13-10
――十二時に持参したお昼ゴハンを食べて、それから再びゲームをやり始めてから、いったい何時間くらいが経ったのだろうか?
「……だーっっっ!!! 出ねーっ!!! 逆鱗とかいう鱗なんてどこに付いてんだよ! もう十回くらい同じやつ狩ってるぞ!?!」
入手困難なアイテムが一向にゲットできないということもあって、遂に俺がそんな声を上げ始めると、次々と似たような声が上がった。
「私も、この棘が欲しいんだけど、なかなか取れないんだよね~。でも棘って、逆鱗とかいうのとは違って、どう見てもここにいっぱい生えてるよね??? これ、取れないの???」
「私も両方欲しいのですが……しかし、この逆鱗というアイテムは、これだけ討伐しても未だ見かけたことはありません。ひょっとしたら、今いるランクよりも上のランクにならなければ入手できないのでは……???」
「何だと!!? ってことは、狩り損ってことか!?」
「いえ、そういうわけでは……棘、というアイテムは少なからず出ているわけですし?」
「そうだよ亮! 私、棘欲しいもん!」
「むぅ、まぁ、それを言えば、完全に損なわけではないか……」
「……あの~……皆さん、ちょっといいですか?」
と、そんな中だった。
いろんな意見が入り混じる中。この状況ではある意味異質な、普通の声が上がった。
俺たちはその声がした方向を振り向くと、そこにはなぜか、手鏡を持った明が……。
……ん? 鏡???
「どうした、明? 鏡なんか持って???」
聞くと、明はその手鏡を、ずずいっ、と突然俺の顔に近づけてきて、そのまま話した。
「どうした、じゃあありませんよ亮さま~。ちょっとこの鏡に映ったご自身の顔を確認してみてください」
「?」
俺の、顔??? 顔がいったいどうしたって……
「あ」
言われて、初めて気がついた。見ればそこに映った俺の顔は、元から寝不足のせいであった目の下のクマがより濃くなり、目はまるでゾンビみたいに、赤々と充血していた。言わずもがな、完全にゲームのやりすぎである。
「ほれ! ほれ!」と明は続けて結と愛にも手鏡を近づけてその顔を確認させる。すると当然、これも俺と同じような声が上がった。
「わ! 目、真っ赤っか! どうしよ~!」
「私も、こんなにクマが……あぁ……!」
……いや、女にとって顔は命。肉体的ダメージは同じくらいだが、俺よりも明らかに二人は精神的ダメージを負っていた。各々急いで目の周りのマッサージを始める。
「まったく、私が止めなければ今頃もっとひどいことになっていましたよ? ああ、ちなみに顔だけではなく、身体にもかなり疲れが溜まっているはずですよ? ちょっと、肩とかも動かしてみてください」
肩? どれどれ……。
ぐいん。俺はとりあえず、明に言われたとおり肩を回してみると、次の瞬間だった。
「いでっっっ!!?」
ズキン! と、俺の肩を襲ったのは鈍い痛みだった。俺はそれ以上痛くならないよう、ゆっくりと再び肩を回すと、ゴキ、ゴキキ! とまるで必○仕事人バリに骨が鳴った。明の言うとおり、どうやら身体もかなり凝り固まってしまっていたらしい。かなりの重傷だ。




