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14-3


 「!? た、高……!?」

 予想外の言葉を口にした高利の方を再び振り向くと、高利は俺の肩から手を放し、一人、保健室の出口へと向かって歩いて行った。

 そのまま、背中越しに話す。

 「……悪かったよ、急にこんな話を持ち出して。そうだよな、お前だって怖いよな。あんな強大な力を持つ元・お嬢さまたちを相手に、立ち向かおう、だなんて思えるわけがねぇ。実際、こんな話をしている俺様だってそうさ。今だって手は震えるし、足はまるで、泥沼の中を歩いているみたいに重く、冷てぇ……だけどな、悲しきかな。俺様だって〝(おとこ)〟なんだよ。それに、何より……俺様はお前と違って、まだ勝利を掴めていない(、、、、、、、、、)んだ。俺様たち(、、)、じゃあ、ダメなんだよ……俺様が(、、、)、俺様自身(、、、、)が! 〝勝利〟を掴み取りたいんだ……!」

 「ッッッ!!! た、高ッッッ!!!」

 俺は……叫んでいた。ベッドから立ち上がり、振り返ろうともしない高利に向かって、精いっぱい。(うそ)(いつわ)りのない、心からの言葉を叫んだ。

 「やめろ! 死ぬぞ、高ッッッ!!! たった一日起こった奇跡に(とら)われるんじゃない! 今までに何度も、何度も! その身を以って体験してきただろう!!? 小学生の六年間! 中学生の三年間! そして高校……合わせりゃおよそ1/3300日だ!!! そんな奇跡が、二度も起こるわけがないじゃないか! 考え直せ!!!」

 「……そうだな。起こるわけがないよな」


 そう、思っている限り(、、、、、、、)は。


 「はっ!!?」

 「……そこ(、、)、なんだよ、亮」

 出口の前で立ち止った高利は、そのまま話した。

 「俺様が最初に言ってた〝心〟ってのは、そこ(、、)なんだ。最初から負けると分かっている勝負に負ける気持ちで行ったって、勝てるわけがない。だけど、いくら1/3300でも、勝てるかもしれない。そう思って行けば……もしかしたら、亮。そのデカい数字、だいぶ数が減るかもしれねぇな……?」

 「……ッッ!!!」


 待てよっ!


 ガララ。高利が扉を開けたのとほぼ同時だった。俺はまた、叫んでいた。それに高利は肩越しに振り向いて答える。

 「……何だよ亮? まだ俺様を止めようってのか? いくら止めても、俺様はもう――」

 「違うっ!」

 「……何?」

 どういうことだ? そう高利が聞いてくる前に、俺は話した。

 「そこまで言うんだ。もう、俺はお前のことを止めやしないさ。……だけど! こんな(なさ)けない、意気地(いくじ)のない俺でもよかったら……この目で、()させてほしいんだ!!! お前の、勇気を……〝心〟を……ッッ!!!」

 「亮……」

 ……。

 ……。

 ……。

 「……へっ」

 数秒の沈黙(ちんもく)……しかし高利は、それからゆっくりと振り返り、俺の方に向かって手を伸ばしながら――

 「それでこそ、〝悪友(あくゆう)〟だな!」

 「た、高……ッッ!!!」

 ガッシィィイイッッ!!!

 ()け寄り、伸ばされたその手を俺が握ると、高利は……笑顔だった。

 その笑顔のまま、高利は言い放つ。

 「さぁ、行こうぜ! 悪友よ!!!」

 「(おう)ッッッ!!!」




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