001_プロローグ(表紙と立ち絵付き)
ここは?
寝てたのか、目を開けて横になってた体を起こす。そこは真っ白な世界が地平線の果てまで続く不思議な場所。もちろん空も真っ白な光景が永遠と続いている。さっきまで、会社から帰ってる途中で……これが死後の世界か。
たしか、帰ってる途中で突然目の前にトラックが歩道に乗り上げてきて、そこまでは覚えてるけど。
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死ぬ時ってのはあっさりしてるな。まあ、痛い思いするよりはましか。悲しい気分になるでもなく、現実感がわかないと本当にあーって気分にしか、
「いらっしゃいませーーーーーー!!!!!」
「わああああああああああああああああ」
元気系居酒屋の入店よろしく挨拶されて、びくっ!!となって後ろを見るとそこには居酒屋店員では無く、ただただ可愛い女性が、、、いや女神だこれ。
知ってる、この神話に出てきそうな白い布1枚だけで作ったような服は絶対女神だ。それに何か後光めっちゃ射してるし、極めつけはちょっと足が地面から浮いてるもん。背は俺よりチョイ小さいぐらいの金髪のおでこちゃんで普通に可愛い。でも、あれだな女神って胸小さい人も居るんだな。
「私が小さいんじゃなくて、周りが大きすぎるんです!!!!」
考えまで読める系だこの人!!本物ってか俺は本当に死んだんだな。失礼な事を考えてしまったからか、ちょっとむすっとしてる彼女。
「はい、とても残念なんですけど新谷さんは死んでこのままだと、黄泉の世界に行っちゃいます、なので是非是非新しい世界に行きませんか!!」
あ、駄目だこの子アホだ、絶対アホの子だ
「初対面いきなり死亡宣告って、それに何で俺の名前知ってるの?」
「はい、それは私がお呼びしたんですから。新谷直哉さん、えー歳は29歳で……あー普通の人生送ってますねー」
「うるせえ、こちとら普通のイベント会社の営業担当だよ」
「まあまあ良いじゃないですか、だからこそ私なんかにも回ってきたわけで」
今、凄く聞き捨てならない事を言ってた気がする。
「では改めて自己紹介させて頂きますね。私は貴方を此処に招きました女神のマルケッタと申します。そんなわけで、死ぬのと新しい世界行くのどっちが良いですか?」
やっぱりこの子アホだ。
「早い早い、話しすっ飛ばし過ぎ、もう少し順序立てて説明してくれ」
なんか、既に疲れてきた……死んでるけど。
「すいません、初めて転生を担当する事になって嬉しくてつい、えへへ」
両手を頬にあてて赤らめて可愛い笑顔の彼女だが、取り合えず話を聞こう。
「あれか異世界でゲームや漫画宜しく魔王を倒してくれとかそう言う系?」
彼女はすこし真面目な顔で、顎に手を当てて少し考えてから
「もちろん、世界の秩序を守ってくれれば私の評価も上がるので大変うれしいですけど、それはまあおいおいって事で。それに魔王って言っても、悪い人ばっかじゃないし、倒せばいいってもんでも無いですからね。」
「OK、分からないけど少し分かった。で、なんで急に俺が貴方……えーと、マルケッタだっけ。何で俺は貴方に呼び出されたのかな?知っての通り、生前は普通に生きてたし何か英雄的な事をしてないけど」
正直、ここに来てから俺の一番の疑問を彼女に聞く。俺が選ばれる理由がわからなかったから。彼女はこほんと咳払いを一つしてから、俺の目をまっすぐ見て口を開く。
「それはですね、こう、私が選べる魂の川が有ってですね、ここ2~3日ずーっと見てたんですけど、正直どれも似たようなのばっかりで、これならもうどれでも良いかなーと、こうえいやっとひっこ抜いたら新谷さんの魂だったわけでして」
「適当かああああああああああい」
余りにも余りな理由で、大声出したら、急に叫んだからか彼女はびくっとした後、申し訳なさそうに
