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 「――ぃよう! 我が親愛なる悪友よ。奇遇だな」

 家を出てから僅か数分……商店街の入り口で、俺は人語を解する、眼鏡をかけた奇妙なサル型モンスターに出くわした。

 ……さて、どうする?


 ▽たたかう

 ▽とくぎ

 ▽ぼうぎょ

 ▽どうぐ

 ▽にげる


 「…………」


 ▼どうぐ→▼ゆうしゃチェーンソー→▼ぶっ○す。


 「おいおい待て待て待てコノヤロウ! 会っていきなり何しようとしてやがんだ? その物騒なモノを掲げる仕草を止めろ。気味悪ぃな……」

 「……」

 俺は物騒なモノをどうぐ入れにしまった。

 ……ところで、チェーンソーってどうぐから使うんだっけ?

 「……あ、なんだ高か……てっきりサルかと思ったYO」

 「そうかい。どちらにしても何かムカつく野郎だなおい……」

 そんな、いつものやり取りをしてからやっと俺たちの会話は始まる。

 「やれやれ……で、今日はどうした? ていうか〝風邪〟とやらはもう治ったのか?」

 「んあ? 〝風邪〟?」

 ああ、と深刻(しんこく)そうな顔で腕組みをしながら高利は話した。

 「そう、〝風邪〟だ……お前がいなかったせいで学校は……というか、俺が! ものすごく大変だったんだぞ? ――お嬢さまは登校してきていきなり無言で俺を殺すし? 復活したと思って早々に保健室を出てみれば突然視界がブラックアウトするし? んで、また復活したと思って気づけば帰る時間になってて、何か知らんが死ぬし? もう散々に重ねて散々だったぜこの〝二日間〟!」

 「ん……あ、ああ、それはお気の毒に……いや、ていうかちょっと待て。〝二日間〟だと? それって木、金の二日間のことか? それに俺が風邪って……???」

 何を今さら、といった具合に、高利は、ふん、とため息をついた。

 「おいおい、そろそろオトボケタイムは終わりにしよーぜ? それとも本当に記憶がねぇとか言い始めないよな? ――だが俺はしっかりと憶えているぞ? お前は風邪だか仮病だか何だか知らんがとにかく学校を休んだ。それも、丸々〝二日間〟! そのせいで俺はたった一人であのお嬢さまの不機嫌を静める相手をしなくてはならなくなり? もう少しで絶賛不登校&ウツ状態になってマスコミとか教育委員会とかが、ギャーギャー、騒ぎ始めるところだったんだぞ?」

 「え……いや……え……???」

 そんなバカな……俺が二日間も学校を休んだだと? 憶えてない……というか、そんな記憶自体、俺には全くない。

 ――冗談か? とも思ったが、学校を休んだ記憶が存在しなかったのは確かではあるが、しかし、俺にはそもそもこの〝二日間の記憶〟自体が、すっぽり、と……まるで初めからそこに巨大な穴でもあったかのように、完全に抜け落ちてしまっていたのだ。

 ……いったいどういうことなんだ? なぜ、俺にはこの二日間の記憶がないんだ? まさか季節外れのエイプリルフールだとか言うわけでもあるまいし……第一、今は六月だ。そんなものはもちろん関係があるはずがない……ということは、じゃあ……ドユコト…………???

 「……本当に憶えてないのか?」

 あぁ~ん? とさも疑わしそうな目でガンをつけられ、少々たじろいでしまった。

 しかし高利は、「……まぁ、いい」と突然、わざとらしく大きくため息をついて、それから某あだ名がジャイアンがごとく、今にも俺の胸ぐらを天高く持ち上げる勢いで迫ってきた。

 「……いいか? これも所謂、〝貸し一つ〟ってやつだ。……ん? いや待て。二日間だから〝二つ〟だな。――とにかくだ。……いいか、〝貸した〟からな? 忘れんなよ? 忘れたら俺はいつでもお前を見捨てるからな? 絶対だぞ!?」

 「…………」

 ……何だかよく分からないが、どうやら俺はとんでもない〝貸し〟というやつを作ってしまったらしい。これを忘れようものなら、俺はきっと、〝人間シールド〟とやらに使われてしまうことだろう。……まぁ、そんなの、お嬢さまには通用しないんだけどね? パンチ一発貫通どっかーん……だし。

 「……まぁ、その、何だ……とりあえず、分かった。憶えとくよ」

 「うむ!」

 答えると、そうすぐに、誰が見ても満足そうに高利は大きく頷いた。

 やれやれ……そんなことを思いながらも、今度は俺から話しかけてみる。

 「……で、それはそうとお前はこんなとこで何やってんだ? まさかまた〝買い物〟とかいうやつか? こんな真昼間に?」

 「何を失敬な! それでは俺が毎日そういう買い物をするためだけに商店街へきているみたいじゃないか!」

 「……違うのか?」

 「違う!」

 「じゃあ、何しにきたんだよ?」

 「……」

 聞くと、高利は遥か遠くの空を見つめた。

 「……いいか、悪友よ? 人間ってのはな――」

 「――そうか図星か。失せろ。下賤(げせん)なサルめ」

 「……」

 ……しばらく、高利は振り返らなかった。

 「――まぁそれは置いといて、ところで悪友よ」

 ……気のせいだった。すぐに振り返って、高利は持っていたバッグから一枚の紙……いや、よく見るとホチキスで留められているな……複数枚の紙を取り出した。

 ……てゆーか、何かこのシーン前にも見たような……?

 と、やはりその予感は的中した。

 「じゃん! 昨日発行されたばかりの、〝情報屋新聞〟だ! お前のためにわざわざ肌身離さず持ち歩いててやったんだぞ? 感謝しろよな!」

 「いや、頼んでないから。つーかべつにどうでもいいから」

 「まぁまぁそう言うなって」

 ――そう言って俺に無理やり新聞を渡してきた高利は、それから、ズビシッ! とウザったく、俺を激しく指差して聞いてきた。


 「亮! お前はあの〝白乃宮事件〟のことについて、どれくらい知っている!?」






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