010_初戦闘はなます切り
冬の聖戦で死んだので、セシリアママの衣装で書き納めとなります。大晦日更新は無理だった\(^o^)/
今年もお疲れさまでした。沢山のかたに見ていただけて本当に幸せでした。来年も宜しくお願い致します。
「なんだか、凄い事になったな」
自分とセシリアの前には、これからの旅で使う道具一式が詰まった登山でもするのかと言うぐらい大きな鞄と、それを一回り小さくした物が、ドンと鎮座していた。これ大きい方は俺が担ぐから良いとして。セシリアさん大丈夫かなこれ?
「あ、荷物はこれに載せて行きましょうか」
セシリアが倉庫から子供が寝れるぐらいの木の板に、大きな二つの車輪と引く為のとってが付いた台車をゴロゴロと引っ張ってきた。
「これなら、俺でも荷物全部乗っけて行けそうです。有難うございます」
「あら、私が引っ張るものだと思っていたんですが。疲れたら言って下さいね」
「いえいえ、これぐらいなら任せて下さい。」
そう言って俺は台車に荷物を積んで、縄で縛っていく。しかし、あれだなこれをセシリアの後ろで引いて後ろを付いて行くと、本当に大魔法使いとそれの従者にしか見えない。
「じゃあ、出発する前にお爺ちゃんにご挨拶してきますね」
「ですね、当分ここには戻らないでしょうし」
2人で家の裏へ行くと、少しだけ土が盛られた場所に1メートルぐらいの木の棒で作られた墓が有った。
「お爺ちゃん。私は直哉さんと一緒に旅へ出ます。そして、父と母がどうなったかを確かめてきます。私たちの旅が無事に行くように見守って下さい」
「セシリアのお爺様。セシリアさんは俺が頑張って守りますので、どうかよろしくお願いいたします」
2人が目を閉じ手を合わせて挨拶を済ませる。そこからさっきの荷物の所に戻る時、少しだけセシリアさんの頬が濡れてるような気がした。
「確認ですが。最初は街道を目指してそこで1泊。次の日には街へ向かう感じですかね」
「はい、そうなりますね。街に着いたら冒険者ギルドで取り合えず登録して、旅費を稼ぐ手段を確保しましょう」
「冒険者ギルドやっぱりこの世界にも有るんですね。俺が冒険者、なんだかドキドキするな」
「ふふ、直哉さんなら素敵な冒険者になれますよ。では、結界と外の境界まで少し歩くので、行きましょうか」
セシリアの先導で、俺がやってきた池とは反対方向の森をずんずんと進んでいく。まだ日は高く、森の中は少し暖かく木漏れ日が差し込んできていて本当に綺麗な所だ。たまに鳥の鳴き声や、美味しい美味しいホワイトラビットが遠くの方でぴょこぴょこしてたり、ここでセシリアさんとずーっと生活する人生も悪く無いなと思いつつ、駄目かマルケッタが泣くなきっと。感覚的に20分ぐらいだろうか、森の奥の方が薄い青色でぼんやりと光っていた。
「直哉さん見えてきました。あれがガードクリスタルの結界の境目です」
「はっきりと見えるんですね」
目の前まで来るとよりハッキリわかるがが、薄く青い膜がドーム状に展開していた。これに生き物が触れると、方向感覚がおかしくなり回れ右するわけだ。投石とかジャンプして落下してくるモンスターには弱そうだけど、それ以外には困る事が無さそうだなこれ。
「この森は、巨大なトロルが徘徊していてこの結界と相性が良いんですよ。何度か外に出ようと思ったんですが、結界の側を通ったトロルを見ると、どうしてもあれに勝てるだけの方法が思いつかなくて。もう100年ぐらい方法思いつかなかったら、一か八かで森の横断に挑もうと思ってたのですが」
頬に手を当てながら困った顔をしてるけど、多分だけどそのトロルはもう彼女の敵ですら無い気がするのは黙っておこう。
「さて、結界の外へ行く前に敵を探してほしいんですが、出来ますか?」
「私のはホワイトラビットとかの小さいのぐらいしか……あ」
そう、彼女は今や大家庭魔法使いだ。改造できるならきっと本当のモンスターだって調べられるはず。彼女はショルダーホルスターから1本の杖を引き抜き、片手を当てて目を閉じて少し念じる。ゆっくりと目を開け俺を見て少し微笑んだかと思うと、杖を結界の外に向けた。
「出力を上げて、感知出来る範囲も上げたのでこれで大丈夫かと。いきます、サーチ……きゃあああああ」
セシリアがサーチを唱た直後急に叫んで地面に座り込む。
「大丈夫ですか!!どうしました、セシリアさん」
頭が痛いのか、手で頭を押さえながらセシリアが立ち上がる。
「すみません、今までみたいにうっすらと方向が分かるとかではなく、急にはっきりとした大量の気配が頭の中に入ってきて、少しパニックになってしまいました。多分虫とか小鳥の気配まで取ってきたみたいで」
「あー、なるほど。魔法が凄くたってそれを使う人間のキャパは超えられないって話か」
「そうですね、正直今のままでは役に立たないので方向を私の前方だけに絞って、小さい反応は切り捨ててしまいます」
彼女がさっきと同じように、杖に手を当ててサーチを改造して使ったかと思うと、今度は叫ぶ事も無く小声でよしって言ってる。可愛い。
「今度は私でも耐えられそうです。必要な気配もはっきりとわかります。とりあえず、このまままっすぐ行くのは止めましょう。トロルが多数集まってる場所が有るので避けた方が無難です。少し横にそれますが、1匹だけ倒せば安全に進めそうなルートが有るのでそちらへ」
「その魔法凄いですよ、さすが大家庭魔法使いセシリアさんだ」
「もう、何馬鹿な事を言ってるんですか。ほら、さっさと行きますよ」
彼女が嬉しそうに結界を抜けて行く。褒められたのはまんざらでも無いらしい。それから、彼女が先頭を歩いて、小休憩2回程したぐらいに急に彼女が立ち止ったかと思うと、腰をかがめて静かに前の方に歩いて行く。木の陰からその先を少し見ると、戻ってきて小声で話しかけてくる
「直哉さん、居ました。さっき言っていたトロルがこの先に立っています。掃除してしまってよろしいでしょうか?」
掃除って、家庭魔法だし正しいのか?
