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ガララ――「……ん?」
――教室に着くと、全員の注意が俺に……というか、〝教室に人が入ってきた〟ということ自体に、全員が注目した。
と、しかし瞬間。入ってきたのが俺だと分かり、「はー」だの、「ふー」だの、全員が好き勝手にため息をつき始める。
……なるほど、もうすでにみんな知っているわけか。
そう納得して、情報の発信源であろうクソメガネの方を見ると、クイクイ、と親指で俺の席の方を指差してしていた。
……さっさと座れ、ということだろう。仕方なく、というわけではないが、俺は黙ってそれに従った。
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「…………」
チッチッチッ……と時計の音だけが教室に鳴り響く。
俺がきてからもうすでに何分か経ったが、全員、まるでテストでも受けているかのように静かに、一言もしゃべらなかった。
……何だ? この空気?
その異様さに思わず唾を飲み込んでしまう――と、その音までもが全員に聞こえてしまいそうだ。
おいおい、たかだか転校生がくるってだけだろ? 何でみんなこんなに真剣なんだ?
気になって、そっと、バレないように周りを見回してみると……俺は〝三つ〟のことに気がついた。
一つ、男子の目が真剣であること。……おそらく、あわよくばその美少女である転校生たち、またはどちらか一方と〝オトモダチ〟になりたい……そう考えているのだろう。その証拠に、すでに彼女持ちのゲス野郎共の目はわりと普通だ。
二つ、女子の目が、世紀末の荒野のように荒んでいること。……うん。まぁ、気持ちは男の俺にも分かる。でもお前ら、転校生イジメんなよ?
三つ、ゆ…お嬢さまがまだ帰ってきていないこと。たぶん、俺のことを待っていてご飯を食べるのが遅くなり、今頃一生懸命食べている頃なのだろう。結は食べるのが遅いからな。授業に間に合えばいいけど……。
ガラッ!
――とそんなことを考えていた、次の瞬間だった。
張りつめた空気を切り裂くように、勢いよく教室の扉が開いたのだ。
――今は授業開始の五分前。このクラスでまだ教室に戻ってきていない生徒はお嬢さまだけだ。しかしながら、お嬢さまが扉を開ける時の効果音は、ガ、ドン! である。これは明らかに違う。したがって、ここから推測するに、この扉を開けた効果音の主は――
「――こほん。今日は皆さんに大事なお話しがあります。心して聞くように!」
やっぱり! ――扉を開けたのは、我らが一年C組担任兼数学教師・小田 聡美先生だった。




