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……言わずもがな、勝負あり。のようだった。
見れば周りの生徒たちも各々、目を逸らしたり、顔を伏せたりしてしまっている。……そんな彼らの言葉を、久々に発揮する俺の驚異的洞察力を以って代弁すると、
『ま、そりゃあそうだよな』
『いくら何でも、先生の言うとおり、仮にも教職員が生徒たちを使ってギャンブル染みたことなんかするわけないか……』
『カメラよーし。うへへ、これで女子をバッチリ撮って……特に元・お嬢さまたち三人はゼッテー撮らねーとな!』
といった感じだ。
……ちなみに、とこれも言わずもがな。最後の、今の話とは全く関係ない、しかし邪悪極まりなく淀みに淀みきった思考は、高利のものである。
色々言いたいことはあるが……まぁ、とりあえず後で結にチクっておくとしよう。
さて、と……俺はため息を一つ。驚異的洞察力を解除した。
それじゃあ、話も終わったみたいだし、俺は始まるまでちょいと仮眠(という名の居眠り)でもとるかな? 体育祭は体力をどう温存するかが勝負の決め手だし。
そう思った俺は、さっそく着替えの入った体操着袋を枕代わりに机に突っ伏し……。
……ん? あれ? ちょっと、待てよ?
途中、ピタリ、と俺はその場で止まり、考えを巡らせた。
先生の話をそのまま受け取ると、確かに話の筋は通るだろう。
しかしながら、それではなぜあんなにも先生は気合が入りまくっているのだろうか?
……生徒たちがやる気を出すよう、まずは教師がやる気を見せるため? ……に、しては、あまりにも過剰。はっきり言ってやりすぎだ。
では、なぜ……???
「ええ。絶対にそんなことありえませんとも!」
と、次の瞬間だった。先生が話し――
「譬え男女及び体格別に得点が決まっていて、スポーツ系の部活に所属している生徒はその分勝っても得点が低いとか! 逆にスポーツ経験が少ない生徒は勝つと得点が超高いとか! 全学年全クラス! できる限り同じ条件でできるよう工夫を凝らした〝裏得点表〟で管理・運営がされていたとしても、絶対にありえませんっ! 上手くいけば優勝五万+MVP十万で合計十五万円も貰えるだなんて、ぜっっったいに! ありえませんとも! ええ!」
「「「「「…………」」」」」※クラス一同。
……。
……。
……。
――スッ。
その時だった。また、彼の手が静かに挙がった。
「はい! 何ですかナカザワ君!」




