第7節 一人きり
一人きり。
暗闇の中。
俺はただひたすらに思考する。
ふとどこからか、耳元に声が届いたのが聞こえた。
「よう、兄弟。進捗はどう?」
「……お前か。まったくだな。そういうお前はどうなんだ?」
「こっちも全然駄目。尻尾さえつかめない。分かってたことだけどね。時間が経つのを待つしかないよ。ぼくらは時間は気にしないってのに、向こうの出方を待つしかないなんて滑稽だとおもわないかい?」
「ふん……分かりきっているならば、わざわざ俺に訊いてくるな」
「まぁそう怖いこと言いなさんなって。俺とお前の仲じゃあないか。いつもの自己嫌悪かい?」
そう。
時間は全ての人に平等である、とそう人間たちは言っている。
が、それは人にとって。
あるいは大半の神にとって平等であるだけだ。
例外はいつも存在する。
はっきり言っておくが時間は有限じゃない、無限だ。
他の者に全く理解されないことも分かっている。
だが俺が証言し、また『俺』が賛同することでそれは真実になる。
「自己嫌悪……そうかもしれないな」
「珍しいなぁ。きみがあっさりと認めるなんて」
「俺はいつでも寛大だ。それに、俺は『俺』の言うことには耳を傾ける必要がある」
「ははは、きみらしいなぁ」
その声の主は笑う。
「なぜ……そんなに他人行儀なんだ。」
「それはきみが嫌いだからさ。しょうがないじゃん。でもきみの言う通り、ぼくはきみのことを無視することはできない。だからこうやってきみの意見を訊きに来たんじゃないか」
そう俺は『俺』が嫌いだ。
そして『俺』も俺のことが嫌いで。
同族嫌悪、というやつだ。
一人きり。
暗闇の中。
俺は再び思考を続ける。