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百人一首の選者に嫌われました。

2018/3/28投稿

 マロは、定家に嫌われている。

「知ってます? 藤原の定家さま、今80首ほどお選びになったんですって!」

「ええ知っているわ。なんでも、女性歌人もたくさん選ばれているんですって!」

 女房達が宮中で噂している。

 定家は、現在、小倉山の別荘で過去の名作のよりすぐりから、百首を選ぶという作業をしている。

 百人のうちの一人に選ばれるのは、『名誉』であり『栄誉』である。

 ただ、マロは、定家に嫌われており、いまだ『選ばれた』という報告はどこからもきてはいない。

 マロの作品も一応は、宮中での評価は悪くないのである。

 選ばれてもおかしくはない。しかし。ああ、あの時、定家の作ったあの歌をどうして素直にマロは褒めることができなかったのか!

 次々に選ばれた同僚の話を聞きながら、マロは涙で枕を濡らすのであった。


 百首が決まったという知らせが、宮中に広まった。

 結局、マロの歌は選ばれなかった。

 定家が、マロを嫌っているせいなのか。マロに才がなかったせいなのか。

 今となっては、聞く由もない。

  


 時は過ぎ。藤原定家の選んだ、新勅撰和歌集に詠み人のわからぬ歌がおさめられている。


 白露の織りいだす萩の下もみぢ衣にうつる秋は来にけり


 それが、百人一首に選ばれなかったマロのものなのかは、もはや誰も知らない。

 名も残らぬ歌人の和歌は、ひっそりと語り継がれている。

 


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