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12-5


 『えー、であるからして、本日は天候にも恵まれ――』


 ――体育祭・開会式、グラウンド。

 ……さて、いつもの茶番もひと段落したわけだが……教師の風上にも置けない先生のことはさっそく放っておくとして、いよいよ本題の体育祭の始まりだ。

 そこで、といきなりだが、開会式で披露(ひろう)される、校長とか、市長とか、そういうお偉いさんたちのありがたくなく迷惑で長ったらしい話の間、ここで今日の体育祭ついて、一応、簡単に説明しておくとしよう。

 まずは流れ……所謂(いわゆる)プログラムについてだが、大雑把(おおざっぱ)に言うとこんな感じになっている。


 一、開会式。

 二、各組の応援歌披露。

 三、各個人競技。

 四、各団体競技。

 五、閉会式。

 六、後夜祭。


 まぁ、ぶっちゃけ、極普通の内容だ。

 唯一変わっている部分と言えば六番目の後夜祭くらいだが、実際、この後夜祭というのはあくまでも片づけがメインで、祭りっぽいことと言えば最後にやるキャンプファイヤー(という名のゴミ一斉焼却)の周りで、簡単なダンスを(おど)ることくらいだそうだ。……つまり、祭りとは名ばかりの、体育祭の片づけ作業……を、そのような名前で呼んでいるらしい。

 次に、採点方法についてだが、これは大きく分けて二つのポイントに分けて採点されることになっているそうだ。

 一つはもちろん、競技の順位による点数だ。先生の言っていた裏得点表ではどうなっているのかは俺には分からないが、各競技別に点数が決められていて、獲得した得点の合計が得点ボードに表示されることになっている。まぁ、これはどこの学校でも同じだな。

 他所(よそ)の学校とちょっとだけ違うのは、もう一つの方……競技以外(、、)の点数だ。

 ここでは主に、組のシンボルであるでっかい絵が貼られた看板(?)や、応援歌、そして俺たちのファーストミッションである入場ゲートの飾り付けなどが審査されて得点化されることになっている。……とは言っても、こちらの得点は、それこそ後で詳しく知ることはできるらしいのだが、あくまでも裏での採点。大々的に発表されるものではないらしい。まぁ、でも、仮にも採点されるのだから、前に明が言っていたみたいに作る時に手を抜いて得点が取れなかったりすると最終的な順位に響いてくる。重要なことは重要だ。……先に言ってしまったが、つまりはこの二つが最終的に合計されて、順位に反映される、と。そんな感じだ。

 あと他に説明しておくことは……う~ん……特にないな。だって、他はだいたい他所と似たり寄ったりだし、特にこれと言って説明するほどのものは……。

 『――以上で、開会式を終わります』

 と、その時だった。ちょうど開会式の終わりを告げる放送が流れた。

 お、やっと終わりか!

 そう思った俺は、んんん~! と思わず、固まってしまった背筋を、ゴキゴキ、と鳴らしながら伸ばしてしまった。が、どうやらそれは周りの生徒たちも同じであるらしい。

 見れば、生徒たちは各々あくびをしてみたり、俺と同じように背伸びをしてみたりと、まだ何にもやってないのにだいぶお疲れのご様子だ。……やれやれ。こんなとこで生徒たちの体力と精神力を(けず)ってどうすんだよ。

 はぁ~、とそんなことを考えながらため息を一つ。俺はその後、放送の指示に従って自分が所属する赤組の看板下に設置された椅子に向かい、腰を下ろした。ああ、ちなみに組決めは、伝統のくじ引き制だ。

 『続きまして』

 と、すぐに。だった。また放送がかかった。

 どうやら開会式で予想以上に時間がかかったらしい。何やら早口で内容が読み上げられる。

 『これより各組の応援歌を披露していただきます。まずは青組の皆さんお願いします』

 これを聞いた青組は、当然。

 「え? もう?」

 「早くね?」

 「つーかいきなりだな……」

 そう声を漏らしていたが、しかし呼ばれたからには行かなければならない。

 「応援団早くしろー!」

 「何やってんだお前ら! もう行くぞー!」

 先ほどとは一転。次々にそんな声が上がり始め、慌てた青組の生徒たちは急いで準備を終わらせてグラウンドの中央へと走って行った。

 ……まぁ、大人にも事情はあるんだろうけどさ? もうちょっと、こう……。

 ……。

 いや、皆までは言うまい。そう思った俺は、始まった応援をただ静かに(なが)めた。




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