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5-9改




 ……亮?

 心の中で名前を呼び、教室に着いた私は、まるでその中を覗き込むようにして辺りを見渡してみる。と……いた。亮はいつもの自分の席に、腕をまくら代わりにして机に突っ伏していた。

 ――ほっ、と瞬間、思わず安堵のため息が出てしまった。

 ……もしこのまま亮がどこかに行ってしまっていたら――そう心のどこかで、不安に思ってしまっていたのかもしれない。

 ……っと、いけないいけない! ――〝ソレ〟に気づいた私は、一度顔を引っこめて、何度か廊下で大きく深呼吸をしてから、きっ! と顔に力を入れた。

 ――そう。学校での私は、元・お嬢さまであるのだ。

 亮に余計な心配をさせないためにも、ウチではウチの。学校では学校の。いつもの私であり続けなければならない。

 よし! と自分にそのことを言い聞かせ、私はいつものように堂々と教室に入り、真っ直ぐに自分の席へと向かい、そして腰を下ろした。

 ――瞬間だった。ふと、私はあることに気がついた。

 それは、ほんの一瞬……ではあったものの、確かに――普段は私が登校してきただけではそれほど気にもしない生徒たちが、〝全員〟。そう、〝全員〟が、だ。私に対して〝視線〟を注いだのだ。

 何? 思った私は周りを見渡すと、ほとんどの生徒はすでに視線を外していたけれど、その残りの数名が見渡した私と目が合い、慌てて逃げるように視線を外した。それから、何やら、ひそひそ、と声を潜めて話している。

 ……いったい、何だというのだろうか? 私が何か……?

 …………考えすぎ……か。

 ふぅ、小さくため息をつき、私は正面に向き直った。

 ……そう。私に視線が集中するなんていうことは、よくあること。陰口なんてものも、もう何年も言われ続けている。……だから、きっと、今のもそう。今日はたまたま、全員の視線が重なっただけ。そう、たまたま、そうなっただけ。そうに……違いない。

 ――自分の席で、今度はそう自分に言い聞かせ……少しだけそのことを不気味に思いつつも、私は気にすることをやめ、静かに授業開始の時間を待った。





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