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 「総員整列!!」


 「「「「「!!!!!」」」」」

 突然の、怒号(どごう)にも似た大声。

 周りにいた生徒たちは一斉に声がした方向を振り向くと、そこには……!!

 「せ……先生?」

 そう。そこには、我らが一年C組の担任。小田 聡美先生の姿があったのだ。

 先生は大声のまま続ける。

 「ここに突っ立っていても、じきに飛んでくる罵声(ばせい)()びるだけよ! すぐさま準備に取りかかりなさい!!」

 「「「「「…………」」」」」

 ……。

 …………先ほどと同じように、誰も、何も言わなかった。

 何しろ、もう結果は分かりきっているのだ。分かりきっている勝負に、そこまで全力になれる生徒など、この場にはいなかった。

 だが、

 「……俺たちは」

 続く沈黙に耐えかねたのか、先生の一番近くにいた三年生が、呟くように先生に聞いた。

 「今から……負けるんですよね?」

 「そうよ」

 すぐに、先生は答える。

 三年生はそれに少し戸惑いながらも、続けて聞いた。

 「……どうせ負けるなら、最後に戦って負けろということですか?」

 「そうよ」

 いや……。三年生は、涙を浮かべながらさらに聞く。

 「どうせ負けるなら……どうやって負けようと、罵声を受けながら負けようと……意味なんかないですよね……?」

 「まったくそのとおりよ」

 「……!」

 先生は静かに、ただ事実だけを話した。

 「まったくもって無意味よ。どんなに夢や希望を持っていても、これから先幸福な人生を送ることができたとしても、罵声で心を打ち(くだ)かれても、同じよ。私たちはいずれ負ける」


 ならばこの戦いには、意味がなかったというの?


 「「「「「――」」」」」

 先生は、反応できなかった俺たちに構わず、続けた。

 「そもそも、戦ってきたこと自体に意味がなかったというの? 私たちのように負けて卒業していった卒業生(生徒)たちも同じなの? あの卒業生(生徒)たちも無意味だったというの?」

 ――っっ!


 「いや違う!! あの卒業生(生徒)たちに意味を与えるのは私たちよ!!」


 先生は怒りにも似た表情で、大声で叫んだ。

 「あの勇敢な卒業生(生徒)を!! 哀れな卒業生(生徒)を!! 想うことができるのは!! まだ学校にいる私たちよ!! 私たちはここで負け、次の世代に意味を託す!! それこそ唯一!! この残酷な結果に(あらが)(すべ)なのよ!!」

 生徒よ〝怒れ〟!!

 生徒よ〝叫べ〟!!

 生徒よ――


 〝戦え〟!!






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