7-11
もはや聞き慣れたこの異常音……クラスの全員が振り向いたその先。教室の後ろの扉から入ってきたのは、そう。このクラスの実質的現・〝支配者〟。完全に元・お嬢さま状態になっている結の姿だった。
ゆ…お嬢さまは当然、入ってくるなりこの悲惨な状況に気がつき、「これは……何?」と声を漏らし、教室の前――あの、〝二人の転校生〟の方を見た。
すると、なぜか瞬間――「えっ?」とお嬢さまは、〝驚きの表情〟を浮かべた。
何だ? 全員がそう思ったことだろう。実際、結と一番付き合いの長い俺ですらが、その表情の意味が分からなかったのだ。
……何で、お嬢さまは驚いているんだ? いや、この状況、驚くのは普通のことだが、今、お嬢さまは確実に、〝あの二人のことを見てから〟驚いていた……ということはもしかして、お嬢さまはあの二人のことをまさか、〝知っている〟のだろうか?
――だが、その疑問の答えは、予想外の形となってすぐに解かれることとなった。
ドサッ――転校生の一方。明ちゃんは持っていた高利の亡骸を投げ捨てたかと思うと、次に愛ちゃんに視線を送る。
――それを確認した愛ちゃんは、仕込み杖に付いた血を振り払い、背中の鞘に納刀すると同時に、こくん、と頷いた。それから、二人はまるで水泳のシンクロ選手並みに息を合わせて、お嬢さまの方へと向かって歩き出す……その通り道にいた生徒たちは、急いで自分たちの机をズラし、二人の通り道を広げた。
数秒後……当然、と言っていいだろう。二人はお嬢さまの眼前に立ち、必然的に三人は見つめ合う形となった。
……お、おいおいおい! 何だよ!? あの二人……まさか、このままお嬢さまと〝死合い〟でもやろうってのか!!?
この、ピリピリ、と張りつめた空気……嫌でもそう思ってしまう! ――しかし、そんな俺の考えとはまるで違い、二人がとった行動とは――なんと、
〝跪く〟だった。それも、膝と片手をしっかりと床に付けて。
……正直、意味が分からなかった。しかしながらその光景はまるで、姫を前に忠誠を誓う、〝騎士〟たちのようにさえ思えた。
――だが、その例えはほとんど間違ってはいなかった。
なぜなら、それは次の彼女たち自身が言った言葉が証明していたからだ。
その、言葉とは――
「「――〝結お嬢さま〟。〝白乃宮メイド隊〟、ただ今参上いたしました」」
……え? はくのみや……???
「〝白乃宮メイド隊〟!!???」




