星降りの夜に〜タカヒロの場合〜
──それはじめじめとした土砂降りの夜だった。
突然だけど、俺は2次元が好きだ。好きで好きでたまらない。
現実がゴミだなんでいう気はない。
ただ、平和に凝り固まり、あまりにも狭いこの世界で必死に夢を探す“人生”ってやつが嫌で仕方がない。
アニメを、小説を、漫画を、2次元を見てみろよ。
彼女達はどこまでも広い世界で、必死に今を生きている。
“シナリオ”によって作られた彼女達は、自由な“人生”を謳歌している。
つまり俺はこう言いたいわけだ。
「現実はみんな死んでる」って
なあ、俺はどうすればいい?
いっそ死ねばいいのか?
違う、死んで楽になれるならとっくに死んでるさ。
こんな、意味の無い無限に続く問答を毎日繰り返して、自己嫌悪と2次元への渇望でいっぱいで。
そんな時、1通の手紙が俺の元へ届いた。
【あなたを本当の異世界へ!】
こんな巫山戯たタイトルから始まる、VRゲームの広告だった。
MMOではなく、従来のコンシューマーRPGにし、クオリティを極限まで上げることにより、まるで異世界に迷い込んだ気分になれる、らしい。
そして、驚いたのがその後だった。
なんと、このゲームを始める際は、会社の運営する施設に入所する必要があり、ゲームクリアまでは出られない状態になるようだ。
その代わり衣食住は全部会社側が負担してくれる、という破格な内容だった。
俺は迷わなかった。
次の日、俺は早速手紙の裏に書かれていた会社の施設へ行き、VRヘッドギアを被った。
現実の容姿そのままに設定し、ゲームへとログインする。名前はタカヒロだ。
そして、俺を出迎えたのは、テレビでも見たことのない、視界いっぱいの流星群だった。
そして、俺の視界から流星群とともにログアウトボタンが消えた。