「ええどれだけ戦えるかも見ておきたいので、トロルの掃除お願いします。でも、無理はしないでくださいね」
「ええ、大丈夫です。何が有っても直哉さんは私が守りますから」
うーん、微妙にかみ合ってないけど、本人がやる気なら良いか。セシリアについて行き、さっき様子をうかがっていた木のそばまで来ると、彼女が杖を手に持ち少しだけ緊張している。それもそのはず目の前の少し開けた場所には身長2メートル程で、獣の皮で作った腰巻に俺と同じサイズ位の木製の棍棒を持った、緑色の醜い化け物が俺達とは逆方向を向いて立っていた。え、あれ倒すの?めちゃくちゃ強そうなんだけど。
「では行きます、ショートシャワー!!」
木の陰から体を出したセシリアさんが、杖からショートシャワーを唱えた瞬間、目の前のオークに放射状に放たれた細い水流が無数に突き刺さる。
「グォアアアアアアアアアアア」
流石トロル、見た目にたがわぬタフさだ。体中に爪楊枝ぐらいの太さの高圧水流の槍が何十本も突き刺さっているのに、まだ生きていてこちらを向こうとしてる。
「終わりです!!」
そう言って、セシリアがショートシャワーを放出しながら腕を真上に振りぬくと、トロルの体がなます切りにされ、その場に肉片として崩れ落ちる。
「直哉さん終わりました。その、呆気ないですねこれ」
「いや、アレだけの事されたら普通の生物はこうなりますって……」
「では、コアを採取してきますので少し待っていて下さいね」
セシリアがトロルだった物のそばまで行き、杖を肉塊に向けてエアハンドと唱えると、杖の先に見えない大きな手の様な物が出来たのか、それを使い肉の山を少しづつどかしていく。やがてお目当ての物が有ったのか、拳ほどの大きさが有る赤く細長い結晶を見つけたかと思うと、それをエアハンドで摘まみ取り、逆の手に持った杖から普通のショートシャワーを出して綺麗に汚れを洗い流し、セシリアが嬉しそうに結晶を持って来てくれた。
「直哉さんこれがモンスターのコアです。モンスターはこのコアを体の何処かに必ず持っていて、これを精製して魔力を抽出します。生成された魔力は隠れ里に有ったガードクリスタルの様な魔道機に入れて動力として使うので、冒険者ギルド等で買い取ってもらえますよ」
ガソリンみたいな物かそうしたら。いざとなったら路銀はモンスター倒して買い取ってもらうだけでもどうにかなりそうだな。
「ふふ、凄いですね。私が何度も夢見た光景が今こうやって現実になったんですね」
セシリアがジーンと感動しているが、トロルをなます切りにした結果、結構な血と臓物の匂いが辺りに漂ってる。これ、臭いにつられて何が来てもおかしくないな。
「セシリアさん急ぎましょう、臭いで何かがやってきてもおかしく無いですよこれ」
「そうですね、この先は街道に出るまで特に脅威は居ないので、少し急ぎましょう」
そこから急いで移動をした僕たちは、少し辺りが暗くなり始めた頃には、無事街道にたどり着いた。
「おおおお、セシリアさん街道ですよ!!街道!!本当に今日中に街道までつきましたよ」
目の前には馬車が2台余裕ですれ違えそうな、平坦だが土がむき出しで整備された道が地平線の先まで続いてた。
「ええ、地図の通りですね。これなら今日はここで野営して、明日は街に到着でしょうか。では、森を少し戻った所に有った開けた場所で野営しましょう」
「ですね、暗くなる前にテントを建ててしまいたいですし」
とりあえず、少し戻った開けた場所にテントを建てる。テントは、三角形で2人と荷物を入れてしまえば、ほぼほぼ隙間の無い程度の大きさで、これは何か色々と考える物が有るな。
「さて、直哉さん汗も沢山かいて汚れてしまったしお風呂入りましょうか」
は?何て言った。お風呂?このテントだけの森の中で?あれか、結界を出て戦闘やらなんやら終わって、興奮でセシリアさん少しおかしくなったか?
「もう、そんな頭おかしい人を見るような目で見ないで下さい。さっき色々魔法試してみて分かったんですけど、これなら作れるなと思ったんです」
彼女は長年の夢を叶えるべく、少し興奮した様子でどの木が良いかなーと言いながら物色を始めた……どうなるんだこれ。
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さて、ついに初戦闘が終わった2人ですが、うん、強い。
思った以上に家庭魔法が大暴れで書いてて楽しいですねw