうだと笑いながら、僕もそこは同意だなと思った。
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ついに、ジルの正式衣装も出てきました。色々紆余曲折有った衣装なんですが、個人的には大好きな衣装ができたなと思っております。そして、出てきちゃいました移動酒場。ジルのお酒とセシリアの料理で世界中ありとあらゆる場所で飲んだくれるぞい!!