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……〝優しい〟? 俺が???
「どう、いうこと……なんだ?」
思わず、口が動いていた。結はそれにすぐに答えた。
「――だって……やっぱり、そう思うんだもん。亮は……本当は全部知ってる。知ってて、それをあくまでもウソだって、隠そうとしてくれてる。……やっぱり亮は、〝優しい〟よ」
な……!
「ち、違う! 隠そうとしてなんかいない! 本当にあれは全部デタラメで……!!」
「……確かに、そうかもね」
「……え?」
結は、再び、優しく笑った。
「……私もね、知ってるよ? あの新聞は〝デタラメ〟。本当のことなんてまるで知らない人たちが、聞いたことばかりで書いているもの……最初に亮が言ったことと、同じだってこと」
「だ、だったら、何で……」
――〝お仕事カード〟。
刹那、ぞくっ! と、俺の身体が凍りついたのが分かった。
しまった、と思った時にはもう遅い。結は、そんな俺の反応を見て静かにため息をついた。
「……やっぱり、知ってるんだね、亮も……あのカードの、〝本当の意味〟を」
「……ッッ!!」
……何も、返せなかった。ここにきてまた、俺の口からは、何も言葉が出てこなかった。
だが結は、それに構わず続けた。
「……確かに、あの新聞の内容自体は全部デタラメ。間違っていることをさも真実であるかのように言い切っているだけ……でもね、亮だってわかるでしょ? いくら内容がデタラメであっても、本当にあの事件のことを〝知っている〟人がそれを見たら……全部、繋がってしまう……今までわからなかったことが、本当はどういう意味を持つのか……嫌でも、わかってしまうの……そう。あの〝お仕事カード〟のように……」
「ま、待ってくれよ、結……〝お仕事カード〟の〝本当の意味〟って……何でお前が……」
「……それは、〝亮も知ってる〟はずだよ?」
「……え?」
……俺も……〝知っている〟……???
「ど、どういうことだ? 何のことを言ってるんだよ結? 俺はそんなこ…と……ッッ!!」
「……思い出した?」
結のその言葉に、俺は……認めたくはなかったが、俺の中にあったその記憶に、確かな確信を得てしまった。
「ま……まさか、あの時の……あの時の〝カード〟って……!!」
「〝Fire〟〝Car accident〟〝Fall〟――あの頃は確か二人とも、あのカードのことを、英語のお勉強をするためのカード、とか思ってたっけ? ……今思えば、あれって相当変な単語ばっかりだったよね? 〝火事〟に〝交通事故〟に〝転落〟……そう。あれが、あの時亮にも見せたカードが、〝お仕事カード〟。そして……亮は、もうとっくに気づいてるよね? あのカードが持っていた、その〝本当の意味〟に。……あれは――」
……え? お、おい……ちょっと待てよ。結……お前まさかあのカードの、〝本当の意味〟を知って……だ、ダメだ!! ダメだ結!! あれは、お前が知っていいものなんかじゃない!! だって、あれは……あのカードの、〝本当の意味〟は……!!
「――〝人の殺し方を決めるためのカード〟」




