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12-18 十二話目終わり。




 大きく掲載された二枚の写真。その一方に写っていたものこそが、俺たちの〝仕掛け〟……〝陽の光〟を使い、ゲート全体に貼り付けられた紙を〝()かす〟ことによって初めて現れる、〝もう一つの作品〟だった。

 そこには、先ほどまでは翼が折れて飛べなかったはずの天使が、手を伸ばしていた二体の天使に支えられ、再び大空を飛ぶ様子が〝影絵(かげえ)(透かし絵)〟として描かれているだけではなく、先ほどはただ見ていただけだったはずの左側の天使が、支えられて再び大空を飛ぶ翼折れの天使のことを見て、自分も、とそれに参加しようと向かい、さらにその後方からは、多くの天使たちが両手を大きく広げて集まってきている様子が描かれていた。

 つまり、と説明すると、俺たちの作品が表していたものは、最初に審査員が言った、不屈の闘志や熱い友情ではなく、


 〝支え合い〟と、それらを〝称賛〟し、自らもそれに加わろうとする〝心〟――だったのだ。


 「【――以上のことから、この作品は芸術性、独創性、共に大変優れていると判断されたため、入場ゲート部門・第一位に選定しました】……か。一位なんだから当たり前と言えばそうかもしれないけど、スゲー高評価だな! これだけ評価されると、作ったかいがあるってもんだ!」

 あ、でも……。と俺は気がついた。

 「これと、お前の言う確信できる要素……って、いったい何の関係があるんだ?」

 「ふっふっふっ~、それはですね……」

 思い出してみてください。そう置いてから明は続けた。

 「このゲートのデザイン。これは私たち四人で協力して考えたものですけど、元々の発案者は誰か? 亮さまは憶えていますか?」

 「? えと、確か……愛……うん、間違いない。愛だったな」

 それが? 聞く前に明は写真を指差しながら話した。

 「では、この翼が折れている天使を、その発案者の愛だと当てはめて考えてみてください。もう、お分かりでしょう?」

 「愛に当てはめて……?」

 ……あ! 俺は思わず声を上げた。

 「もしかしてこれ……この天使たちって、〝俺たち〟か!」

 ピンポーン☆ 明は満面の笑顔で答えた。

 「大正解です。この左側で眺めている天使が私で、右の、手を差し伸べてる天使たちが――」

 「俺と結……か」

 「です☆」

 なるほど。言われて、俺はようやく全てを理解することができた。

 そう。この作品には、まだ〝続き〟が……隠された〝意味〟があったのだ。

 それこそが愛自身の〝思い出〟と〝心〟……それらを全て理解した上で改めて俺たちの作品を見てみると、なるほど。確かに確信が持てる。だって、今この場で明と話してきた〝全て〟が、たった〝一つの作品〟の中に余すことなく全部、込められていたのだから……。

 ふふ♪ 笑って、数歩駆()けてから振り向いた明は話した。

 「さてさて、そろそろお祭りも終わりの時間みたいですし……亮さま、もしよければ、最後に私から愛に何か伝えておきますけど……何かありますか?」

 「愛に伝えること? そうだな……」

 俺は少し考えて、ニカッ、と明に笑顔を見せつけて答えた。

 「〝ありがとう〟。こんな俺でもよかったら、これからもよろしくな! ――そう伝えておいてくれ!」

 「りょ~か~い☆」

 返事をしてすぐに駆けて行く明の後ろ……俺はまた一人、ベンチに座り、手元に残った先ほどの写真をだいぶ火の勢いが弱まってきたゴミファイヤーにかざしながら、もう一度。その言葉を呟いた。


 「〝ありがと〟な、愛……」





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