12-14
「……」
ニコ☆ 明はその名のとおり、明るく微笑んで答えた。
「はい。気づいちゃってます☆」
「……そう、か…………」
……やれやれ。
ため息を一つ。俺は改めて聞いた。
「……いつから気づいてたんだ? ……今朝か?」
いえいえ。明は首を横に振って答えた。
「あれは確信、ってやつです。実際はもっと前から……それこそ、ゲートの飾りの材料を亮さまたちが買ってきたあの日から気づいてはいました。あ、これは愛と何かあったな。って☆」
「最初からかよ」
あーあ。言って、俺は……すでに陽は落ちていたものの、ゴミファイヤーの灯りでオレンジ色に見える夜空を仰いだ。
「やっぱり、気づくよな~。仮にもお前の妹みたいな姉……愛のこと、だもんな。家族なら気づいて当然か」
「ふふ、まぁ、それはそうですけど~……ぶっちゃけ、私だけじゃなくて結さまも気づいてましたよ? だって、亮さまの態度。ずっと妙にテンションが高くて変でしたもん。亮さまがお家でも同じ態度をとっていたのなら、おそらく亮さまのお母さまも気づいちゃってると思います☆」
「つまりは全員に気づかれてる、ってことか。はぁ~……」
二度目のため息。明はそれが出終わったのを確認してから聞いてきた。
「それで、亮さま? いったい愛と何があったんですか? 亮さまの態度が変、ということには簡単に気づきましたけど、内容についてはさすがに分かりませんから……まさか、ケンカした、とか、そんなのじゃないですよね?」
「まさか」
即答して、俺は続けた。
「俺や結に対しては仏もびっくりなほど従順で無抵抗な、あの愛だぞ? 最悪俺からケンカを売りに行ったとしても、絶対ケンカになんか発展しねーよ」
「……じゃあ、何です?」
「……」
……こんなこと、言ってもいいのか? 少しだけ、俺は悩んだ。
だけど、すぐに決心がつく。
だって、彼女は……明は、愛の〝家族〟なのだから……。
「実は……」
・
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「……なるほど。愛は、亮さまのお父さまに命を救われたんですね~」
一通り話し終わると、明は静かに口を開いた。
「正直、愛と亮さまのお父さまに……というより、愛と倉田家にそういう関係があっただなんて思いもよりませんでした。事故で右腕を失った、とは、小さい頃に愛本人から聞いてはいましたけど」
「……ああ。もう一度言うけど、俺も、愛から説明されて初めてその話を知ったんだよ。そして同時に驚いたさ。まさかこんな形で俺たちが出会うことになるなんてな」
……それで? と明は聞いてくる。
「実際、それの何が、亮さまをそんなふうにしちゃってるんですか? 亮さまのことだから、と、話は亮さまのお父さまの命に関わっていること……決して軽い気持ちでこんなことを言うわけではありませんが……亮さまは、亮さまのお父さまが亡くなる原因を作ってしまった愛のことを、〝恨んでいる〟わけでは……ないのでしょう?」
「当たり前だ」
誰が恨むもんか。そう置いてから俺は続けた。
「むしろ俺は〝誇っている〟よ。父さんは、一生懸命で、仕事もできて、何よりあんなにも優しい立派な女の子の命を守ったんだ。これで俺の中に恨みなんて感情が湧くはずもない」
「なら、どうして……」
優しすぎるからだよ。
「……え?」
優しすぎる……から?




