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 「……あ…………」

 ……声が……出せなかった。

 見れば、目の前には、ニコニコ、と、満面の笑みを浮かべながら俺のことを見つめる明。

 そう、明は、幼き日の〝俺〟の言葉を、そのまま言ったのだ。

 俺は続いて、伸ばしていた左手を見つめてみる。

 すると……〝同じ〟だ。すぐに、そう思った。

 結が愛に向かって伸ばす手と、

 俺が愛に向かって伸ばす手。

 その二つは……〝全く同じ〟ものだったのだ。

 「気づきましたか? それなら……」

 やれやれ。ため息をつきながら立ち上がった明は、次の瞬間。伸ばした俺の手に、そっ、と優しく、両手で包み込むように触れながら口を開いた。

 「……今一度亮さまにお聞きします。愛が亮さまに言った〝救ってくれた〟という言葉……その言葉は、〝変〟、ですか……?」

 「……」


 変なんかじゃねぇよ! 全然……!


 「だーっ!」

 意味もなくそんな声を上げた俺は、明の手を振り払い、払ったその手を額に、パチン! と打ちつけて言った。

 「……そっ、か……そうだったのか。愛は俺の父さんに対してじゃなくて、本当に、俺自身に対してそういう気持ちがあったからこそ、あんな言葉を口にしたのか……」

 「やっと、認めていただきましたね」

 はふ~。今日何度目かのため息をついてから明は続けた。

 「まったく……亮さまの強情さも筋金入りで困りものですね~。もう少し素直になってくれた方が可愛げがあるというのに」

 「ほっとけ」

 言ってから、しかし……と俺は、明に聞いた。

 「やっぱりスゲーんだな。家族の絆ってのはよ? お前、よくそんなにはっきりと、それこそ最初から一片の疑いもなく愛の気持ちを理解できたな? 悔しいけど。そこんところは尊敬に(あたい)するぞ」

 「いや~☆ それほどですよ~☆」

 ……それほど、なんだ。

 思うが早いか、「な~んちゃって☆」と明は、いたずらっぽく笑って話した。

 「白状すると、確かにそう信じてはいましたけど、確信できる要素は他にちゃんとあったんですよ~」

 何? 他にあっただと?

 何だよそれは? 聞くと明は、今までは暗くて気づかなかったけど、ズボンの後ろポケットに入っていたらしい紙を広げて、それを俺に見せて渡してきた。

 「ちょっと暗くて見えにくいですけど……あのゴミファイヤーの灯りで照らせば何とか見えるはず……っと! どうです亮さま? 読めますか?」

 「ん……まぁ、なんとかな。……なになに? 【入場ゲート部門第一位・一年C組】……」

 ……。

 「〝第一位〟!!?」

 マジか! 驚いた俺はもう一度よ~~~~~っく、見てみたが、何度見てもそこに書いてある文字は変わらない。一年C組の作品……俺たちが作った作品は、堂々の〝第一位〟として。さらには二枚の写真付きで掲載(けいさい)されていた。

 「ファーストミッション……初めて作って一位って……え? これって本当にスゴくね!?」

 若干、どころかかなり。興奮(こうふん)してテンションが上がってしまった俺は、(なか)ば慌てて明に聞くと、明は、ニッコリ、と笑顔だったものの、逆に落ち着いた様子で答えた。

 「そうなんですよ~♪ 私もこれを知った時にはビックリしました☆ ――あ、ちなみにここも読んでみてください。ちょっと長いですけど、〝仕掛け〟のこともちゃんと気づいて書いてありますよ?」

 「どれどれ?」

 言われて、俺はそれを声に出して読んでみた。

 「えーと……【針金や色紙(いろがみ)等を使い、四体の天使と雲が表現され、飾られたこの作品の見所は、写真正面に向かってゲート右側の柱にいる、一体の翼が折れて地面に落ちてしまった天使と、上空からその天使に向かって優しく手を伸ばす、二体の天使の様子で、審査当初、審査員はこれを〝不屈(ふくつ)闘志(とうし)〟や〝熱い友情〟と考えていましたが、それらを表現するにはあまりにも不適合な〝天使〟というキャラクターと、色紙を裏返しに貼り付け、薄くしか色が見えないという奇妙な飾り付けに疑問を持ち、低評価を下していました。しかし――】」

 そう。しかし、だ。

 ゲート左側の柱に一体。右側の柱に三体の天使がいて、その周りに雲が飾られた俺たちの作品には、それだけではなく〝仕掛け〟が(ほどこ)されていて、あることをするとそれが発動するように仕組まれていたのだ。その発動条件こそが、

 「【〝()の光〟だったのです】」




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