世界の改変〜タカヒロ〜
「それで、俺は何をすればいい?」
消えたログアウトボタンには見向きもせず、タカヒロは何も無いはずの虚空へ話しかける。
『好きなようにすればいい。ここはお前のシナリオだ』
「俺の……シナリオ?どういうことだ」
『いずれ分かる時が来る』
「まあいいさ、俺の待ち望んだ世界なんだ、言われなくても好きにやってやる」
『いい心意気だ。では、ワタシは消えるとしよう。よい異世界生活を……』
そこまでいうと、その“存在”の気配は消えていった。
「ここまでがチュートリアル、プロローグってとこか……」
先ほどまでの“存在”が、必要な知識など一つも教えてくれなかったことを訝しみつつ、とりあえず進もうかと辺りを見回す。
「……っとこれは?」
タカヒロの目に留まったのは、1振りの両手剣だった。
「重っ!けど持てないこともないな……」
持っておいて損は無いだろう、と近くに落ちていた鞘も拾い、ベルトに固定する。
「さて、町でも探すか」
もう1度歩き出そうと辺りを見回した瞬間、“なにか”がタカヒロの目の前を通り過ぎた。
「なんだ?今なにか……ぐっ…!!」
今度は右肩に“なにか”が直撃する。
「まずいっ……!」
とっさに先ほど拾った剣を構える。
ギィィィ……ッ!
今度は、なにかが剣に当たったようで、黒板を引っ掻いたような音が響く。
「熊だと!?」
かろうじてタカヒロから見えた“なにか”の姿は熊のようだった。
「逃げないと……」
さすがに2mほどもある野生動物には勝てない、と本能で察し、逃げに回る……が、熊はそう簡単には逃がしてくれない。
「いい加減に……しろっ!!」
逃げても無駄だと悟り、逆ギレ気味に闇雲に振った剣が熊に当たる。
「キャウン!」
怪我を負ったらしい熊は、背を向け、走って逃げていった。
放心していると、頭の中にファンファーレが鳴り響く。
【実績〈初戦闘〉を解放しました。視界下部に地図が表示されるようになりました】
【実績〈初勝利〉を解放しました。称号〈流星の勇者〉を獲得しました】
【シークレットミッション〈敵対〉をクリアしました。敵エネミーの頭上に赤マーカーが表示されるようになりました】
「はは、は……ここまでがチュートリアルだったんだね、あの“存在”も性格が悪い」
そう呟くと、やっと始まった異世界生活の1歩目を踏み出した。