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7-6




 ガララ――「……ん?」

 ――教室に着くと、全員の注意が俺に……というか、〝教室に人が入ってきた〟ということ自体に、全員が注目した。

 と、しかし瞬間。入ってきたのが俺だと分かり、「はー」だの、「ふー」だの、全員が好き勝手にため息をつき始める。

 ……なるほど、もうすでにみんな知っているわけか。

 そう納得して、情報の発信源であろうクソメガネの方を見ると、クイクイ、と親指で俺の席の方を指差してしていた。

 ……さっさと座れ、ということだろう。仕方なく、というわけではないが、俺は黙ってそれに従った。

 ・

 ・

 ・

 「…………」

 チッチッチッ……と時計の音だけが教室に鳴り響く。

 俺がきてからもうすでに何分か経ったが、全員、まるでテストでも受けているかのように静かに、一言もしゃべらなかった。

 ……何だ? この空気?

 その異様さに思わず(つば)を飲み込んでしまう――と、その音までもが全員に聞こえてしまいそうだ。

 おいおい、たかだか転校生がくるってだけだろ? 何でみんなこんなに真剣なんだ?

 気になって、そっと、バレないように周りを見回してみると……俺は〝三つ〟のことに気がついた。

 一つ、男子の目が真剣(マジ)であること。……おそらく、あわよくばその美少女である転校生たち、またはどちらか一方と〝オトモダチ〟になりたい……そう考えているのだろう。その証拠に、すでに彼女持ちのゲス野郎共の目はわりと普通だ。

 二つ、女子の目が、世紀末の荒野のように(すさ)んでいること。……うん。まぁ、気持ちは男の俺にも分かる。でもお前ら、転校生イジメんなよ?

 三つ、ゆ…お嬢さまがまだ帰ってきていないこと。たぶん、俺のことを待っていてご飯を食べるのが遅くなり、今頃一生懸命食べている頃なのだろう。結は食べるのが遅いからな。授業に間に合えばいいけど……。


 ガラッ!


 ――とそんなことを考えていた、次の瞬間だった。

 張りつめた空気を切り裂くように、勢いよく教室の扉が開いたのだ。

 ――今は授業開始の五分前。このクラスでまだ教室に戻ってきていない生徒はお嬢さまだけだ。しかしながら、お嬢さまが扉を開ける時の効果音は、ガ、ドン! である。これは明らかに違う。したがって、ここから推測するに、この扉を開けた効果音の主は――

 「――こほん。今日は皆さんに大事なお話しがあります。心して聞くように!」

 やっぱり! ――扉を開けたのは、我らが一年C組担任兼数学教師・小田 聡美先生だった。





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