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「……は? お前突然何を言って……」
「いいから答えてみろ!」
「答えてみろって……」
……何だ? 突然? あの事件のことは、この町にいる人間なら誰でも……もちろん、高利も知っていることなのに……それを何でわざわざ聞いてくるんだ?
「……」
……どこか不安に思いながらも、長年結と暮らしている身……話したくはなかったが、俺は仕方なくそれに答えた。
「…………要約して言えば、あの事件は、白乃宮家の当主だった白乃宮 在次郎が、あの手この手で人々を騙して、それで借金の取り立てだの、何だのと言いがかりをつけては、金とか、土地とか、とにかくそういう奪えるもの全てを奪って、結果として後がなくなった人たちが仕方なく自殺してしまったのが警察とかマスコミとかにバレて、それで一気に世間に知れ渡って大事件になった……と。これでいいか?」
「うむ……まぁ、そんなとこだな」
「……?」
……何なんだこいつ?
やっぱり、なんて言う必要性すら感じない。もちろんこいつも事件のことは全て知っているのだ。……何しろ、あの事件がニュースになった時、それはもう連日のように同じ内容が繰り返され、それから数年、どころか十年経った今ですらも、極々稀にではあるが、あの事件のことがニュースやラジオで流れたりするんだ。この町に住んでいる以上、あの事件のことを知らない方が逆にオカシイというやつであるのに……。
「……いったい何なんだよお前? 何でいきなりあの事件のことを――」
――瞬間だった。高利の口から、とんでもない言葉が発せられた。
「――そう思ってたよ。いや、そうだとしか思っていなかったよ。俺も、〝今までは〟な」
「………………え?」
……しばらくの間、俺はその言葉に何も聞き返すことはできなかった。
それから数十秒……ヘタをしたら、数分だったのかもしれない。それくらいの間を置いて、俺はようやく口を開くことができた。
「…………どう……いう……こと、何だ…………そう、思ってた……って…………?」
「……それだよ」
す……と高利は、いつの間にか握り締められていた新聞を指差した。俺は恐る恐る、その、くしゃくしゃ、になった新聞を震える手で開き、読んでみる。
――そこに書かれていた内容とは…………。
【――以上のことのように、すでに読者も知ってのとおり、〝白乃宮事件〟とは今の今までは白乃宮家が起こしていた町を一つ呑み込むほどの大規模の詐欺、及び脅迫などの犯罪行為により、後がなくなった者の内から自殺者が出てきたことからこの事件は発覚したとばかり思われていたが、しかし、我々〝情報屋〟が極秘に入手した町の元警察官からの話しによると、一般にニュースやラジオといったものから発信されていた内容とはまるで異なる内容の――】




