7-8
……ふっ、最高だな……まさに選り取り見取りじゃあないか。
……おっと。そうこう考えている間にも二人は黒板に自分たちの名前を書き終わっていた。
それから、すぐに自己紹介が始まる。
「……御守 愛と申します。不束者ではございますが、これからお傍にいさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
ニコ、と小さく微笑んだ彼女に、おおっ、と再び歓声が上がる。
随分と丁寧なあいさつだ、ということもあるが、それ以上に、期待を裏切らない、ほんのり幼さを残した、澄んだ高い声だった。それに対して皆どよめいたのであろう。
……ところで、今、愛ちゃん……〝俺の方を向いて〟言わなかったか? もしかして、今のは俺に向かって……俺〝だけ〟のために微笑んでくれたんじゃ――うおっと! いや、何でもない! 今のは忘れてくれ! 俺は〝結一択〟なんだ! だから如何なる美少女がやってこようとも、俺は妄想なんかし……しないんだからねっ!
……えー、コホン。気を取り直して次は、当然、
「御守 明で~す☆ 愛同様、これからお傍にいさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたしますっ!」
おおっ! と再び。――これまた期待を裏切らない。パー、と花咲くその満面の笑顔。そして名前とおり元気で明るいその声は、一度聞いただけでもかなりの親しみを覚え、すぐにでも仲良くなれそうな、そんな雰囲気をかもし出していた。
……ところで、今――いや、何でもない。本当に何でもないんだ。気にしないでくれ……。
そんな歓声の的。二人は右脚を一歩引き、スカートのすそをほんの少しだけ持ち上げ、今一度礼をする。その行為に、教室中の野郎共の熱は遂にオーバーヒートを迎えてしまった。
止むことのない歓声…雄叫び、さらには愛明コール……あ、熱い。いや、暑苦しい……。周りにいる女子なんかもう、そんな野郎共から逃れたいのか、呆れきった顔でできるだけ机の端によってそいつらを避けていた。……ちなみに、野郎どもに挟まれている女子は……かわいそうだ。机に突っ伏してしまっている。
――さすがにオーバーヒートしすぎだろう。などと思ったが、実際のところ、俺も妄想を我慢するので精いっぱいだ。オーバーヒートは仕方がないことなのかもしれない。
――と、そんなことを思っていた、ちょうどその時だった。
〝ヤツ〟が、遂に自我崩壊した。