「いや、あれですよ、その、こう、魂の輝きがこう、ほら、その、他よりちょっと……ちょっと私好みだったと言うかですね」
しどろもどろ説明してくれるけど用は、どれでもよかったんだな絶対。てか、この子アホだし、めんどくさがり屋だ。
「うう、私だって他の古い神様たちのように、英雄になれそうな人の魂とかが良かったんですけど、まだ選べないから仕方ないじゃないですかー」
「知らんがなそんなの。まあ、良いよ、マルケッタが偶々とはいえ俺を選んでくれたから死なずに?済んだんだし」
フォローしとこうそうしよう。どうせここまで来たら何も変わらん。
「ですよね、ですよね、私のお陰ですよね!!」
彼女がえっへんと胸はりつつ凄く嬉しそうにしてる……まあ、張れるほど胸はないが、おふ、拳が脇腹にドスっと刺さる。人の思考読めるってやっぱりずるい。
「さて、そんなわけですが、新しい世界に行くだけならわざわざ私の前なんかに呼び出しませんよね」
「そりゃ、そうだ。何かあるんだよな、こう能力とかチートとか。俺もついに異世界でこう無限の魔力とかでどばーーーっと世界を」
彼女が物凄く申し訳なさそうに横を見てる、てかこっち見てない、、、嫌な予感しかしない。
「御免なさい、、、その私が貴方に授けられる力だと、貴方自身がこうすごーく強くなるわけでは無くてですね」
は、今何て言った。俺が強くなれない?まって俺の異世界ライフはも終わりか???
「いや、私が今まで担当持てなかった理由と言いますか、その、私の能力すごーく不人気でして、、、」
「言え、早く言え、もったいぶらずに、早く言え!!!」
彼女の両肩をつかみ、ガクンガクン揺さぶる。
「言います、言います、だからガクガクしないでー、目が回りますー」
少し落ち着き、彼女がコホンと咳払いを一つする。
「私が貴方に授けられる力は紋章師と言います。貴方が好きな人や動物、物何でも良いです、紋章を授けた人の力が飛躍的に上がり、貴方と言葉を喋らなくても考えが通じたり一時的に力をブースとしたり色々できちゃいます。そしてそして、紋章を授けた人と貴方の関係値が上がれば上がるほど、紋章を与えた人と貴方の力が上がっちゃうすっごい能力なんですよ」
どやーっと彼女が凄く自慢げに説明してくれる。
「あー、召喚師、、違うなテイマーとかそんな感じだなそれ。別に弱くも無いし応用もききそうだけど」
「そうなんですけどねー。でもさっき言った通り、本人が強くなるわけじゃないので、紋章を誰かに与える前にモンスターに襲われて死んじゃったりですね……」
おーーーい怖い事言ってるよこの人
「あ、大丈夫です、そこはご安心ください!!私も初めて担当する方が何も成さないまま死んじゃうのは大変困るので、転生先は周りにモンスターが居ない場所選んどきましたから。……まあ、それで力使いきって、それ以外サポート一切無いわけですが」
「やっぱ駄目じゃねーかあああああああああああああああ」
で、改めて彼女に力を聞いたら以下の通りだった。この力は誰かの力に100を追加する能力ではなく、どんな人でも力を100にする能力らしい。分かりにくいけど、力が80の人に紋章を授けたら20プラスされて100。
逆に力が5の人に紋章を授けると95プラスされて100になる。用は、レベル低い人に与えたほうがお得なわけだ。良い意味では相手を選ばず好きな人を強く出来る半面、最初っから強い人に紋章を与えて凄く強い人に出来ない。
「なあ、関係値って言っても何をすると深まるんだそれ?」
「あ、それはですね。一番簡単なのは、貴方がお願いしてモンスターを倒したりしてもらえば良いだけです」
思ったより簡単だった。じゃあ、そこは普通に冒険してれば嫌でも強くなれるのか。
「ちなみに紋章授けた人が俺に攻撃して来たらどうなる?」
