#14,敗北の理由。 14-1
「亮、俺たちが勝てない原因って……理由って、何だと思う?」
――保健室。
リスボーンポイントであるこの場所において、俺に向かってこんな質問を投げかけてくるやつなど、この世に一人しかいない。
「さぁ、な。知らねぇよ」
俺はそう先に置いてから、ベッドから起き上がり、質問してきた主に向かって話した。
「だが、そうだな……ただ一つ確かなことは、高。狩り人でも何でもない、装備も防具も付けてない素っ裸の村人A、Bクラスの最弱戦力が合わさったところで、獲物なんて狩れるわけがねぇ、ってことだな。ましてや、相手は天変地異クラスの最強戦力を持つ、あの元・お嬢さまたちだ――お前は手で扇いで台風を吹き飛ばせるか? 雷よりも速く動けるのか? 燃え盛るマグマよりも熱くなれるっていうのか? ――〝勝てない〟。いや、勝つとか負けるとか、それ以前に、〝無理〟だろ」
「確かに、そうかも……いや、絶対に、そうだな」
だけど、と高は、普段であればそれ以上口を開かないところ、今日はなぜか、続けた。
「俺様は思うんだ。もしかしたら、そう思っていることが……心の中で敗北を認めちまっていることこそが、勝てない理由なんじゃないか? って、よ……?」
「何?」
どういうことだ? 俺は静かにそう聞くと、高利も静かな口調で答えた。
「スポーツとかでもよく言うだろ? いくら練習していたって、最後は心との戦いだって。それと同じように、最初から心が負けている状態じゃ、勝てるかもしれない勝負にだって俺たちは負けちまう、ってことさ」
「……」
……ふっ、
スケールの違いをまるで理解していない、愚かな考え……俺は、高利の言葉を鼻で笑って話した。
「高、お前はまるで分かっちゃいないな? そんなのはあくまでも、スポーツとかの中だけの話だ。……心で負けてるから、勝てるかもしれない勝負にも負ける、だと? なら聞くが、お前や俺が、それこそ今までに一度でも、『これはもしかしたら』何て考えが浮かんだことがあるか? はっきり言う。俺はないね。文句の付けようもなく、全戦全敗フルKO負けさ」
「なら、亮? お前は一度も、元・お嬢さまの〝パンツ〟を見たことはないってのか?」
「!?」
な、何? 聞くと、高利はゆっくりとベッドから体を起こし、俺の方を向いて話した。
「俺様は憶えているぞ……亮、お前は、確かに。この高校に入学するまでは俺様と同じように負け続け、敗北の汚泥をなめ続けてきた過去を持っている。しかし、入学してしばらく経ったある日……そう、俺様がお前にバイト代を出して本の感想を聞いたあの日(※【#1,元・お嬢さま。】参照)だ! お前は、確かにあの元・お嬢さまの〝パンツ〟を見た! 即ち、ほんの一瞬だが、確かにお前はあの元・お嬢さまに〝勝った〟んだよ! 汚泥をなめ続けた日々に、たった一日だが、お前は〝勝利〟を掴み取ったんだ!!!」
「!!!」




