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「は? いやいや、待て待て待て! ちょっと待て。それじゃあオカシイだろ?」
半ば慌てた感じになってしまったが、俺は構わず続けた。
「理由があって遊ばなくなって、箱に入れてしまっておいた。それはまだ分かる。だけど、それじゃあ四つも同じ物を買っている説明がつかないじゃないか。永遠不変に独り身の先生が何で四つも買ってるんだよ? 一つで十分だろうが?」
「永遠不変に独り身はさすがに失礼だと思いますけど……まぁ、ともかくです。そこ(、、)ですよ。ポイントは」
そこ?
「……永遠不変???」
「違います。独り身、の部分です!」
はぁ、とため息を一つ。「いいですか?」と明は俺を指差して話した。
「例えば私が先生だったとして、亮さまが私の恋人だったとします」
「え? ……あ、うお、おおう?」
急な設定にほんの(、、、)ちょっと動揺してしまったが、明は構わず、様々なジェスチャーを会話の中に組み込みながら、俺に設定を押しつけて続けた。
「私と亮さまは町でデートしています。……あ、ほらあれ見て! あのゲーム、最近すっごく話題になってるよね!」
「あ、えっと……そ、ソーダナー(※棒読み)」
「聡美、あれやってみたいな~☆ ねぇ、よかったら一緒にやってみない? 聡美が買ってあげるからさ?」
「う……お、オウ。ソーダナー(※棒読み)」
「はい、買いました。……わぁ☆ さっそくおウチに帰ってやろ♪」
「お、オウ。ソー」
「で、数日で別れました」
「ダ……ん?」
「で、恋人二号ができました」
「あの、ちょっ……」
「わぁ☆ 聡美、あれやってみたいな~☆ よかったら一緒にやらない?」
「えと……」
「はい、買うことになりました。この時、すでに恋人一号といっしょに買っていた物を持っていますが、まさか元カレとの物を持ち出すわけにはいきません。なので、また新しく買い直しました」
「そ……」
「で、別れました。はい、これで手持ちが四つになりました」
「……」
「……以上です」
「……」
なるほど。と俺は一応納得をした。見れば、結も愛も同じく明の説明には納得できた様子だ。
しかし、俺は言いたい。
今の説明に、俺に設定を付けて巻き込む必要はあったのか?
……と。
…………。
ほんのちょっとだけ、ドキドキッ、ってしてしまった俺の純情を返せ……。
「えと、つまりは……」
と、俺がちょっとだけ傷ついている間に、結が話をまとめた。
「MVP生徒にプレゼントを贈ることになって、ある程度高い物をあげなくちゃならなくなったけど、あんまり高いのは買いたくない。そこで、高い物には違いないけど、みんなには黙ったまま、元々持っていた物を……元・恋人といっしょに買って、要らなくなった物を私たちに贈ることにした。これで、傍から見ればちゃんと良い物を贈ったように見えるし、私たちも満足する。だけど実際のところ、先生は十三万円からジュース代を差し引いたものを全額貰えることになったうえ、多少だけど生徒たちからの信頼も回復する。……っていうことでいいの?」
「……まぁ、そういうことで間違いないんだろうな」
「というか、絶対そういうことですよね?」
「……ええと…………」
「「「「……」」」」
全員一致の見解。残る問題はこれを受け取るかどうかだが……。
「……とりあえず、貰っとくか?」
「……そだね」
「先生の立場っていうのもありますし」
「……亮さまと結さまがそう判断されたのなら、私はそれに従います」
「よし、決定~」
そういうわけで、このことは、俺たちの腹の中だけに隠し、真相は闇へと葬り去られることとなった。




