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わたし

怖い。

怖い。

怖いよ。

苦しい。

誰か助けて。


(誰もお前なんて助けない)


誰か助けてよ。


(気持ち悪い子ね。さっさとどこかへ行きなさい)


もうやめて。


(ほら泣けよ。弱虫)


やめて。やめて。やめて。やめて。




枕元の机の上にあった薬を2錠手にとって口の中に入れる。そのあと、コップにペットボトルから水を注いで薬と一緒に飲んだ。

少しすると心が落ち着く。


「いまだにこのざまじゃ、ここにいるのも当然か」


寝起きの朝にベッドで仰向けになりながら一人ごちる。


ここは特別児童養護施設「安らぎの園」。私はここに1年以上閉じ込められている。

この施設は精神に問題のある子どもを集めて治療をする目的で作られた場所らしい。

私は、学校でのいじめや親からの虐待のせいで、うつ病やらPTSDだのの診断を受ける羽目になった。

その後、リストカットやオーバードーズがやめられなくなって、食べ物は食べても吐くようになって強制入院。

そのまま、この施設に入れられた。その後、いまだに私はこの安らぎの牢獄から出ることができていない。


私自身心が壊れてる自覚はあるが、こんな場所にいたら誰だって心を病むと思うんだけどね。

いきなり叫び出したり、何もないところに話しかけていたり、やたらと他人に依存しようとしたり、部屋に引きこもって出てこなかったり。まず碌な人がいない。・・・私も含め。


「ねえ、そうでしょ?カエデ」


私の部屋の中に、徐々に女の子の形が現れる。


「自虐?そういうのは程々にした方がいいと思うよ。ヒカリちゃん」

「ちゃん付けはやめてよ」

「えー。かわいいのに」


この子はカエデ。私に取り付いている幽霊のようなものだ。この施設の中には、カエデのことが見える子もいる。

私は感覚が敏感なようで、普通の人には見えないものがいろいろ見えてしまったり、他の人が考えていることがなんとなく分かってしまったりした。その体質や理解のない人達のせいで今の私はぼろぼろになっているのだけど。


「昨日の子は可愛かったね」

「シュウ君か。そうだね、私好みの良い子」

「ふーん。そんなに良い顔してるヒカリちゃんは久しぶりにみたなー」


確かに少し頬が緩んでいた気がする


「カエデはね、そんなヒカリちゃんの方が好きだな」

「そう。ありがと。言っとくけど、シュウ君は私が見つけたんだからあげないよ」

「別に取らないけど、見るだけならいいでしょー。ということで、シュウ君のとこにいってくる」

「あっ、こら」


カエデは壁を超えて行ってしまった。シュウ君の部屋とは真逆の方向なんだけど。。。

まあ、いいか。


心が少し落ち着いているし、暇なので部屋の外に出てみることにする。


部屋を出てみる。


部屋の外は廊下になっている。一面白い廊下。

少し歩いてみる。


すると、男の子に出会う。この子は私の一個下。。

声をかけてみる。


「おはよう」


こちらを振り向いてくれて、手を振ってくれた。

おっとりした感じの印象の子。


この子は失声症で喋ることができない。

けど私は言葉がなくても大体言いたいことがわかるから、会話が成り立つ。そこそこ仲のいい友達の一人。名前はミキ君。


「今日もいい天気だね」

(そうだね。今日は体調大丈夫?)

「お薬飲んだから今は大丈夫だよ」

(無理しないでね)


心配そうに見つめてくる。かわいいな。


「うん。そうするよ。心配してくれてありがとね」


頭を撫でてあげる。気持ちよさそうに目を細める。子犬みたい。


昨日あったシュウ君について少し話すことにした。


「昨日、新しく来た男の子に会ったよ」

(どんな子なの?)

「優しい印象の子だったよ。ミキ君とは気が合いそう」

(へえ。友達になれるといいな。なんでその子はここに来たの?)

「飛び降り自殺しようとしたみたい。とても繊細すぎて生き辛そうだった」

(それってヒカリみたいだね)


確かにそう。私が昨日感じたことだ。


「ミキは人を見る目があるね」

(そう?ありがと)


ミキは私にとって良い理解者だ。

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