12-12
「総員整列!!」
「「「「「!!!!!」」」」」
突然の、怒号にも似た大声。
周りにいた生徒たちは一斉に声がした方向を振り向くと、そこには……!!
「せ……先生?」
そう。そこには、我らが一年C組の担任。小田 聡美先生の姿があったのだ。
先生は大声のまま続ける。
「ここに突っ立っていても、じきに飛んでくる罵声を浴びるだけよ! すぐさま準備に取りかかりなさい!!」
「「「「「…………」」」」」
……。
…………先ほどと同じように、誰も、何も言わなかった。
何しろ、もう結果は分かりきっているのだ。分かりきっている勝負に、そこまで全力になれる生徒など、この場にはいなかった。
だが、
「……俺たちは」
続く沈黙に耐えかねたのか、先生の一番近くにいた三年生が、呟くように先生に聞いた。
「今から……負けるんですよね?」
「そうよ」
すぐに、先生は答える。
三年生はそれに少し戸惑いながらも、続けて聞いた。
「……どうせ負けるなら、最後に戦って負けろということですか?」
「そうよ」
いや……。三年生は、涙を浮かべながらさらに聞く。
「どうせ負けるなら……どうやって負けようと、罵声を受けながら負けようと……意味なんかないですよね……?」
「まったくそのとおりよ」
「……!」
先生は静かに、ただ事実だけを話した。
「まったくもって無意味よ。どんなに夢や希望を持っていても、これから先幸福な人生を送ることができたとしても、罵声で心を打ち砕かれても、同じよ。私たちはいずれ負ける」
ならばこの戦いには、意味がなかったというの?
「「「「「――」」」」」
先生は、反応できなかった俺たちに構わず、続けた。
「そもそも、戦ってきたこと自体に意味がなかったというの? 私たちのように負けて卒業していった卒業生(生徒)たちも同じなの? あの卒業生(生徒)たちも無意味だったというの?」
――っっ!
「いや違う!! あの卒業生(生徒)たちに意味を与えるのは私たちよ!!」
先生は怒りにも似た表情で、大声で叫んだ。
「あの勇敢な卒業生(生徒)を!! 哀れな卒業生(生徒)を!! 想うことができるのは!! まだ学校にいる私たちよ!! 私たちはここで負け、次の世代に意味を託す!! それこそ唯一!! この残酷な結果に抗う術なのよ!!」
生徒よ〝怒れ〟!!
生徒よ〝叫べ〟!!
生徒よ――
〝戦え〟!!




