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「は? 〝髪〟???」
「そう、〝髪〟だ――と言っても、べつにお嬢さまみたいに天然色っていうわけじゃあない。二人とも染めてんだよ。〝青〟と〝緑〟って具合にな。すげー目立ってたぞ?」
「お……おい、ちょっと待て。それって……まさか、外人さんか?」
いやいや、日本人だよ。
高利は一言おいてから、手に持っていたメモ帳に視線を落とした。
「まぁ? 二人ともお嬢さまほどではないにしろ、外人さん並みにかなりのナイスバデーだったけどな? ちなみに名前も調べたんだけど……えーと……俺が見た第一印象ではあるんだが、髪が青くて、大人しそうな娘の方の名前が、〝あい〟ちゃん。そんで、緑色の髪で、けっこう明るそうな感じの娘の名前が、〝めい〟ちゃん。――二人とも名字は〝御守〟になってるから、たぶん〝双子〟ってことになるんだろーな? もっとも、見た目は全然違うから一卵性ではないんだろうけど……って、どした? そんな顔して?」
「――え? あ……」
――と、高利に言われて初めて気がついた。
高利が言った、その二人の〝名前〟……それを聞いてから、なぜか俺の心の中では、それに対して〝疑問〟……いや、それ以上に、なぜかそれを〝違う〟とはっきりと否定するような感情が湧いてきていたのだ。
「……な、なぁ、高?」
思わず、俺は聞いていた。
「お前今……〝御守〟……って言ったよな? それで、二人の名前を〝あい〟と〝めい〟だって? ……それってさ、もしかしてその二人の名前、〝間違って〟たりしないか? 例えば……そう。お前があいだって言ってるその娘。人を愛するとかの愛って書いて、〝まな〟。んで、もう一人がそのまんま明るいって書いて、〝さや〟。……って、読んだりしないか?」
「は? 〝まな〟? 〝さや〟? 何言ってんだお前……って、ああっ!?」
突然高利は声を上げた。
そして、
「す、すまん亮! この俺としたことが見落としてた! お前の言うとおりだよ。ふりがなちゃんと振ってあった! 〝まな〟と〝さや〟! それで間違いねーよ!」
「やっぱり……」
――ん? あれ? 俺、今〝やっぱり〟って……何で、〝やっぱり〟なんだ?
「……ところで亮? 何でお前、そんなこと知ってんだよ? まだ俺以外にこのことを知ってるやつなんかいないはず……だよな???」
と、必然的に高利にもそう聞かれたが、答えた俺自身にも理由が分からない、という奇妙なこの状況……ウソをつく、というわけではないのだが、俺はただ、
「その……なんとなく???」
そう、答えることしかできなかった……。
無論、もう一度言うが、答えている本人が首を傾げながらの回答だ。高利はそれを聞いて、俺よりも首をさらに傾げてしまう結果となった。




