貴方の前では言えないけれど
投稿二作目ですが、短編としては一作目です。
よろしくお願いします。
貴方は誰の目から見ても、人気者だった。
私には幼馴染みがいる。
クラスのリーダーみたいな存在の、自慢の幼馴染み。
最近はもう、居る立場が違いすぎて、話せなくなっちゃったけど、貴方の輝くのを見れていたからそれでよかった。
そんなある日の事だった。
幼馴染みが、周りから一斉に虐められるようになったのは。
きっかけは些細なことだったという。
待ち合わせの時間に遅れたとか遅れないとか、そんな事。
たったそれだけのことで大喧嘩した貴方と貴方の友達。
貴方は次の日にはクラスの中で孤立していた。
そして貴方は変わっていった。
明るい性格は、暗い性格に。
物怖じしない性格は、極度の人間不振に。
でも貴方は、昔から一緒に居た、幼馴染みの私だけは信じてくれた。
だから決めたんだ。
私は貴方を守り抜こう、って。
それからの私の変化は著しかった。
明るい性格になって、誰からも好かれる人になった。
裏から手を回して、様々な噂を流して。
貴方のことを虐める奴らの弱味を握って。
我ながらよく頑張ったと思う。
でもそんな苦労を私は貴方に決して教えない。
貴方はきっと心配する、それも理由の一つだけど。
一番はなにより、私が貴方の中で、
『絶対に裏切らない、可愛くて素直な幼馴染み』
で居たかったから、それだけ。
だから
貴方の前では言えないけれど。
貴方を傷つけるものなど消えてしまえばいい。
例え消えなくても、殺してしまえばいい。
ただそれだけ、簡単な事だ。
絶対に貴方には伝わらないように。
貴方が二度と傷つかないように。
私は知っている。
貴方が昔から完全に変わってしまったなんて事、無いということを。
だってほら、今だって。
もう二度と話せないであろう彼らの顔を見て、貴方は悲しそうにしている。
でもね、大丈夫だよ。
私が貴方を守るから。
でも、可笑しいな。
こんなに君と話しているのに。
こんなに君は笑顔なのに。
こんなに私は幸せなのに。
感じるこの、私と貴方の気持ちが離れていってしまうような感覚はなんだろう。
まぁ、いいや。
どうせ考えたって分かんないだろうし。
とにかくね、大丈夫、貴方は心配しないで。
もし貴方の知っている人が居なくなっても。
もしこの世界に、私と貴方の誰もが居なくなったとしても。
ずっと
永遠に
永久に
貴方の側にいてあげるからね。
ありがとうございました。