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――あの後、ネットが張られていた教室の窓に、当然のようにカギがかけられていたことから、俺たちは仕方なく……申しわけなく思いつつもその窓ガラスの一部を割り、カギを開けてその場から脱出することになった。
その時、結の表情は……相変わらず俯いたまま、暗く沈みっぱなしではあったものの、それも家に到着するまでの間だけだった。
――血のこととか、色々なことを誤魔化しに誤魔化しまくって俺たちが早退することを先生に伝えた俺は、それからすぐに結を家へと連れ帰り、そしてそこで、出迎えた母さんに……無論、俺たちを見て母さんは驚いてはいたが、しかし母さんは何も言わず、結をそこで思いっきり、優しく、抱き締めたのだ。
その瞬間、結は再び大粒の涙を流し、母さんの腕の中で、声にならないその心の悲鳴を、涙と共に流し続けていた。