「もちろん、痛いです!!」
すっと右腕を上げて彼女の頭にげんこつを落す。
「痛いです!!!!」
「そりゃ痛く殴ったんだから。あのな、もっとこう有るだろ色々と」
「うー、殴らなくてもいいじゃないですかー。取り合えず紋章師が死んじゃえば授けた力は無くなっちゃいます。それに、紋章は死ぬまで消す事が出来ません。あと、紋章を授けられた人は他の方からの加護をえられなくなります。例えば、私みたいな女神からの加護とか神竜からの加護やもちろん他の紋章師からの紋章などなど、直也さん以外からの加護はえられなくなります。一時的な魔法でのブーストなどは特に問題無いのでそこはご安心下さい!!」
「逆に言うとそれだけなんだな。ちょっとセーフティーが少なくて怖いと言うか、慎重に授けないといけないなそれ」
「ですねー、この力が人気ない理由の一つだったりします」
その後も彼女がちょっとしょげながらも説明してくれる。とりあえず、紋章を授けられるのは最初は一人だけで、その人と関係値が強くなっていき有る程度まで行くと、新たにまた一人紋章を授けられて、それの繰り返し。
ただ、そうぽんぽん増えるようなもんでもないらしいし、一度授けると取り消せないから、紋章を与える際は慎重にとの事だ。ちなみに、これが人気無いなら、ほかにどんなのが有るのかと聞いたら、無尽蔵の魔力や、超人的な体だったり敵の能力を吸収できるやつなどなど、一度は聞いた事あるような物ばっかだった。やっぱ俺って運が悪いのかも。
「さて、そんなわけですが新谷さん、私女神マルケッタの願いにより新しい世界へ紋章師として行ってくださいますか?」
此処まで来て、答えは分かってるようなものだが、本人の意思確認は大事だよな……俺の考え分かってるくせに、なんか真面目だよなこいつ。
俺は彼女の目を見て、此処に来て一番真面目な顔で恭しく応える。それに応えてか、彼女の後光もより強く光り、辺りに荘厳な雰囲気が漂う。
「はい、俺新谷直哉は女神マルケッタの願いにより、紋章師として新しい世界で……あれ、新しい世界で結局何すればいいんだ?」
光が消えて、彼女もぶふっと口から唾拭いて、うなだれる。
「もーーー良い所なのに、雰囲気ぶち壊しですよーーー。正直私たちのお願いで異世界に行ってもらって強くなって下さるだけで良いんですよ。それがより尊い女神になる為に必要なんです。」
「あー、悪い悪い、なんか最初にそれっぽい事言ってたもんな。て事は他の神様も俺の行く世界に干渉してたりするのか?」
「どうでしょうねー、同じ時代で干渉するとも限らないし、他の異世界も有るし、有ったとしてもそう多くは居ないと思いますよ。」
「そっか、取り合えず楽しんでくればいいのかな?」
「ええ、せっかく繋ぎとめた新しい命です是非楽しんで来て下さい。そしてあわよくば強くなったり世界に対して良い事をして、私がより尊い存在になれるよう頑張ってください♪」
そう言うと彼女が手を自分の足元から頭の上まで持っていき、それに合わせて白く大きな光の穴が出来あがっていく。
「ここを通れば新しい世界です、準備は良いですか?」
「おう、って言っても何も準備する物ないけどな」
「確かにそうですね。では行ってらっしゃい、良い旅を」
「行ってきます」
そう言って、俺は彼女に見守られながら光の穴に入って行く。
「あ、そうそう、新しい世界の体ですけどちょっと力が足りなかったせいで、小さくなってますから気をつけて下さいねー」
「ふぁ!!!!!!」
俺の体が半分以上穴に入って、もう戻れない感じの時に、聞きづて無らない事を言って、と思った瞬間、目の前が真っ白になり、そこで俺の意識は途切れた。
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