13-6
「……」
「……」
ゲームとは、まっっっこと、恐ろしいものだ。
――先生からゲームを貰った翌日、体育祭代休日、俺の家。
目をこすりながらそうつくづく思った俺は、朝食であるトーストの耳をかじり、続いてコーヒーを一口……そして、時計を見る。
「……九時間(、)か……」
言い間違え(誤字)ではない。確かに今は朝の九時だが、言葉は間違いなく九時〝間〟だ。俺はべつに現在時刻を呟いたわけではない。
……では、いったい何の時間なのか? 感の良い人は、この段落の三行目を見てもうすでにお気づきだろう。
そう、この時間は、昨日の昼休みから現在までに費やした、ゲームの総プレイ時間である。
……いや~、ホント、ゲームというのは恐ろしいものだな。特に、大人気になるようなゲームにはそれなりの、それ相応の理由があるもんだ。
映像良し。
操作性良し。
おまけにやり込み要素も満載、となれば、もはや寝不足になること間違いなしじゃないか。もう何十回ヤドカリやら鳥やら恐竜やらを狩りに行ったか分かんねぇよ。
……おっと、ここで一つ、みんなに言っておきたい非常に重要な言葉がある。心して聞いてくれ。
重要な言葉。それは、
一日のゲームのプレイ時間は、ちゃんと守りましょう。
だ。
……まぁ、それを全く守っていない俺みたいなやつの言葉じゃ、説得力は皆無だけどな?
さてと。
朝食食べ終わった俺は、隣で同じく朝食を食べていた結に話しかけた。
「おい、結。ゴハンさっさと食べちまえよ? これから御守シスターズの家に遊びに行く約束だったろ?」
「……ふぁ……うん、わかってる……らいじょーぶ……」
「……」
ちなみに、と説明しておこう。ご覧のとおり、何だか口があんまり回っていない結もあのゲームにハマってしまったクチで、俺と同じく(というか、俺と一緒に遊んでて)プレイ時間を守らずに遅くまで遊んでしまっていたクチだ。
その結果がもたらした身体的影響は深刻で、このように、口だけ回らないのであればまだいいのだが、結は先ほどから半分目を閉じ、なぜかバターナイフをコーヒーに突っ込んではパンに塗り、またコーヒーに突っ込んではパンに塗り、と、無限にコーヒー塗り塗りを繰り返している状況なのだ。もちろん、結は普段からコーヒー塗り塗りをしているわけではない。言わずもがな頭の回路が変になっていて、そんな行動を繰り返しているのだ。いやはや、ゲームってのはホントにホント、恐ろしいもんだな。
……ところで、そんな、ちょっと変になっちゃってる結の様子が、〝かわいい〟、とか思ってしまっている俺の頭の回路は……変、なんだろうか?
ちゃぽん。べしゃ、塗り塗り……。ちゃぽん。べしゃ、塗り塗り……。
「……」
いや、異常の異常なのだから、きっと〝正常〟なのだろう。……うん。




