6-12 六話目終わり。
――結はあの後、またすぐに眠ってしまった。
だけど、今度の眠りは大丈夫……次に目を覚ましたら、結はいつもどおり、俺に元気にあいさつをしてくれるだろう。
そう、何となく……結の可愛らしい寝顔が、俺に語っているような気がした。
「すー……すー……」
「ははっ。ホントにかわいい寝顔だな……」
夕日も沈みかけてきた道。
俺はそんな結を背中に乗せ、結を起こしてしまわないように、できるだけゆっくりと家に向かって歩を進める。
……。
……。
……。
…………な、何だか、妙に恥ずかしい気分だ……。
……べつに、自分と同じ年齢の女の子をおぶっているから、だとか、背中に柔らかい大きな物体が絶えず当たっているから、だとか、そういうことからではないんだが…………あ、いや、ごめんなさい。半分……いえ、十中八九はそれのせいです。はい……。
「すー……ん…………すー……すー……」
「…………」
……ま、まぁ、ともかくだ。それ以外のほんの一握り……とはいえ、説明することもできないようなそんな微妙な気持ちに、俺は最も恥ずかしさというものを感じてしまっていたのだ。
……さて、どうしたものか……?
どうすることもできないこの想いを抱えたまま、俺は、ふと、思った。
――そういえば、あの時結はいったい……〝誰と〟公園にきてたんだっけ? 確か、たった独りできていたわけではなかった気もするのだが……う~ん???
「――さすがですね、亮さま!」
「――安心……です」
「え……?」
くるり、と俺は突然のその声に振り向いた……が、
「……あれ? 誰も……いない……???」
慌てて俺はさらに周りを見回したが、相も変わらずこの時間帯。本当にこの辺って人が住んでんの? とツッコミを入れたくなるくらい、まさにヒトっ子一人。ネコの子一匹。その姿を見つけることはできなかった。
言うもまさしくゴーストなタウン。いるのにいない。いないのにいる。
……あれ? でも、ちょっと待てよ? そんな中で声が聞こえてきたのに、その声の主が現れない……というか、発見することができないっていうことは、つまり……これってマジモンの〝怪奇現象〟というやつなのではないだろうか?
……。
……。
……。
……い、いやいや。まさか……な…………?
……ふぅ、と何となくため息を一つ……疲れてんのかな、俺も? いやまぁ……今日は色々あったしな。そりゃあ幻聴の一つや二つくらいあるよ。うん。きっとそうだ。そうに違いない。
……ふぅ、と俺は、自分の中で膨らみつつあるそれをもう一度ついたため息で吐き出した。
続いて、俺はこんな時、絶大な威力を発揮する、〝魔法の言葉〟を唱えることにした。
……そう、これが平成世代。〝ゆとり〟とやらから生まれた、伝説の魔法の言葉……。
――くらいやがれっ!
「けしぇらしぇら~(※訳:ま、いっか)♪」
…………………………何か、余計に……あ、いや……それよりも、何よりも……何だか妙に、こっ恥ずかしくなってきたぞ?
………………。
……よ、よし、さっさと帰るか…………。
――そんなことを思いながら、今日という俺の長い一日は幕を閉じた。




