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――結の身体は今、本当に支えられているだけ、といった状態に等しかった。
俺がこの小さな肩から手を離してしまえば、結は確実に、力なくそのまま地面に倒れこんでしまうだろう……それが、実際に結の肩を支えている俺には痛いほど分かってしまった。
……今は、十六時をすぎたところだ。
普段であれば授業が終わり、掃除当番などの仕事がなければ、俺と結はいつもどおり、家路への道を歩いていたことだろう。
なぁ、結? と俺は、静かに結に話しかけてみる。
「……いつもは夕日、後ろにあるはずなのに、前にあるのって……何だか変な感じだな?」
「……」
……返事はない。が、それはある程度予想できたことだった。
俺はそれに構わず、何気ない、その時思ったことをそのまま会話にして続けた。
「……相変わらず、この道は人通りが少ないな……ああ、そういえば小さい頃、今と同じようにここら辺にはあんまり子どもがいなくって、俺っていつも近くの公園に遊びに行ってたっけ……そうだ、結? せっかくだから、その公園に行ってみないか? ここから何分もかからないところにあるんだよ」
「……」
……相変わらず返事はなかったが、しかし今度は、結は俺の服を掴んでいた手に、ほんの少しだけ力を加えた。
俺はそれを了承したのだと判断し、ゆっくりと、結を近くの公園へと案内した。




