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 「……ねぇ、亮く~ん?」

 「……」

 「ねぇ、亮くんってば~?」

 「……」

 「……亮くん?」

 「……」

 「……りょ❤ う❤ く――」


 「やめいっ気色悪いっっっ!!!」


 ――朝。教室の片隅、窓辺の俺の席。

 絶対反応してなるものか! そう決め込んでガン無視を続けていた俺ではあったが、そのあまりの気色悪さに遂に本音が出てしまった。

 だって、俺のすぐ隣でそんな気色悪いことを言っているのは……

 「え~? ひっど~い! 先生(、、)怒っちゃうゾ! プンプン☆」

 …………。

 ぺしっ……俺は一度、平手で自分の顔面を叩き、そのまま、恐る恐る(、、、、)、聞いた。

 「……いったい何の用ですか、先生? てゆーか、いつから下の名前で呼ぶようになったんでしたっけ? この機会に上に戻してくれませんかねマジで?」

 「いや~ん☆ 亮くんってば照れちゃって! かわいいんだから~❤」

 「……すんません。急に脳天からつま先まで痛くなったので早退しま――」

 ガタパシッ!

 さっさと逃げようと、席を立とうとした……が、立ちきる前に俺は先生に腕を掴まれてしまった。……歳に似合わず凄まじい反応速度だ。

 先生は俺の手を掴んだまま、笑顔のまま、微動だにしない……そのことから、どうやら逃げることは許されないらしい。そう(さと)った俺は、仕方なく腰を下ろした。

 「……で? いったい何の用なんですか? まさか俺とおしゃべりしたいだけとか言いませんよね? だったら俺はこのまま一人で体育祭の余韻(よいん)(ひた)りたいんで、本気で早退しますよ?」

 そう。こちとらあの後ちゃんと愛とも仲直りできて、せっかく良い気分で体育祭を終え、今はその余韻を楽しんでいる時なのだ。それを先生なんぞに邪魔(じゃま)される筋合いはない。てゆーか、オープニングがこれでは、正直俺はこの死神の十三話目。最後まで生きていられる自信はない。

 ……まぁ、死んでいる話の方が多いような気もするけどな?

 「んもぉ~、せっかちなんだから☆」

 と、そんな俺の気持ちは知るよしもなく、そう言って仕方なく先生は俺から手を放し、続けた。

 「分かった分かった。分かりましたぁ~。それじゃあ、さっそく本題についてだけど……亮くん、体育祭が始まる直前のこと、(おぼ)えてる? 気をつけてたのに、ドジッ()の先生がうっかりしゃべっちゃった、あの秘密……」

 「ドジッ…〝()〟??? ああ、いや。秘密? それってあの、裏得点表のことですか?」

 いちいちツッコミを入れているとキリがない。そう思った俺はすぐに聞き返すと、先生は、こくん、と一度首を縦に振って答えた。

 「そう。そのことよ……それについてね、ちょっとした問題が発生してしまったの」

 「はぁ、問題、ねぇ……?」

 てゆーか、その裏得点表自体が。先生が生徒たちを使って()けごとじみたことをやっていること自体が何よりもの問題なんじゃないか? ……と、思ったが、それは心の中だけでツッコミを入れて終わらせた俺は、続けて「どんな?」と聞いてみた。

 「……実は…………」

 すると、先生は何やら神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで語り始め……。

 「結果だけ先に言うとね? 表の得点表では、赤組は総合三位で終わったけど、裏の得点表では、私たち一年C組はなんと堂々の一位! ぶっちぎりで優勝を勝ち取っていたのよ! それはつまり、三位の三万+MVPの十万で、先生が貰えるボーナスは十三万円ってことで……うふふ❤ これで今月のお給料が倍近くにも膨れ上がったわ~❤」

 「……へ~。そうなんスか~」

 ……。

 「で?」

 多くは言わない聞かない知りたがらない。なぜならいつにも増してどうでもいい話だからだ。俺はできるだけ短い言葉でそう聞くと、「あ、うん。でね?」と先生は少し慌てて話を戻した。

 「そのことをみんなにも聞かれて、先生、仕方なく話しちゃったの。そしたら、『自分たちのおかげで貰えたんだから、何かよこせ!』って、なっちゃって……そこで先生、みんなにジュースをおごってあげたんだけど、でも、それじゃあ少なすぎるってことになって……」

 ……うん、まぁ、十三万円も貰っておいてジュースじゃあ……ねぇ? 当然っちゃ当然だよな? それより、あのジュースってそういうことだったのか……。←※また聞いていなかった。

 「そこで先生、MVP中のMVP生徒に、こんなものを用意したのよ」

 「ん?」

 スッ。

 と、突然だった。先生はどこからともなく割と大きめな紙袋を取り出し、俺の机の上に、その中身を取り出して見せてきた。

 瞬間、俺は驚愕(きょうがく)した。

 「こ、これは……!!」

 ふっふっふっ! 笑いながら先生は続ける。

 「どう? これがMVP中のMVP生徒にあげることにした物よ。ちょっと古いけど、これなら値段的にも割に合うとは思わない?」

 た、確かに……。

 でも! とすぐにそれに気がついた俺は話す。

 「割には合います。いや、むしろ多いくらいな気もします。しかし……こんなポピュラー(、、、、、)なモノ、今さら持っていない生徒なんていないんじゃ……」

 「そこのところは大丈夫! 絶対持ってないって、先生、確信を持ってるから!」

 「え? か、確信??? 何でそこまで断言できるんです? だって、これは……」

 「ふっふっふっ、それはねぇ~?」







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