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#7,二人の転校生。 7-1




 ――ところで、ふと、思い出したんだが……。


 カツカツ、と、我らが担任であり数学の教師でもある聡美先生が黒板に書くチョークの音だけが鳴り響く教室内。

 いつもどおり、絶賛居眠り体勢で机に突っ伏していた俺の脳に、突然そのことがフィードバックされてきた。

 ……細かな説明はあえて省こう。そして単刀直入に言うならば、そう、それはあの時……結が屋上から飛び降りたあの日、飛び降りる瞬間に言ったあの一言。


 『――〝大好き〟だよ』


 ――だ。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……なぁ、みんな? これって、いったいどういう意味だと思う?

 ――あれはただ単に、〝家族〟として俺に言った言葉なのだろうか?

 ――いいや、それとも、あれは本当の意味での……その……こ、こくは…………。

 ……。

 ガンッ! ……俺は一度、机に額を打ち付けた。

 当然、それはこの静かな教室内。問答無用で響き渡り、全員の注意を俺に引きつけることになってしまったが……今の俺にそんなことをいちいち気にしている(ひま)はなかった。

 落ちつけ! と俺は心の中で、妄想のビッグバンを起こそうとしている俺の脳に直接語りかけ、それを何とか静止させた。

 ……さて、落ちついたところでもう一度考えてみよう。……あの言葉はいったい、どういう意味合いとして俺に言った言葉なのだろうか?

 ――推測するための参考としては、現在の結の様子ではあるが……これは正直に良かった、と言っておこう。なぜならあの、〝最初の会話〟の後、少しずつではあったものの結は確実に元気を取り戻し、二週間ほど経った今ではむしろ以前よりも明るくなったようにさえ感じ取れたからだ。……まぁ、その分、元・お嬢さま状態になっている時の結はさらに強烈に強化されているような気もするのだが……だって、昨日だって……いや、皆までは言うまい。――とにかく、だ。俺の〝恐怖の元・お嬢さま作戦〟や母さんの〝お友だち〟とやらの協力もあってか、白乃宮新聞事件はひとまず落ち着き、結はいつもの元気を取り戻したのだ。

 ……え? ところでその〝お友だち〟とやらはいったい何をしてくれたのかって? それはだな……実は俺も高利からの噂でしか聞いていないから詳しいことは分からないんだが……あの〝情報屋〟とかいうグループ(部活?)、ついこの間〝解散〟に追いやられたらしい。――何でも、〝謎の第三勢力〟に攻め込まれたとか何とか……。

 ……いったい母さんの〝お友だち〟ってどんなやつら何だろうな?

 ――と、まぁそんなことはこの際どうでもいいとして、それよりも今は本題の謎を解き明かす方が先決だ。

 えーと? まずは……現時点で結は、元気を取り戻している。これは確実だ。

 だが、そんな状態にあるにも関わらず、あんなにはっきりと〝好きだ〟と言った後にも関わらず、俺に対する結の態度は、いつもと変わらず〝自然そのもの〟。

 ……さて、ここから導き出される答えは? えーと…………。


 ………………終了?


 ……。

 ……。

 ……。

 よし、寝よう。

 そう思った俺は、湧き上がる悲しみと共に、静かに深い眠りへとついた。

 ……無論、そこで見た夢は、何度結に告白しに行ってもことごとくフラれる、という、まさに〝悪夢〟というやつに他ならなかったのだが…………。





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