桃太郎(もうひとつの昔話15)
鬼ヶ島に上陸し、はや三年。
ヤミうち、フイうち、ダマシうちと……あらゆる卑怯な戦法をこころみましたが、鬼たちの抵抗は想像以上にはげしいものでした。
さらには……。
イヌ、サル、キジはまったくあてにならず、早く帰ろうとダダをこね出す始末。桃太郎はいまだ鬼ヶ城に近づくことさえままならないでいました。
このままでは鬼を降伏させるどころか、仲間割れのじり貧負けとなります。故郷に残した、おじいさんとおばあさんのことも気になります。
「しかたないか……」
こうなれば最後の手段と、桃太郎は和解に持ちこむことを決意しました。
「これを敵の親分に届けるんだ」
しぶる三匹の尻をひっぱたき、なんとか鬼ヶ城に和解状を届けさせます。
その和解状。
宝はひとつでよし、それで島を出ていくと、和解条件がしたためられていました。
数日後。
待っていた鬼からの返状が届き、返事は望みどおりの和解の承諾でありました。さすがの鬼たちも、桃太郎のあまりの汚いやり口にいいかげんうんざりしていたのでした。
船着き場の一室。
そこには桃太郎と鬼の親分が対座していました。
これより和解の協議が行われます。
「宝だが、寿命をのばす薬がほしい」
桃太郎は秘薬を要求しました。
自分を育ててくれた、おじいさんとおばあさんに長生きをしてもらうのてす。
「ちょうど八十歳まで生きられる薬ならある。それでよければ、すぐにでも渡せるが」
「ああ、じゅうぶんだ」
桃太郎はうなずいてみせました。
おじいさんは六十歳。八十歳までなら、あと二十年は生きられます。
二人の喜ぶ顔が目に浮かびました。
苦節三年。
桃太郎は生まれ故郷に帰りました。
「よう、ぶじに帰ったのう」
おばあさんが笑顔で出迎えてくれます。
ただ残念なことに、おじいさんはこのときすでになくなっていました。
「おばあさん、これを飲んでください」
桃太郎はさっそく、鬼に渡された秘薬を取り出しました。
「なんだい、それは?」
「鬼からぶんどった宝で、寿命がのびるという薬。これを飲んで、どうか長生きをしてください」
「なんのみやげよりもうれしいよ。オマエはなんて親孝行なんだろうね」
おばあさんは涙を流して喜んでくれました。
その姿を見て、
――この秘薬にしてよかったな。
桃太郎もうれし涙がこぼれてきました。
三日後。
おばあさんはポックリ死にました。
その日は、おばあさんの八十回目の誕生日。
おばあさんはおじいさんより二十歳上の、年上女房だったのです。