表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過ちを犯した神様は失格ですか?  作者: 藍川紅介
第1章 終わりと始まり
13/14

第12節 不良少年と狼少女

 学園から徒歩二十分、市街からそれほど遠く離れてねぇここ天津(あまつ)(がわ)の河川敷にオレはまたやって来ていた。


 ここには数えられェぐらいたくさん来たよな。


 穏やかな川を眺めてるとよォ、なんか心が洗われるっつーか。


 学園での朝の出来事を思い出す。


 いま思い返してみてもこう、胸のあたりがムカムカすんだが。


 オレァ昔から気に入らねぇことがあると黙ってられねぇんだ。こういう性質(タチ)なんだよ。


 それが褒められたことじゃねーことくらいオレにも分かってる。


 だが、馴染みの人界を滅茶苦茶にしやがったあいつの罪は重い。


 オレに対しての擁護ぐらいあっても良かったんじゃねェか?


 やっぱり根本的にオレは学園生活とやらに向いてねェ。


 なんで我慢しながらあんなところに通わなきゃなんねーんだ。


 …………。


 免許取り戻すためだろーが!!!


 オレに免許が戻ってさえいりゃあんなやつ……。


 オレがブロンズを取り返していれば。


 オレがあんなその場凌ぎの武器じゃねぇ本当の神具を使ってれば。


 あんな虫も殺せそうにねェような貧弱な野郎の鼻っ面へし折ってたのによォ。


「あーこのクソったれが!!」


 手元に落ちていた手ごろな小石を拾い天津川に投げると、水面の上を三回ほど跳ねて沈んでいった。


「スサァ~、ぼくおなかすいたよ~ペコペコだよぉ~。何か食べに行こうよ~」


 背後から声が聞こえる。馴染み深ェ声。


 オレと同時に学園に転入してきた雌の狼。名前をフェンリル。


 オレがもう一度やり直そうと決意した、そのきっかけになったのがコイツだ。


 コイツがいなきゃ神としてオレァ死んでたかもしれねぇんだから、まぁ腐れ縁ってやつだな。


 おっと、過ぎたことはもうあんまり言わねェ主義でな。


 過去には生きねェのが(おとこ)ってもんだろ?


「あぁ? そのへんの草でも食ってろよ」

「……でもスサだってさっきおなか鳴ってたよ? すいてるんじゃないの?」

「……」


 そういえば朝起きてから何も食ってねェ。


 いくら神でも腹が減っちゃあ戦もできねェからな。


「学校には戻らないの?」

「戻らねェ」

「学校の食堂ならタダだよ?」

「……ぜっってえ戻らねェ!」

「ふーん……」


 前言撤回。今日はもう戦はしねェ。空腹のまま耐えきってやる。


 振り向くとフェンリルはその小せェ足を折りたたんでつまらなそーに体育座りをしていた。


「なんでオメーまでついてきたんだよフェン。オメーは残れば良かったじゃねェかよ」

「スサが出ていった教室なんてぼくには価値がないから」


 オレとコイツは腐れ縁だ。それは揺るがねェ。


 フェンリルのそのセリフを期待してたオレが心のどっかにいたんだと思う。


 周囲から煙たがれる生き方をして歩いてきたオレにとっては心の拠り所になっちまってる。


 オレにしてもそうだ。フェンリルのいねえ教室なんざ価値がねェ。


 ぜってえ言わねェけどな。


「スサ、ほんとに学校サボるの?」

「何度も言わせんな。オレは戻らねェ」

「でも出席しないと卒業できないよ?」

「ぐっ……」


 痛いとこをついてくるフェンリルだった。てーか、コイツは時々オレで遊んでるような節があるぞ。


 それでも出会った頃に比べればほんとにフェンリルはマシな性格になってきてはいる、とオレは考察している。


「スサ、いっしょに卒業しようね……」

「あたりめーだ。こんな檻みてェなとこ早いとこでっぞ」

「……絶対いっしょにだからね?」


 フェンリルの顔が少しだけ俯く。


 学園に来てから二十年余り、オレもフェンリルも卒業すっために努力はしてきたはずだ。


 だが、何が足りないっていうんだよ?


 オレが卒業できねェ理由はいくらでも挙げることはできる。札付きのワルだからな。


 けど、フェンリルは違ェはずだ。オレがいつも隣にいるからかァ?


 いや、卒業の基準に人間関係なんてのは含まれねェはずだ。


 ただひたすら有り余る時間を使って考えても結論は出なかった。


「心配すんなフェン」


 うずくまるフェンリルのそばに寄っていき、その絹のような銀髪を優しく撫でる。


「卒業するときは二人いっしょだ」


 ガラにもないセリフを吐いてるなとは思った。


 だがコイツは、コイツだけは大切にしなきゃなんねェんだ。


「ほんとに……?」


 顔を上げたフェンリルはうっすらと涙を浮かべている。そんな顔すんなよ。


 お前だけは一生守ってやる。


「あァ、本当だ。フェンはオレの唯一無二の舎弟だからな。そうだろ?」


 オレが滅多に見せることがねェ最大限の笑顔を向けると、


「へへっ、ほんと……スサには敵わないなぁ」


 と、泣いてるのか笑ってるのか分からねェ顔でフェンリルは答える。


 オレにはオメーの方が敵わねェよ。


「明日からまた学校に行こうね?」

「あァ。分かったよ。しかたねーな」

「約束だよ?」

「おう、約束だ」


この二人に関してはまた番外編を書くことがあるかも……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