12-10
――体育祭、午後の部、グラウンド。
さて、時間はだいぶ進んで、今はプログラムの第四。団体競技の時間だ。
俺たち一年C組……どころか、くじ運悪く。赤組に配属されたクラスのほとんどが非運動部員または帰宅部所属という事実を今さらながらに知った俺ではあるが、しかし、そんな勝ち目の薄い戦いにおいてもなお、祈祷師ことタッチーの祈祷の力で、我が赤組は大奮闘! なんと現在、全五チーム中、堂々の三位だ! これからの順位次第では、十二分に優勝を狙えるまでの位置につけていた!
……のだが、
「「「「「…………」」」」」※赤組男子一同。
男子騎馬戦一回戦――敗退。
元・お嬢さまを筆頭とするチーム白乃宮による、文字どおりの一騎当千を誇る女子騎馬戦が一位抜けで終わり、快進撃ムード全開! という状況であったのにも関わらず、俺たち男子騎馬隊はあろうことか、一回戦で騎馬総崩れによる惨敗を喫してしまったのだ。
……騎馬戦は順位による点数はもちろんのこと、相手から奪い取ったハチマキの本数もそのまま点数に加算される、言わば大量得点獲得の大チャンス種目。
そこでの大敗はつまり、優勝への道が限りなく細く、難しい道になるということ。いくら女子が一位抜けしたといっても、男女が獲得した総合得点で言えばそう大した点数にはならない。一位とビリなのだから、せいぜいが平均点くらいだ。
残す競技は、最後の男女別リレーのみ。まだ騎馬戦が終わっていない他の組の結果次第になるが、ここから逆転優勝するためには、えーと……。
「おい、亮。何だかマズいことになってるな」
と、計算をしている時だった。誰かが後ろから話しかけてきたのだ。
ん? と俺はすぐに声がした方を振り向くと、そこには高利の姿が……
「……あれ?」
思わず、口からこぼれた。俺はそのまま話す。
「高、お前……今までどこにいた(、、、、、、、、)んだ??? だって……え? 個人競技は運動部とか、ある程度運動ができるようなやつしか出ないから、俺とかお前とか、全くと言っていいほど関係がないやつの姿を見かけないのは、まぁ、分かるが……団体競技は全員強制参加だよな? お前ってさっきの騎馬戦……いたっけ???」
「いんや。俺様は不参加だった」
キッパリ、高利は言いきってから続けた。
「何しろ今の今まで、この炎天下の中。元・お嬢さまの手によって十字架に吊るされ、半日間天日干しにされてたからな。ミイラ化してたのに競技なんて出られるわけがねぇ」
「て、天日干しって……そりゃあ災難だったな。いや、てゆーかお前、いったい何をしでかしたんだよ? 何をやったらそこまでの目に会うんだ?」
「……まだ、何もしてねぇ」
「……え?」
予想外の答えに俺は戸惑っていると、高利は悔しそうに歯を噛み締めて話した。
「そう。俺様はまだ、何にもしてなかったんだよ! それなのに急にお嬢さまに拉致られてだな……っ!」
急に拉致られた? はて? いくらお嬢さまでもまだ何もしてない高利に対してそこまでのことをするだろうか?
……ん? いや、待てよ? まだ(、、)、ってことは、これから高利は何かをしようとしてた、ってことだよな? とすると、その気配に気づいてお嬢さまは高利が悪さをする前に討伐を決断するに至った。ってことだ。
分からないのは、あの用心深い高利が犯行前にそれをお嬢さまに悟られるほどの失態を犯したという点についてだが……高利はいったい、何をどう失敗してお嬢さまに悟られ……
……。
……。
……。
…………あ。※高利がミイラ化した理由は、同12話の最初の方を読み返してみよう!
「チクショウ~! この日のために用意してたカメラが~っ!!!」
と、俺がその理由に気づいた、ちょうど、その時だった。
高利が、犯行前の犯行について。自供し始めた。
「俺様はな! ただ汗に濡れて透ける女子の体操服姿を激写したかっただけなんだよ! それなのに、まだ一枚も撮ってないのに! お嬢さまはなぜか俺様の作戦に気づいてカメラを壊し、俺様のことを天日干しに……ッッッ!!!」
「……」
……うおっほん。俺はわざとらしく咳ばらいをしてから話した。
「まぁ、そうくよくよすんなよ。お嬢さまに殺されるのなんて日常茶飯事じゃねーか。きっとどこかでお前がカメラを持っていることに気がついて、それでお前を吊るしたんだよ。気にすんな。てゆーかお前のソレ、マジで犯罪だからな? ヤメとけ」
「ぐ! うぅ……わ、分かってるけどよぉ~?」




